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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特務隊長補佐になる
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その娘、ディース島


ルディリア達がディース島に着くと、すぐにこの島で一番大きな街へと向った。


このディース島には二つの村と一つの街があり、そのどれもが百年以上の歴史を誇る。プライダル王国ではこの地を保護区として指定していた。ようするに、この島にも古代魔法に関する資料や魔方陣の跡などがあるためそれらを守りたいと考えているのだろう。


この島の言い伝えでは、遙か昔この地に神が舞い降りた、なんていうお伽噺まである。ルディリアは、神や仏を信じてはいなかったが、それらが古代魔法に大きく関係していることを知ると、その方面の研究も始めた。そのため普通の人よりもかなり詳しい部類に入る。今では魔法唱詠時にも使うほどだ。


ルディリア達がティーノスの街へと行く途中、幾つもの珍しい建物を見た。それらは明らかに最近作られたものではなく、かなり昔から存在していたのだろうことが状態から見て取れる。それらを見つける度にルディリアの心はうずうずとしていたがイクリスたちとの合流の為、急ぎティーノスの街へと向う。


「見えてきたな。」


数時間歩いただろうか。思っていたよりもディース島は大きな島だったらしい。波止場から中央にあるティーノスの街までかなり長い距離を歩いた。朝一番から活動していたルディリアは久々に隠しきれないほど疲弊していた。いくら常時身体強化魔法を使っていたとしても元々の体力を底上げできるようなものでもないため仕方がない。


「…そうですね。」


「ルディリアちゃん大丈夫?」


「…はい、ありがとうございます。最近は研究の為に室内に籠もってばかりいたので…やはりダメですね。適度な運動を心がけなければ。」


「ルディリアちゃんは動ける方だと思うよ。普通の騎士団員ならもうとっくに歩けなくなっているかも。」


ローベルが気遣いの言葉をかけるが、やはり特務隊員の彼らはまだまだ余裕がありそうだ。ルディリアが疲弊しているのは勿論体力的な面もあるがそれとは別に、考えたいことが山ほどあり、先程から心惹かれるものが多く転がっているのにそれらを調べる時間を取れないという現実が、精神的に疲労させていることもまた理由の一つだった。


「あぁ、研究員であってもそれほど動けるのはアルンベルン魔法研究室長だけだろうな。ルディリア嬢は良くやっているさ。」


前方を歩きながら、こちらを心配そうに振り返るベランジもまたルディリアのペースに併せて速度を調整していた。

流石に情けなさと疲労から思考が止まりかける。しかし、この小隊を任されている自身の思考を止めるわけにはいかないと必死に頭を働かせた。それはもう意地だ。


ようやく着いたティーノスの街は、夜にもかかわらず明るく活気づいた様子だ。市場や小売店はしまっていたが、酒場や宿場は賑わいを見せている。店内に入りきらないのか、店の前に置かれたテーブルで酒を呷る人も大勢見受けられた。


「賑やか、ですね。」


「こりゃ凄いなー。俺も混ざりたい…。」


イクリスが宿泊している宿を探しながら、エーバハルトは羨ましそうにその光景を眺めていた。「良いから探せ」とローベルがエーバハルトの頭を小突くと、宿よりも早く当人が現れた。


「ルディリアさん、あそこに隊長が。」


見回っていたのか、こちらの到着を待っていたのか。イクリスがルディリア達に気がつくと、足早にこちらへ向ってくる。本来はルディリア達がイクリスの元へ駆けつけるべきなのだが、ルディリアにそんな体力は残っていなかった。


「思っていたより早かったな。宿を取っている。まずは少し休め。」


騎士服に身を包んだままのイクリスを見て、ルディリアはまだ情報収集の途中なのだろうと予測する。出来れば今日中に彼に共有したい情報がいくつかある為、時間をもらわなければならない。


「ありがとうございます。イクリス隊長はもうお夕食を取られましたか?」


「いいや、まだだ。」と怪訝そうな表情でイクリスが返す。それならば昨日と同じように夕食を取りがてら情報共有を行うのが良いだろうと、ルディリアは提案をする。


「それではすぐに準備致しますので、夕食を取りがてらでもよろしいですか?」


「…あぁ、だが休んだ方がいいのではないか?」


「ご報告すべき点がいくつかありますので早めに済ませておきたいと考えています。」


「…わかった。お前達は好きにして構わん。宿は私と同じ所に用意してある。明日は5時に波止場へ集合だ。」


少し困った様な表情をするも、イクリスはルディリアの意志を尊重してくれるらしい。


イクリスはルディリア達を宿まで案内すると「ゆっくりで構わない」と部屋に向うルディリアへ念を押す。そして、他の五人にも部屋に戻り休むように指示したイクリスは、受付のある一階で待つようだ。


