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「くっ、始祖様!」
「どうしたの?」
「転生が……いえ、概念が暴れだしました」
「バレたか」
概念が暴れだす? それはとてもおかしな言葉だろう。私も「はぁ?」とか正直思った。でもすぐに思いいたったよ。きっと始祖の龍だ。奴が気づいたんだと思う。なにせもうあとは全ての宇宙を飲み干すだけだからね。
そこで何か違和感があったんだと思う。だからこそ、あいつが概念……いや宇宙の仕組みに目を向けた。あいつが理解してるなんて思わないけど、始祖を侮ってはいけない。
理解なんてしてなくても、始祖には宇宙そのものが忖度するものだ。だって生みの親だからね。新生宇宙が私に忖度してくれるように、現宇宙は始祖の龍に忖度する。それはずるいとかそういうのじゃなく、そういうものなんだ。
それが始祖。だからおかしいことをどうにかしようとおもうだけで、宇宙はそれを修正しようとするだろう。それがイセノ神の転生を阻んでる原因。もしかしたら、始祖の龍だからスルーしてくれるかも……って思ったんだけどね。
だってあいつって細かなことはどうでも良さそうだし、更にいうと楽しそうなことを優先する性質というのはこれまでの戦いでわかってる。だからこそ、なにかやられてる……とわかっても、とりあえず見て見ぬふりをするんじゃないかって期待してたんだけどね。
それにもう既に始祖の龍って現宇宙に対して未練とかなさそうじゃん。だって既にデザートまできてるよ。
食事の90%は終わったとみていい。ここでなにかあるとすると、それはサプライズってやつになるだろう。ほら……始祖の龍ってサプライズとか好きそうじゃん。だから見逃してくれるかなって期待してた。自身の宇宙が自身から離れるって普通は思わない。でもそれが起きたら――
「なんだこれ!? すげええええ!!」
――とかさ。そういう風におもうかなってちょっと期待してたんたけど……どうやらそれは許容してくれないみたいだ。でも……ここまできたらごり押すしかない。概念の変更に概念の変更を重ねて、更に修正してこようとする概念を変更する。
そうやって押し合いをやってやる。だってそれしかないし? 基本的にこの宇宙の根幹を完全に支配してるのは始祖の龍だから通常ではごり押しなんてのは発生しない。完全に始祖の龍がマニュアルにしようとした時点で、その権限は全て始祖の龍が掌握するのが原理原則だ。
けどオートの時点で始祖の龍自身が食い荒らして、縮めてたこの現宇宙の仕組みや概念は大きく私たちが書き換えてた。だからこそ、さしもの始祖の龍とも拮抗できる。でも……
(このままじゃ、負ける)
それがわかる。でもその時、こんな声が聞こえた。
「ここしかないようね」
そんな声がね。




