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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特務隊長補佐になる
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その娘、デイロス島

ルディリア達は翌朝一番にディース島を出ると、隣の島であるシーコス島へと渡り、その先のデイロス島までやってきた。


船の点検と、天候や波の確認を行うべく途中で上陸したシーコス島は波止場の近くに小さな村が一つあるだけの島だった。そのキーノティ村の人口は少なく、デイロス島へ渡る為に休息の地として活用されているようだ。


このシーコス島にもまた遺跡の跡と思われる建物が波止場から確認が出来たが、殆どが朽ちており何も残されてはいなかった。しかし、念のためとエーバハルトとローベルと数名に調査を依頼し、何もないようであればすぐにデイロス島へと向うよう指示してルディリアとイクリスはデイロス島へと向った。


シーコス島から数時間、船を降りると波止場からも一望出来るほどに島の至る所に古代の跡が残されていた。この島は他と違い保存状態がよく見える。朽ちているものも多くあるが、原型を留めた状態のものも多く残っていた。地面から自由に伸びた草花は、その景観を壊すことなく見事調和している。


「ここが、デイロス島か。」


イクリスのつぶやきに返事する事もできない程にルディリアはその景色に見惚れていた。至る所に大理石で作られたであろう白い遺跡。廃墟と化した住宅遺跡と所々にある獣の姿を模した遺跡。まだ建物の形を成している神殿跡にルディリアは魅了されていた。


古代遺跡発見と大きく公表されてから丸一年。ルディリアは夢にまで見たデイロス島へやってきたのだと強く実感した。


「すごい…。」


瞬きを忘れるほどに魅入っていたルディリアは肩に手が置かれ、思考が停止していたことに気がついた。ハッと見上げればイクリスが困った様に笑う。


「すみません!」


「いや、いい。君にとってこの地はそれほどに価値があるのだろう。しかし、いつまでもここへいるわけにもいかない。古代遺跡へ向おう。」


「…はい!」


ルディリアは、なんと心惹かれる言葉だろうと、瞳を輝かせた。しかし、イクリスにそれが伝わることもなく、彼は大勢の隊員を引き連れ目的地目指してどんどん進んでいく。それに続いてルディリアもまた足を進めた。


波止場から中心部へと足を進めると、そこには誰が見ても遺跡と分かる程状態の良い建物があった。この島にある人工物と同じく、この遺跡もまた大理石で作られているようだった。


「ここだな。」


そういってイクリスが中へと足を踏み入れると、すぐに目の前に古代魔法の魔方陣が描かれた柱や石版が並んでいた。それはヒースロッド辺境伯地の古代遺跡と似た様式であり、ルディリアは更に瞳を輝かせる。


「はい、確かに間違いありません。ここが古代遺跡です。」


そうはっきりと、イクリスに返せるほどに自信があった。


それから、ルディリアは遺跡内の調査、イクリスは島全体の調査を行うことになった。この島は無人のため、食事や宿泊にはシーコス島へと戻らねばならない。その為、17時まで調査を続けその後シーコス島へ戻り情報共有を行うこととなった。


ルディリアは早速と目の前の魔方陣を読み解こうとする。それをみてイクリスは半数以上の隊員をつれてその場を後にする。


「ヒースロッド隊長補佐、この奥にも道が続いているようです。」


ルディリアと共に遺跡調査の名目で残った数名の特務隊員の内の一人が、夢中になっているルディリアへ言葉をかける。彼もまた瞳をキラキラと輝かせている様に見えるのは、ルディリアの気のせいかもしれない。しかし、辺りを見回せば、ルディリアの指示がなくとも各自そこら中にある模様や魔法陣を調べている特務隊員を見つけた。どうやらイクリスはこういった事になれている者を残していってくれたらしい。


ルディリアへ声をかけた特務隊員の元へ近づくと、彼が指さす方をじっと眺める。この先はヒースロッド辺境伯の遺跡と同じように罠が多く張り巡らされているかもしれないと、薄暗い通路を見て思い指示を出す。


「この奥は気を付けて下さい。魔法の仕掛けが多くあるはずです。魔法耐性が低い方はこちらの調査をお願いします。」


ルディリアは先程まで自分が居た、入ってすぐの場を指さし待機を命じる。そして魔法に特化した数名を連れて奥へと進み出した。遺跡全体の様子を見てから一つ一つの解析を行おうと考えたのである。


遺跡の奥へと続く道は薄暗く、どんどん下へと降りていく様に作られていた。斜面を歩きながらルディリアは壁や天井、地面に仕掛けがないか確認しながら慎重に降りていく。道の途中には明らかに仕掛けだろう凹凸の岩壁や、吊された小さなランプがあった。それらを上手く避けつつ、共に進む彼らにも説明しながら奥を目指す。

