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閑話その2:シャルローネ暗殺計画

 わたくし──アンネローゼ・エリシオンは、望めばなんだって手に入ってきました。

 エリシオン侯爵家、かのアルモント侯爵家に肩を並べるほどの魔導の名門に生まれ、幼い頃より、人類の限界点とされる『四重属性』に目覚めた、このわたくしに敵はなく、まだ三つの頃にも、名門貴族からの求婚だって絶えませんでしたとも、ええ。

 しかし──全く遺憾なことに、ライバルであるアルモント侯爵家に生まれた娘は「六重属性」という外れ値も外れ値。


 リーヴェ・アルモントが「六重属性」だとわかると、途端に手のひらを返して貴族たちは彼女に群がるようになりましたとも。

 ええ、ええ。この程度ならば許容範囲ですわ。

 属性が六つ使えようが、四つだけしか使えなかろうが、魔術師として最後にモノをいうのは実力ですもの。


 ゆえに、わたくしは、望んで厳しい鍛錬に身を置いて──ステラティア学園に入学する頃には「七星学徒(セブンステラ)」の第三席以内に入れると、確信しておりましたのに。

 ──わたくしに与えられた学位は、第四席。

 その上、同じ「七星学徒(セブンステラ)」の第二席には出自もわからない田舎者だけでなく、第七席には正真正銘の庶民で田舎者が居座っているんですもの。


 これは、許し難いことでしたわ。

 ですが、動揺していては、エリシオン侯爵家の名が廃るというもの。

 わたくしは実力を示し、リーヴェ・アルモントから第一席の学位を奪い取ればいいと、考えておりましたのに。


 ああ、思い出すだけで沸騰するように怒りが込み上げてきますわ。

 わたくしの苦労も知らず、田舎でのうのうと育ってきただけのあの女──シャルローネ・アクシア!

 魔法が使えない、なぜステラティア学園にいるのかもわからないような落ちこぼれであったはずなのに、いつしか先生にも認められ、あのリーヴェ・アルモントにも「ライバル」と称されて!


「……不埒な田舎者がこれ以上、伝統あるステラティア学園に籍を置いていることを、貴方も『七星学徒(セブンステラ)』の一員としては許せないでしょう? ケイン・マイセッカさん」

「……俺になんの用かと思えば、負け犬を笑いにきたのか?」

「いいえ、逆です。わたくしは貴方と共に、受けた屈辱を雪ぎたいのです」

「屈辱、だと?」


 ケイン・マイセッカはわたくしの言葉に、明確な怒りを滲ませました。

 ふふ、お可愛いことですね。

 殿方というのはプライドで生きている存在、故に「怒り」に共感を示してあげれば、容易く御せるものなのですから。


「ええ、ええ。貴方が入学試験のときにシャルローネ・アクシアから受けた屈辱の話は聞き及んでおりますわ。あの田舎者に恥をかかされたのは、遺憾ながらこのわたくしも同じ」

「……そうだな。お前はシャルローネに負けた」

「……ええ。ですので、共に雪辱を果たしませんか? これは、尊き魔導の血を継ぐ者としての義務でもあります」


 これ以上、あの不埒な田舎者をのさばらせておくわけにはいきませんもの。

 ならば、やることは決まっております。

 ケイン・マイセッカのプライドを思えば、実に容易いことですから。


「……それで、お前は俺になにをしろというんだ?」

「ふふっ。話の早いお方は好ましいですわ。今度、新入生による懇親会が開かれることはご存知でしょう?」

「ああ……」

「貴方にはそこで、この筒に魔力を込めていただきたいのです」


 わたくしは、家の伝手で手に入れた二本の魔力圧縮式封印筒──伝説の才女が作り上げたとされる収納装置のうち一つを、ケイン・マイセッカへと手渡しました。


「……いつだ? まさか、懇親会が始まってすぐじゃないだろうな?」

「ええ、ええ。歓談が始まって三十分後──そこで、貴方とわたくしは袖に隠れて筒に魔力を込める。それだけですわ」

「……それで、俺の雪辱が果たせるというのか」

「もちろんですわ、そこについては保証いたします」


 その後のことについては、大人たちの領分。

 そしてわたくしの──エリシオン侯爵家の力を使えば、どうとでもなる話。

 ええ、ええ。ただわたくしたちは、「事故」を起こすだけですもの。


「……お前の話はわかった。受け取っておく」

「感謝いたしますわ」


 筒を渡し、わたくしは踵を返しました。

 さて、大変悲しいことではございますけれど。

 シャルローネ・アクシアだけでなく、リーヴェ・アルモントにも、「百合園」の取り巻きにも──わたくしの野望のために、生贄になってもらうことといたしましょう。

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