イクリスの気遣いに感謝しつつ、渡された鍵を元にルディリアは部屋を探すと、中に入り荷物を下ろす。そして軽く身だしなみを整えると、情報共有する為に必要な物を最低限持ってすぐに一階へと降りる。すると、そこには解散したはずの五名がイクリスと共に待機していた。


「大変お待たせ致しました。」


小さく頭を下げて、それから五人に目を向ける。するとイクリスは驚きつつも、ルディリアの疑問に答えてくれる。


「いや、待った内に入らない。彼らも同行したいようだ、構わないか?」


「勿論です。」


「では行こう。」


ニコリとこちらを気遣うようにローベルが笑う。先程、飲んでいる人々をみて、参加したいと言っていたエーバハルトもまた片目を閉じ楽しげに微笑む。ユーグ、アメディオ、ベランジの三人もまた優しげな眼差しをルディリアへと向けていた。



___



「なる程。やはりリール村が怪しいな。その祭壇で何をしているのか気になる所だがそれよりも…。」


「はい、あの模様です。確かに古代魔方陣のそれに似ていますが、欠落している部分が多く、読み解くには時間がかかります。」


「しかし、周囲の村や街に魔物の被害が出ていないことを考えれば、結界のような役割を果たしている可能性も高いだろう。」



ルディリア達はイクリスが取ってくれていた宿の近くにある、少し値の張る酒場へと来ていた。他よりもお高い為か、他の店よりもすぐに入ることができ、店内も落ち着いていた。

あまりに賑やかすぎるのでは報告にならず、かといって静かすぎれば内容が他へ漏れる可能性もある。その為、ある程度の落ち着きのあるこの店は適当な場だった。各テーブルもある程度離れた場所に位置している為安心して話しをする事が出来る。


注文した食事を取りながら、特務隊員である五名はルディリアとイクリスの話しに耳を傾ける。


ルディリアは得た情報を報告しつつ、食事の手を止めて考える。リール村やシロスの街の周囲に魔物の気配がないこと、アンリスさんに見せてもらった航海日誌、リール村の2つの祭壇。そして、ディース島の至る所に見られた古代遺跡の痕跡。


「やはり情報が足りません。この島にも何か手がかりがあるかもしれませんし、数名を残して探索させるべきかと。」


「…しかし、人手が足りないだろうな。」


腕を組みつつ、イクリスはルディリアの提案に難色を示す。ルディリアとしてもその事を気にしていた。しかし、この情報が鍵となる可能性がある限り、それを止めることには賛成できない。


「早めに騎士団へ要請を行った方がよろしいかと。リール村の者達の動向も気になりますし。何より、思っていたよりも探索には時間がかかりそうです。人の手が多いに越したことはありません。」


人の手が足りないのであれば、騎士団に要請するしか方法はない。いつリール村の人間が遺跡へとやってくるかもしれない。出来るだけ早く申請を行い、こちらへ来てもらうのがいいだろう。


ルディリアの提案にイクリスは暫く思考しているのか、目を瞑っていた。そして徐に開いた瞳はユーグへと向けられる。


「…ユーグ、お前はどう思う?」


頭の回転が早く、今回のリール村調査に足を運んだユーグの意見も参考にしたいと考えたのだろう。頭が切れるイクリスも、こうやって仲間の意見を聞くからこそ信頼が厚く、またこの地位まで上り詰めることができたのだろう。立場が高くなれば、それだけ責任が増える。考える事も多くなり、隊員達を守る義務も発生する。しかし、頼る事が許されない立場であるわけではない。失敗は許されないが、いかに隊員達と共にそれを成し遂げるかが重要である。


ユーグは少し考えると、すぐに頭を上げてイクリスへ視線を向ける。


「私もルディリア様に賛成です。人手の確保は重要ですから少しでも早く申請を行うのが良いかと。しかし、この島の探索が今必須とも思えません。彼らがデイロス島へ来るまであと8日。それまでにできる限りデイロス島の調査を進める事が最優先と考えます。」


「そうか、他に意見のある者はいるか?」


イクリスが他の四名へと視線を向ける。誰もが難しい顔をしながらユーグの考えを聞いた上で頭をなやませている。ルディリアは止まっていた手を動かし、残っていた料理を口へと運ぶ。そこでふと考えた。イクリス達は朝に船をだしてから、昼までにはこの島へとついた事だろう。予定では調査を行う筈だった。何か成果はあったのだろうか。