遺跡の奥に進むにつれてどんどん視界が遮られていく。とうとう仕掛けを探すのも困難になってきた頃、ルディリアは魔法を発動させた。


「フォス」


ルディリアの掌から生成された光の玉はルディリアの数歩前をふよふよと浮いている。それを見た隊員達もまた、持っていた杖に魔法を発動させ、辺りを見回した。

騎士団は基本的に帯剣しているが、個々人の判断で杖をローブの裏に挿して持ち歩くことが可能である。杖は魔力操作や威力を補助してくれる道具である為多くの者が持ち歩いていた。彼らもまたローブの内側から杖を取り出したのだろう。


数名が発動させた光魔法のお陰か、暗い遺跡内も明るく輝いている様に感じられる。そうして、これで安心とルディリア達はまた慎重に歩き出す。


数分歩いた所で、三方向への分かれ道に辿り着いた。正解は一方か、それとも全て外れか。全く予想の付かないその分かれ道に、ルディリアは悩む。しかし、全員を引き連れ中央の道へと足を進めた。先程よりもゆっくりと慎重に。


「――っ、止まって下さい。」


部屋へ辿り着く手前で、ルディリアは慌てて隊員達に指示をする。何事かと隊員達が前方へ目を遣ると、そこには大きな獣の像がそびえ立っていた。


「引き返しましょう。」


ルディリアは嫌な予感がして、その場を引き返す提案をする。ルディリアの反応を不自然に思った隊員の一人がルディリアへ問う。


「調査なさらないのですか?」


「奥にある石壇とその上の魔方陣が見えますか?」



部屋の中には石造りの大きな獣を模した像が三つある。その中央には大きな石壇があり、その上に石版が置かれている。像はそれを囲むように配置されており、天井には魔法陣が大きく描かれていた。細かい内容を今の位置から読み取ることは難しいが、所々にルディリアの知っている式が使われていた。


「…はい、確かに。」


「あれは、万物を操る魔方陣と形が似ています。」


「…といいますと、もしやあの大きな像が動き出す、と?」


「それだけならばいいですが…取敢えず危険な事に変わりありませんからひとまず別の道を確認しましょう。」


魔法によって操られた対象物は通常の剣では破壊することは困難なほどに強固な魔法がかけられていることが多い。弱い魔法は跳ね返すか、当たっても霧散する。そんな強敵が目に見えるだけで三体。もしかしたら壁の奥から更に増える可能性だってある。そんな危険地帯に無策で飛び込むほど彼らも命知らずではない。ルディリアの言葉に冷や汗を流した隊員達は、素直に来た道を戻る。


そうして残りの二つの道も確認した。

結果、通ることが出来たのは右の道だけである。左の道には中央と同じ様な魔方陣と、大きな太陽と月を模した像が聳えていた。その中央にはやはり石壇と石版がある。右の道にはまた更に二つの分かれ道があり、そのどちらも最奥には石版が置かれていた。


部屋の中に罠らしい魔法陣も仕掛けもないことを確認したルディリアは慎重に中へ足を進める。何かあっても良いように隊員たちを回廊で待機させ、一人で進む。

中央まで進み、中を見渡してもそれらしいものは見当たらなかった。ほっと胸をなで下ろすと、「大丈夫です。」と待機させていた隊員達を中へと呼び込む。彼らもまた安堵の表情を見せつつ、慎重に中へと足を踏み入れた。


ルディリアはその石版を読み解こうとその魔方陣へと触れる。まだ見た事のない式が連なるその陣にルディリアは目を輝かせた。そして、彼らにも周囲の探索と入り口にいる隊員への言伝を頼むと、目の前の魔方陣の解読に時間を使うことにした。



数時間、魔方陣を読み解いていたルディリアは難解な部分にあたり、頭を悩ませていた。小さく息をつくと目を瞑り天を仰ぐように身体を傾ける。疲れた頭を少し休ませようとそのまま思考するが、不意に目を開くと、視界いっぱいに古代文字と女神や天使、神々の絵が彫られていたことに気がつく。

勢いよく起き上がり壁へと視線を移すと、天井に近い壁にもまたそれらがびっしりと彫られていた。

部屋に入る際に確認していた筈なのに、それらは今ルディリアの目に飛び込んできたかのように思えた。それは、長時間魔法陣の解析を行っていた為か、難航していた部分が当てはまりそうだと感じたからなのかはルディリアにも分からなかった。


「…すごい。」


ルディリアが魔法陣の解読を中断し、その壁画と文字を解読していると後ろから声がかかった。


「ルディリア嬢。」


振り返ると、数名の隊員を連れたイクリスが部屋の入り口からこちらへと困った様に歩いてくる様子が見えた。石畳をよく見ると、ルディリアが解析の為に書き記していた紙が床一面に広がっており、普通に歩くことが困難な様子だった。


