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爪の一本であの労力だ。全身を完璧にメイクする前にどう考えてもカサノヴァはやられるだろう。ほかの有象無象の神や竜をたぶんカサノヴァはうまく使うつもりなんだろう。けど……
「せめて自分のメイクで強化しておくべきだったでしょ」
本当にそう思う。だってあのメイクでカサノヴァの支配を強めることができるのは確定だと思う。それによってきっと格下の相手なら強化とか入ると思う。実際始祖の龍に対してそれが有効なのか? と問われれば、五十歩百歩といわざるえない。それは確かだ。
単純な戦い……では始祖の龍をどうにかできるわけないからね。でも何もしないよりはいいじゃん。それにあのドバっという感じでメイクをとりあえず施せるのなら、大量についてきた神や竜を少しでも強化しておこう――と思うのは一般的な考えじゃないかな?
でもカサノヴァはそれをやってない。自分のメイクは安売りしない主義? でも相手は始祖の龍だよ? 出し惜しみして勝てる相手じゃない。そもそもが全力を出しても勝てる見込みなんてほぼないとわかってるはずだ。
「早く全部を出してよ」
私は思わずそうつぶやく。一応フォローを入れるけど……この姿では限界があるし。私はカサノヴァの最後を楽しみにしてるんだからさ。でもただ死んでほしくはない。そんなのはなんの意味もないからだ。カサノヴァは絶対な自分主義者だ。
勝算もなく戦いに挑む……そんなやつじゃない。じゃあなんでこんな戦いを起こしたのか……もちろんそれは簡単な理由だ。つまりはカサノヴァは最初から始祖の龍に勝とうなんてしてない。じゃあこの戦いになんの意味があるのか?
カサノヴァにはもちろん狙いがある。でもそれには全力が必要だ。カサノヴァでも死を引き換えにするだけの代償。そしてそれは他の者に任せることはできない。だからカサノヴァ自身がこんな超危険な戦場に出張ってる。
そしてその目的に他の神も竜も賭けてるのだ。その目的は何か? それはこの宇宙……神一人一人が持つ宇宙じゃないよ? この現宇宙と私が呼ぶ既存の宇宙……それからの魂の脱却。輪廻からの解放……そして始祖の龍の力を受ける事での宇宙の種の発芽……それがカサノヴァの狙いだ。だから最初からカサノヴァは始祖の龍を倒そうなんて思ってないのだ。
けどそれは……私とククール神による誘導だ。少なくとも宇宙の種の発芽なんてそんなのはまったくしらない。それっぽいことをいって、カサノヴァをうまく動かしたにすぎない。私を一度は殺した神だよ? そんな奴には最後に「そんなこと信じてたの? ぷぷー」っていって消えてもらうんだ。
だからそれまではちゃんとサポートしてあげる。




