2:イベントは恋の予感
ポカポカとあたたかい春の日差しに目を細める
「晴れてよかったねぇ」
「うん、でもちょっと暑いぐらいね」
今日は私達が2年生になって初めてのイベント
2泊3日のオリエンテーション合宿に来ている。
「1年生の時のオリエンテーションは学校だったし泊まりがけじゃなかったからドキドキするね」
「リリーは好きそうよね、こういうイベント行事。私はもう帰りたいぐらいだよ」
「去年はレオと同じクラスでセシル以外との仲を深めれなかったからね、今年は楽しくなりそう!」
「あー確かに、去年はレオノール様が目を光らせてたから誰もリリーに近付かなかったもんね」
そう言ったセシルの言葉で、私は絶望の1年間を思い出していた。
ドキドキした気持ちで迎えた入学式。クラス発表を見た時に少し気持ちは曇ったが、それでも楽しい学園生活を思い描き、少し震える手で教室の扉を開ける。
顔をあげた瞬間に目に入るブルーブラックの髪とタンザナイトのような瞳。本能的に逃げたくなり、踵を返した時にはもう遅かった。
私が逃げ出す事を予期していたかのようにいつの間にか腰に絡みついていた腕と、耳元で囁かれる言葉。
「どこへ行くのリリー?もう逃げられないのに」
なんてね、と笑いかける彼の顔を見た瞬間
私の思い描いていた夢の学園生活がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。
その予想通り公爵家の婚約者である私に近付くクラスメイトは居なくて、とても刺激のない1年間を過ごした。幼い頃から仲の良かったセシルがクラスにいなかったらと想像するだけで恐ろしい。
「セシル…セシルが居ないと生きていけないよ…」
とセシルへの感謝の思いが溢れて腕に絡みつくと
「なに突然?暑さでおかしくなっちゃったの?」
暑いから離れて、と冷たくあしらわれる
そんな冷めた態度も可愛いよとしつこくじゃれついていると、クラスの集合の声がかかる。
「1日目はスタンプリレーだ。事前に決めてあるグループごとに分かれて、このチェックポイントのヒントが書かれた地図を頼りにゴールを目指せ。もし怪我人が出たり何かトラブルがあった時は1人きりになる者がいないように分担してチェックポイントに居る先生に知らせる事。説明は以上、ではスタートだ」
「よし、みんながんばろうね」
「はぁ、この暑さで今から山道登るなんて…」
「みんなで協力して怪我なくゴールを目指そうね」
「2人が怪我しないように俺が絶対守るぜ」
「僕が効率よく最短ルートでスタンプを集められるようにするからね」
私達のグループは、私とすでにやる気のないセシルと
クラスの学級委員であるウィル様と
騎士の家系で体力自慢のケイン様と
クラス一の秀才であるクロード様の
なかなかバランスの良いメンバーだった。
過去の卒業生や今の3年生には、このオリエンテーションで生まれたカップルがたくさんいるらしい。
他のグループや他のクラスの人たちもどこかそわそわと期待しているようだ。
「レオノール様と同じ班だなんて嬉しい!」
「レオノール様の事をたくさん知りたいですわ!」
「レオノール様のために頑張ります!」
隣のクラスのレオと同じグループの女の子達がはしゃいでいた
(あんな可愛い女の子達と苦楽を共にしたらレオも誰かと恋に落ちちゃうんじゃないかしら!?)
みんなとは別の意味でこのオリエンテーションに期待が膨らんだ私は、気合を入れてチェックポイントへと歩き出した。




