↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
pieces of a puzzle comimg together  作者: AKIRA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

第二十四話 契約の儀

 剛は、差し出された契約書とマンションの鍵を睨みつけたまま、絞り出すように言った。


「……なあ、婆さん、いや……志野さん、正気か?……得体の知れないこの俺に大事な孫を預けるってのか?こいつは神無月の至宝……なんだろ?あんた達にとっちゃ、代わりの利かないお人だろ?」


剛の言葉は、彼なりの誠実さであり、同時に志野への反抗でもあった。自分を信用しすぎるなという警告。

しかし、志野は、氷のような微笑を浮かべて言い放ったのだった。


「……うちがそんな事するわけないやろ?興信所使うて、全部調べさせて貰いましたわ。あんたの身元から、日々の行いから、全てや」

「……」


剛の言葉が、喉の奥で凍り付いた。


「あんたがバイト先で客と揉めてクビになったことも……ああ、仲間庇うたらしいわな。ほいから、自分の食い扶持削って、菊人に食わせてたことも……ぜーんぶ知っとるよ。あんたは『あの子を利用しようとは思っとらん』と確信したから、うちはこうしてあんたを呼んだんや」


志野は、剛の顔のすぐ側まで歩み寄り、静かに耳元で囁いた。


「あんたは自分一人の力であの子を隠し通せたと思っとったんか?……めでたい男や。あんたがあの『犬小屋』で菊人と肩寄せ合っとる間、うちはずっと待っとったんやで」


剛は全身から血の気が引くのを感じた。自分が必死に守ってきた「二人だけの生活」は、志野にとってはいつでも潰せる箱庭の中の出来事に過ぎなかったのだろうか……。


「……だったらさ、もっと早くに迎えに来てやれば良かったんだ……」

「まさか……。あんたがいつ、その安っぽい自尊心を捨てて、うちに頭下げに来るか……それを待っとった。けれど、あんた、最後まで来んかったなぁ。……しょうがないから、うちのほうから折れてやったわ。あんたのその馬鹿正直な『覚悟』……うちは嫌いやあらへんえ」


志野は再度マンションの鍵を剛の手に押し付けた。


「……興信所の報告書、見たかったら、いつでも見せてあげるわ。あんたが自分で気づいてないような、あんたの『弱点』までしっかり書いとるからな」


剛は、自分の全てを握り潰されたような屈辱を感じながらも、その「上手(うわて)」過ぎる志野の計略にただ沈黙するしかなかった。

志野という女は、情で動く剛が逆立ちしても勝てない、本物の「怪物」であったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。