走馬灯?
ーーー様、
ーーーお、、、様、、、
(ん…?何か聞こえる……?)
「お嬢様、そろそろ起きてください!」
「………?」
重たい瞼を開けると、目の前には見慣れた天井。
(え…?ここは私の、……部屋?)
ああ、走馬灯というものだろうか?
ぼんやりと視線を声のした方へ向けると、物心ついた頃、いや、それよりもっと幼い頃からずっと傍にいる、専属侍女の姿があった。
侍女ではあるが、最早自分にとっては姉のような存在だ。
(ん…?でも、かなり若いような……?)
確かアンは今年で30歳。
しかし、今目の前にいる彼女は20代前半位だろうか。
(まあ、走馬灯だもの。そんなこともあるわね。)
未だ横になりながらぼんやりとアンを見つめていると、怪訝そうにアンの口が開いた。
「お嬢様、まだ寝ぼけていらっしゃいますか?
そろそろ起きないと、旦那様達に置いていかれてしまいますよ!」
「えっ?」
ぱちぱちと目を瞬かせると、走馬灯の中のアンはハア、と大きくため息をついて、私の体からベリッと布団を剥がした。
「今人気の観劇、お嬢様が観たいと仰ったのでしょう?
ほら、急いで準備しましょう!」
慣れた手つきで私を鏡台の前に座らせると、じんわりと温かい蒸しタオルで顔をやさしく拭き取られる。
(わ、温かい。………温かい???)
ほかほかの柔らかいタオルで顔が温められていく感触に癒されながらも、走馬灯とは感触まであるものなのか?と不思議に思う。
まるで現実のようだ。
その間にも、アンの手によりどんどん身嗜みは整えられーーー、
「さ、完成しましたよ!
今日も私のお嬢様は最高に美しいです!」
フフンと得意気なアンに促され、
全身鏡で出来上がった姿を見て、絶句した。
これは………
(忘れもしない、11歳のあの日。観劇場で殿下と出会った日の私だわ……!)
透き通った空のような水色のレースが、白くキラキラと輝くシルク地の裾を覆うように彩る可愛らしくも上品なドレス。
このドレスは、11歳の誕生日祝いにと両親から贈られたものだ。
(私の水色の瞳と銀色の髪色に合わせて作られたようで、嬉しくて早速翌日のお出かけのときに着て行ったのよね…)
ーーーただ、着れたのはその一度だけだったのだけれど。
(と、いうことは。)
「アン、今日は何月何日かしら?」
「?何を仰ってるんです?9月16日ですよ!
昨日はお嬢様のお誕生日だったではないですか!」
(……やっぱり。)
それにしても、一体どういうことだろう?
走馬灯かと思っていたが、一向に終わる気配がない。
今鏡に映っているのは紛れもなく、『7年前の自分』だ。
(あのとき、私は自分で喉を切った……はず。)
無意識のうちに右手で首元に触れると、ナイフが喰い込んだ感触が生々しく思い出され、小さく身震いをした。
「お嬢様?もしかして本日はお加減が悪いですか?
いつもと少しご様子が、、、」
私の顔色が悪くなったことに気付いたのか、アンが眉をひそめ、心配そうに声をかけてきた。
(もしかして、さっきまで見ていたのが夢かとも思ったけれど。
あの生々しい感触は、夢というにはあまりにも……。)
「大丈夫よ、観劇が楽しみであまり眠れなかっただけだから。」
アンに心配をかけないよう微笑む。
「そうでしたか。
では、旦那様達もお待ちですので早速ロビーへ向かいましょうか!」
「ええ」
(走馬灯なのか何なのか、よくわからないけれど。
もう少し様子を見て見極める必要がありそうねーーー)
グッと気持ちを引き締めて、私はお父様達の待っているであろうロビーへと歩き出した。
まさか、読んでくださってる方がいるとは思わずだらだら展開を練っていたらかなり更新が遅くなってしまいました。ありがとうございます!
誤字脱字、ご感想などもお待ちしてます!




