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「誰……じゃ?」
戦っておった。ずっと……長い間……
「いや、いつからじゃったか」
わからない。でも、戦うことをやめてはいけないことだけはわかった。だから、迫りくる龍の陰からずっと戦って自分のこの狭い領域をだけを守ってた。
それが自身がいる証明。消えない証。すでに自分が何者なのか、何なのかもわからない。
だが、拳を突き出し、脚を上げる事をやめはせぬ。それが必要だからと、この魂がいっておる。朽ち果てたような枯れ木だった体も、今やムキムキの頑強さを身に着けた。
いやここでは自分を食らおうとするこの者たちにはそんなもの、なんの意味もないだろう。けど、この姿はきっと自分の意思の表れでもある。屈しない心が、体へと表れておる。
たとえこの体がどれだけ筋肉でおおわれても……それが意味がなくても、この裸一貫の鎧が、自分の意思を表してくれておる!!
じゃが……
「ぜぇ……はぁ……重いのう……歳か?」
そんな風に思ってしまう時もある。一体どれだけこうやってればいいのかもわからぬ。自分ではここから移動すらできない。ひたすらに、ここで耐えるだけ……無限に……永遠に……それに意味があるのか? そんな問いがふと頭をよぎるとき、心が折れそうになる。じゃが何度も何度も跳ね返してきた。幾度となく、もう飽きるくらいにその問いをやってきた。心をいくら決めても、疲れて時にふと……絶望の悪魔は顔をのぞかせる。
「もう、いいじゃないか?」――と、「いくらやっても意味なんてない」――と、奴らいってくる。じゃがそれらを自分は何度も跳ね返してきた。なにせもう、意味など考えるべくもない。ただ、「受け入れがたし!」――それだけだ。
そんな中、ふと、拳の向こうに誰かがみえる。今までこんなことはなかった。ここでは現れるのは自分を食おうとする存在だけ。そいつらが永遠に襲い続けてくるだけの場所のはず。
それなのに、誰……かがいる。
「そんなはずは……ない」
惑わされるな……と思った。希望を見せてそれを奪い去る。そういう類だと……いや、そもそも今の自分に希望さえも必要ではなかったはずだ。ただひたすらに今を保つ。ただそれだけだったはず。
絶望をそれで払いのけた。それは、希望も同じ。そのはずだ。けどそれはやってくる。こちらに……はて誰だっただろうか? けど……
「美しい」
ただその言葉が出た。彼女の光で、この暗闇が晴らされていくようだ。




