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「あのメイク私は絶対にしたくないな」
私はボソッとそう呟いた。だって絶対に何かある。ただあの派手なメイクが私に合わないってだけじゃない。確かにあのメイクは私には合わないだろう。私だって濃くメイクをする時ってやつはあるよ? めっちゃ派手なドレスを着る時とかね。
やっぱりメイクって服とか顔とかとのバランスって所が大事だ。見た目って何も顔だけってことじゃないしね。全体だよね。一箇所だけに力を入れてもバランスが悪くちゃ、それはいいメイク、正解のメイクとは言えない。
けどまあそこら辺はきっとカサノヴァのやつだってわかってると思う。そこはほら、私とはベクトルが違うけど美を愛してるやつだ。もしも私があんなカサノヴァのようなメイクをいきなりしたら……みんなきっと心配するだろうね。
それだけいつもの私……じゃないもん。いくら派手にメイクをするって時でもあんなふうにはしないよね。でも……
「あの始祖の竜に影響を与えるって……」
確かにメイクにはそういう効果があったりする。自信かない女の子がメイクを覚えて自信をつけるってのは往往にしてある。それは迷信なんかじゃなく確かな化学的効果としてあるのだ。
それはつまりはメイクは精神にも影響を与えるってこと。けどそれが始祖の龍にまで影響を与えるなんて……ね。始祖の龍自体は気づいてないかもしれない。
でもどこかに違和感はあるだろう。完全にあのメイクによって始祖の龍の精神を支配してるか? といえばそんなことは絶対にないだろう。
さすがにそこまでは行かないし、いくことはできないだろう。完成した時に始祖の龍は咆哮を放って完璧だったメイクを崩してる。けどそれでも影響は残った。
何か始祖の龍にも違和感ってやつがあったんだろう。だから一気にメイクを崩した。
「ふふ、メイクはね、一度やったらもう戻れないのよ」
何やらそんな不穏なことをカサノヴァが言ってるのが聞こえた。カサノヴァは宇宙に何かを設置してる。その手にはやっぱり武器じゃなく、メイク道具。きっとカサノヴァにとってはメイクをする道具こそが武器なんだろう。
どうやら遠距離では確実じゃないって始祖の龍も気づいたみたいだ。それでも一回限界まで貯めたエネルギーを拡散さゼる。まるで太陽……いやそれよりも強大なエネルギーの塊が花火のように周囲に放たれた。
これによって周囲の神や竜たちもてんやわんやだ。始祖の龍にとっては何でもないただのエネルギーの発散だったとしても、そこらの神や竜にとってはそれだけで大ダメージを受けるものだ。だから避けないわけには行かない。沢山いたからこそ、それは大変た。
てんやわんやの有象無象に目もくれずに始祖の龍はカサノヴァを目指す。そしてカサノヴァはそんな始祖の龍から逃げ出した。でももちろんただ逃げてるってだけじゃない。