「…あ、すみません。」


熱中していたとはいえ、「室長のような事をしてしまった。」とルディリアは恥じらい、すぐに風魔法で散らばった紙を纏めて、イクリスへと尋ねる。


「どうかなさいましたか?」


「…いや、もう17時を回る。そろそろ一度シーコス島へ戻るぞ。」


「…、…はい。」


いつの間にか時間は経過していたらしい。困った様子のイクリスをみてルディリアは反省した。しかし、まだまだ調べたいこと、考え途中な事が多い。これからという時だったのに…。と思いつつも素直にイクリスへとついていく。イクリスが調べていたこの島について興味があった為だ。


入り口へと足を進めると、未だ調査を行っている者が多い。どうやら半数の隊員はここへ残り調査を進めるようだ。羨ましい、と思ってはいけないのだろうが、ルディリアはそう思わずにはいられなかった。



__



シーコス島の酒場にて、ルディリアとイクリスはいつもの様に情報共有を行っていた。


遺跡内の構造と、回廊の先にあった四つの部屋のこと。そして調査中の石版の内容について報告をする。

石版には大きく三つの内容が掘られていた。一つは何らかの魔法陣。二つめが何らかの動物、あるいは人型を模した絵。最後に、詩の様に綴られた古代文字である。しかし、ルディリアは魔法陣解析の為に足りない知識を補完させる必要があった。そして、それは壁や天井に刻まれている神話や魔法についての知識が当てはまるのではないかと予想を立てたことまで話した。そして多分、獣の像と太陽と月の像があった部屋についてもそこからヒントが得られるだろうと考えていた。


「なるほど、では暫くはその壁画や文字の解析になるわけだな。」


「はい。恐らく、ですが。」


「わかった。では次は島の話しだが。デイロス島には住宅遺跡と獣の石像、それから泉のようなものがあった。住宅遺跡については特に何の情報も得られなかったが、昔ここら辺に住んでいた者の跡だろう。泉に関しては珍しい色合いで輝いていた。救うとただの水の様に見えるためこちらも調査が必要だろうと数名を配置した。前に見た君の浄化魔法に似ていると私は感じた。」


「浄化魔法に似た泉。…それらしき詩も確かにありました。」


ルディリアは数枚のメモを取り出すと、ぺらぺらとめくりだす。食事中によろしくないことは理解しているが、報告には欠かせないものである為仕方がない。


「あ、ありました。えっと、『聖なる泉で魔を退け、祈りが光を灯す。』とありますね。」


「泉には浄化の効果がある。ということか。」


「それに似た効果があることは間違いなさそうです。そうなると、リール村の人はこの泉目当てなのかもしれませんね。」


「泉の水を汲み、地に蒔いているということか。」


しかし、年に一回という頻度でそれだけ長い間効果を発揮するものだろうか?

それと、この祈りが光を灯す。という部分。考えられるのは魔石に魔力が満ちたときのものだろうか?

魔石と泉が関係している?


ルディリアは思考を一旦止めて、イクリスへと視線を戻す。


「やはりまだ分からない事が多いですね。ただ、全ては繋がっていそうな…気がしています。」


「あぁ、リール村の祭壇と毎年の渡航と聖神女祭。どちらも同日だからな。」


「それと、どちらも魔石が関係しています。」


7日後までに真相を解き明かしたい所だ。その日に何かが起る可能性は低くない。去年一体何が起ったのか。この二つが関係しているのか。それとも全く別の何か、なのか。


「取敢えずは調査してみるしかないだろうな。私は明日、シーコス島の調査を行った後に、再びデイロス島の調査を行う。君は古代遺跡内を調べてくれ。」


「承知しました。…イクリス隊長、デイロス島の隣に位置するエルムポース島についても調べて頂きたいのですが。」


デイロス島は、「ディース島」と「シーコス島」、「エルムポース島」の中心に位置している。直線距離であればディース島からエルムポース島まではそんなに離れてはいない。しかし、その途中に渦潮の海域がある為エルムポース島へ行く為にはデイロス島から渡るしか方法がないのだ。

そしてまた、エルムポース島にも何かしらの遺跡があるのではないかとルディリアは踏んでいた。


「分かった。隊員達の情報に寄れば、デイロス島には太陽神と月の女神の神殿があるとされているらしいがそれらしいものは見当たらなかった。誤情報である可能性もあるが引き続きそれについても調べるつもりだ。」


太陽神と月の女神。あの部屋と関係しているのだろうか?ルディリアはぐるぐると考えるも情報が足りなさすぎると、根を上げた。



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