表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

終話.ジント帰還後

本日二話投稿の、二話目です。


これで完結です。


今まで私の拙いお話を読んで下さり、ありがとうございました。

「いつまで寝ているんだいっ、さっさと水汲みに行ってきな!」

 いつもは(ほが)らかな筈の母親が、珍しく強い口調で言い付けてくる。

 今ひょっとして蹴とばされた?その構えている麺棒は何?朝から麺を打つの?


 カーンカーンと、懐かしい明けの鐘が鳴り響く。

「あー、おはよう母さん、水ね、うん、わかったー」

 空気が乾いている、乾期の水場はほぼ泥水だから、汲みに行くついでに濾過装置の材料も集めながら行こう、砂と石と炭とー、後は・・・

 久しぶりに水瓶を担ぎ上げると空なのに重かった、コイツも何とかしないと、ポリタンクって軽かったなー


「お、お兄ちゃん?」

「あんちゃん?」

 声のした方を見ると、弟妹達が物陰や父親の背中の陰から、驚いた顔をのぞかせている、と言うか父親も驚いている。

「どうした?お前たち?」

 あれ、こいつら育ってないなあ?てっきり次に会うときは大人になっているもんだと・・・あれ? 俺って(イマ)年齢(とし)(イク)つ?

「お兄ちゃん、元に戻ったの?」

「え?なに?」

 うん、確かに入れ替えた魂を元に戻して貰ったけど、使徒様はうちの家族にどんな説明をして下さったんだろう。

 向こうで俺が上手く立ち回れなかったので、杉本の爺ちゃん達には、『夢告げ』をして下さったそうだけれど。


「お貴族様の馬車に撥ねられてから、お兄ちゃん別人みたいになっちゃってたんだよ!」

 うん、実際に中身(タマシイ)が別人だったしね・・・

「そうだよっ、乱暴者になっちゃうし、隣近所のみんなにひどいこと言うし、トタムもサンナもみんな怒らしちゃったし。」

「黙って市場の仕事は辞めちゃうし。」

「この街を出て、他所の大陸に行くとか言いだしたり!」

「伝手も何も無い浮民村の住人なのに、口入れ屋も通さないで大店(おおだな)に押しかけて行っちゃうし!」

 なんと、まさかの説明無し?

 チビ達5人が半分泣きながら一斉にしゃべるので、半分ぐらいは何を言っているのか分からないけど『俺』が相当酷かったのは分かった。


「ああ、ごめん、兄ちゃんが悪かった。」

 困り果てて、母親を見ると。

「前世がえりってのは、早くて5日長くても10日で収まるって聞いていたのに、あんたは三月(みつき)もかかったんだよ。」

 とのこと、父親も

「転生者達の礼拝堂に10日程泊まり込んだが、お前は帰ってきた、でも中身はそのままだった。」

 と、言う。て言うか、父さんも家の中でその(なた)は何?


 入れ替わった時はお互いに魂で顔なんか見たくても"無かった”けれど、

 こちら側がこんな状態にされてるとは知らなかったけれど、

 杉本の爺ちゃんによれば、『破落戸(ごろつき)にすら愛想をつかされる屑』って説明された時は、まさかぁって思ったけど、

 三月?たったの三月で何をしてたの?


 俺だって神様のお召しに応じたからだと言い訳しても、20年以上自分の望むままに好き勝手にしていた。

 向こうと同じだけの時間がこちらにも流れていたら、今目の前にいる家族は多分もう居なくなってた、俺だって家族を捨てたのも同然だった。

 でもこれは酷い、俺の代わりにこちらに来ていた浩輔が、何か罪を犯していたら、それを止めなかった家族も連座して処罰されていたのに。

 知ってたらアイツを殴ってたさ、お互いに身体が無かったけど。


 そういえば、別れ際に使徒様が、

【あなたが命を落とした直後に、無傷で戻すことも出来るけれど、これ以上世界に無理をかけたくないの、ごめんなさいね】

 と、畏れ多くも謝罪して下さった。


 そう、俺は馬車に轢かれて死んだんだった。本当は体の上を(ひづめ)と車輪が通った。


 さっきは何を謝罪されているのか分からなかったが、このことだろうか?


 なら、これからするべき事は、

「あのさ、俺は今までの事を覚えてないから教えてくれるかな?みんなに謝りに行かないと。」

 家族に聞いたら、謝る相手は知り合いほぼ全部って、答えが帰ってきた。

 具体的に言うと、腕っぷしの立ちそうな男衆以外は、近隣一帯の万遍(まんべん)なくだそうだ。



 水汲みは一旦後にして、()ずは幼馴染達から謝りに行こうとしたら、当のサンナが飛び込んできた。

「ああ、サンナ良いところに、今お前に会いに行こうと思っていたんだ。」

「バカ野郎、今すぐ逃げろ!神殿がお前を探しに来たぞ。お前は一体何をしたんだ?」


 え?何って?それは俺が一番知りたい。


「何をしたって聞かれても・・・何だろう?」

「俺に聞くな!バカ!トタムが道案内を遠回りして、神殿兵達を足止めしているから、とにかく急げ」


 持つべき者は友達だなぁ。


「ありがとうな、ここしばらく俺はおかしかったんだって?じゃあそれは仕方がないよ、逃げたら家族に迷惑が掛かる、逃亡を手助けしたらお前もトタムも捕まってしまう。」

 それに俺が戻ってきたのは今さっき、使徒様だって様子を見ていて下さるだろう、きっと、

 打算だと自分でも思うけれど、手間暇かけて『向こう』で学ばせて来た俺を、戻ったその日に死なせるような事にはならないと・・・たぶん、そうだよな?




