その娘、情報共有
イクリスとの落ち合う時間が近づいたため、ルディリアは波止場を後に、宿場へと戻った。
少し早めに到着したからだろうか、一階のどこにもイクリスの姿は無かった為その場で彼を待つことにした。その間も通りすがる人から話を聞く。
ルディリアが今欲しいのはリール村の情報だ。シロスの街はこれだけ大きく賑わった街なのだからリール村から来ている者もいるかもしれないと踏んでいた。しかし、イクリスが到着するまでに欲しい情報を手に入れることは出来なかった。
「すまない、遅くなった。」
「いえ、まだ時間より早いですし、お気になさらないで下さい。」
まだ時間より数分早いというのに申し訳なさそうな表情を見せる所をみると、彼もやはり貴族男子なのだと思わされる。「男たるもの待ち合わせ場には女性よりも早く到着すべし。待たせるなど言語両断である。」ルディリアとしては別に構わないじゃないかと思わなくもないが、それが貴族間の暗黙の了解である。イクリスへ、気にしていない事を告げると彼はほっと胸をなで下ろす。
「助かる。どこか希望はあるか?」
夜ご飯の場所の話しだろう。ルディリアは市場で情報収集をしながらこの街の情報も仕入れていたため、すぐに頷いた。彼の事だから食事処もいくつか目星をつけていそうではあるが、ルディリアは自身の希望を優先させてもらうことにした。情報を集めながら食べ歩きしていたというのに、なんとも欲深いことである。
「はい、気になるお店があるのでそこでもいいですか?」
「あぁ、勿論だ。それでは行こうか。」
さして気にしていなさそうなイクリスを見て、安心したルディリアはその食堂へ案内した。二人が目的の食堂につくと、綺麗な女性が席へと案内する。内装も設置されている席も綺麗で、嬉しいことに一つ一つの席は思っていたよりも離れた場所に設置され、気軽に仕事の話しができそうだった。席についてすぐに注文を行った二人は、食事をしながら情報の共有をはじめる。
「まず、私からだ。私が集めた情報は3つ。この街の兵士の実力が乏しい事と、海沿いから離れた村や街とは違いここら辺では魔物の姿を見ないということ。それから、リール村という森の奥にある村で毎年何やら儀式の様な事を行っているといった程度の事だ。」
「――っ!リール村でこの時期に儀式を行っているんですか!?」
「…あぁ。そうらしい。」
イクリスはルディリアとは異なる目線で情報を集めたということが良く分かる。騎士として気になっていたことを重点的に調べたのだろう。ルディリアもまたこの辺りが平和過ぎると違和感を持っていた為イクリスの情報に眉を寄せた。
そしてリール村の情報。
これはルディリアが今最も欲しい情報である。アンリスからもらった情報と合わせれば、なにやらきな臭さを感じる。
ルディリアが自身の得た情報をイクリスへと伝えると、彼もまたルディリアと同じように驚いた顔を見せる。眉間に皺を寄せながら難しい表情で何やら考え込むと、いつもの表情へと戻った。
「――そうか、リール村。やはり気になるな。」
「はい、尋ねてみることは出来ませんか?」
「…行くべきだろうな。しかし日でも早く調査を行わなければならないのもまた事実だ。」
遠征の人数が多ければ二手に分けることも出来る。しかしこの地へ来たのはルディリアとイクリス率いる特務隊だけである。その総数は二十と少し。どちらにも危険があるかもしれないこの状況下で更に人数を減らすことは好ましくない。それに、十日後までにはある程度の情報を掴んでおく必要もある。それを理解した上で、それでもリール村を確認する必要があるとルディリアは考えていた。
「明日…一日で構いません。五名ほどお貸し頂けませんか?朝一でリール村へと行き、夜までにはディース島へと参ります。」
「…分かった。しかし、何処に危険があるか分からない。危ないと思ったらすぐに引け。いいな?」
「はい、ありがとうございます。」
終始難しい表情を浮かべていたイクリスは、ルディリアの意志が堅いだろう事、そして確かに調査する必要がある事から渋々と許可を出す。そしてルディリアとともに行動する五名をその場で決めるとルディリアへ彼らの特徴や性格を話し出す。ルディリアはその情報をふまえた上で小隊長として彼らを率いなければならない。初めての任務に緊張感と責任感を持ちながら頭を回転させた。
そして食事をしながら、暫くイクリスと共に明日の作戦会議を行った。
明日、イクリスはディース島へ向いそこで情報を集める。そしてルディリアは小隊長として、リール村へと向う。そのため早めに身体を休めた方が良いだろうと、食事を早めに終えると宿へと戻り就寝する事にした。