「イクリス隊長達はこの島の調査を行ったのでしたよね。何か発見はありましたか?」


「…そうだな。遅くなってしまったが、こちらの情報も共有しておこう。」


そう言ってイクリスが話した内容は大きく三つだった。

一つは、ルディリアも気になっていたこの島にあった遺跡の跡。しかしそれらは、跡という言葉通り原型が保っておらず調査のしようもないとのことだった。幾つか洞窟にも同じものがあったようだがそれも同じ有様だったと。

二つめは、ティーノスの街の最奥に聖堂があったということだ。何でも生神女せいしんじょが祀られており、この島の人々だけでなく、シロスの住人やリール村の住人もよく参拝に来るらしい。

そして、三つめ。その聖神女の祭りが数日後に開かれるということだ。聖堂にある魔石に参拝に来た人々が魔力を流し、魔石が輝くと来年もまた健やかに過ごす事ができると言われているとか。



「その聖神女とは何ですか?」


エーバハルトが首を傾げイクリスへと問う。イクリスはそれに答えるも、今一ぴんときていないのだろうことは表情から見て取れた。


「…聖神女とは、神の母…らしい。」


イクリスの回答からも理解出来なかったらしい様子のエーバハルト達に、ルディリアは食事の手を止めて補足として知っている知識を話した。


「聖神女とは、神を産む者という意味です。この島の聖堂へ聖神女アンナが参拝したと伝えられていた筈です。アンナは長く子供に恵まれずにいたそうですが、聖堂で参拝をしていると天使が舞い降り、老齢後に子を授かると告げられ、それから数年後に女児を見事に授かったと。そしてその子をその聖堂へと奉献したと言われています。」


ユーグは小首を傾げてルディリアへ問う。ユーグもこういったことには余り詳しくないらしい。ルディリアは学生時代に色々と調べ尽くしたため、この中では一番詳しい。


「ではその子供が神となった、と言うことでしょうか?」


「いえ、アンナの産んだ子が神を産んだ。または神が人となってこの地に降り立ったのだという説もありますが、要するに、神と言われる方をこの地に下ろした祖母がアンナであるということです。ですが、一説によるとユーグさんの言う通り、アンナは子が産めない身体だったとも言われており、その子もまた神の力により生まれたとされています。」


「そういう話しは良く分からないが、要はその聖堂にある魔石について調べる必要があるという事ではないのか?」


ベランジが逸れていた話しを戻し、その魔石についてイクリスへと問う。イクリスもまたそれに頷くと困ったように話した。


「その祭りだが、どうやら8日後らしい。」


それを聞いた全員の表情が曇る。リール村の者達がやってくる日と同じであるということは、やはり何か関係があるとしか思えない。


「…では、やはり。」


「あぁ、調査の必要は出てくるが、しかしユーグの言う通りデイロス島の遺跡についても少しでも早く調べなければならない。それにはルディリア嬢が必須だ。」


この島についても、リール村のことも同じくらい慎重に調査を続けなければならない。しかし、最も重要なことはデイロス島の遺跡調査である。そのためにルディリアはこの地へと来たのだ。


「では、私が調査をしてきましょう。」


ユーグの言葉に視線が集まる。イクリスは隊長として別行動を取ることはできない。ルディリアもまた調査に欠かせない人物である。であれば、確かにユーグは適任者だろう。


「それならば、私も同行しよう。私ならば、ユーグ一人守るのも訳無いからな。」


特務隊きっての攻撃特化の男、ベランジが続けた。彼もまたリール村の動向が気になるようだ。ユーグも実力としては他に劣らない。しかし彼の得意分野は頭脳戦である。だからこそ、ベランジが名乗りでたのだろう。


「それから、アメディオも同行してくれ。3人にいれば伝達に人が割ける。」


「隊長、事情を知るものが行かなければ意味がありません。私にルディリア様ほどの知識はありませんが報告するくらいならば可能です。」


「…分かった。」


ため息とともにイクリスが承諾する。ユーグの実力はイクリスもよく知っている。そこへベランジとアメディオが同行すれば危険は少ないだろうとの判断だ。それになにより、イクリスとルディリアを除けば、彼が一番こういったことに向いている。


「ユーグ、ベランジ、アメディオ。お前達三名は明日からこの島の調査とリール村の者達の動向を探る為に動け。判断はユーグへ任す。」


「承知しました。」


任命された三名は大きく頷き、返事を返す。ルディリアも彼らを信じて、自身のすべきことを改めて考える。

デイロス島の古代遺跡の調査。それを全うすることがルディリアの仕事だ。



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