 覚悟を決めて待っていたら、



「ジント様、神託により、貴方様をお迎えに上がりました。」

 なんと!大司祭様に平伏された。平の司祭様じゃないよ!《大》司祭様だよ!


 儀式用の豪華な衣装で、我が家の土間で。いや、木の床なんてウチのどこにも無いけど。

 家族と近所の住民は、司祭様に向かって平伏している。

 司祭様が連れて来た、神殿の兵士達は司祭様に倣って俺に対して平伏している。

 立っているのは俺だけ。



 ああ、神託か、神託ね・・・

 使徒様が決して悪いようにはされないだろうとは、思ってはいたんだよ。希望的観測ってやつだけど。


「あの、お願いですから、まずお立ちになって下さい。お召し物が汚れます。」

「私の衣などどうでもよろしいのです、賢者様、どうぞ私共(わたくしども)と一緒に王都においで下さい。」


 賢者って誰?


「あの何かの間違いという事は無いでしょうか?」

 間違いでは無いのは自分が一番分かっているけど、一応抵抗はしてみる、俺としてはいきなり国に抱え込まれる予定じゃ無かった。

「間違いではございません。神与(しんよ)の知識を授かった賢者様は、緑金(りょくきん)の髪と青緑の瞳、何より首筋に刻まれた冥府の女神の神印がその(あかし)にございます。」


 黄緑の髪なんてこの近隣では珍しくないけれど、差し出された鏡には、襟ぐりの深い服(と言うより布が古くて伸びきってるだけ)の頸動脈の上、確かに首元に『白銀の長柄の鎌』の印が有る、しかもうっすらと光を放っていて、刺青(いれずみ)です、では通らない、あ、そもそもこっちの世界には刺青の技術はまだ無かった。


 いつ付いたんだいコレ?さっきまで家族もサンナも指摘しなかったぞ?


「あの、俺は三男ですけど、長男次男は亡くなっていてですね、俺がココからいなくなるのは・・・」

「もちろんご家族の今後の暮らしも、王家と神殿が、神子様のご家族と同等の待遇で、保証を致します。」

 ささやかに抵抗してみたけど、回り込まれた!


 俺みたいな浮民が、神子と同じ扱いって、無理だよ!お育ち的に!

 使徒様、お願いですから助けて下さい。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 使徒様達は、冥府の神様そのものではなく、更に下っ端の部下です、ちなみに冥府神の手抜きで、全員が同じ姿なので、複数回会ったジントも薫子も区別がついていません。


 これから死ぬ(予定の)魂だけを取り扱うのですから、死神なのです。

 彼女達の計算違いは、ジントと浩輔のどちらか片方が生きていると、死神である彼女達には手出しが出来ない事なのでした。

 ジントに宿った浩輔が僅か三ヵ月滞在(巻き戻し重複分は含まない)で肉体年齢15才のまま。

 浩輔に宿ったジントが21才夏の肉体に入り込んで、そこから25年間地球側に留まり続けて肉体年齢46才。

 とても大きな誤差が発生してしまったのを、上の方の姉(上司)やお仕えしている神様の助力まで借りて、やっと無理矢理回収したのです。

 余談ですがこれから使徒様本人達(本神?)には大きなペナルティが課せられます。


 ジント君(本人)が認識しているよりも、もっと深刻に社会的にも医学的にも抹殺されるところだったんですが、与えられた使命を果たして戻って来たのに褒美の代わりに処刑が待っている、と言う訳にはいきませんので他の使徒達が修正しました。


 ジント(に宿った浩輔)が死に戻りに気が付いた、最初の『朝』に戻されました。


 名誉棄損の損害賠償として、神託を下したので、ジント君が嘆いても使徒様は助けてくれません、色々それどころじゃなくて。


 本来の身体に戻ったジント君は、これから知識チート、生産チート、内政チートは行うでしょう。

 聖職者ですから妻帯は出来ますがハーレムはありません、あちらでの育ての親である杉本老人は亡くなった奥様一筋、下半身がだらしの無い男は大嫌いだったので、ジント君も生臭坊主はあり得ないのです。

 腕っぷしも、この世界基準(強い!の基準は下限が王宮騎士、上限が勇者)ではからっきし扱いですので、無双も無いです。

 大事な賢者様を、戦争の前線(やおもて)みたいな危険(カツヤク)な場所へ、周囲の人々が出す筈が無いのです。

このお話を書こうとしたきっかけは、『なろう』の再ジャンル分けでした。


異世界転生でも転移でもない、ハイファンタジーでもローファンタジーでもない、全部に該当しないお話しは書けないものかな?

よし、自分でお話を書こうと思ったのが始まりです。


そして私がマイナー好きなもので、出来るだけ受ける定番を外した、隙間産業の様な自己満足のお話が出来上がりました。

タイトル詐欺、あらすじ詐欺も目指していたので、肩すかしをされた方がいたら申し訳ありませんでした。

読んでいただいた方達に、楽しんでもらえたのか心配ですが、これにてひとまず終了とさせて頂きます。


お付き合いいただきありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