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16話『"無能"の初クエスト①』

お久しぶりです


 ーーータッタッタッ



 「みんな、早く!!急いで!!」



 草原の近くにある森の中で、傷だらけの3人の女性が顔を青くさせながら走っていた。何かに追われているようにみえる。


 「何よ………何よ、あのモンスターは!!あんなの………クエストには載ってなかった!!!」


 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!今は逃げることに集中しなさい!!」


 「ふ、2人とも喧嘩しちゃダメだよ〜」


 3人はギャーギャーと騒ぎながら、全力で森の中を走る。




 ーーーーーゾッッッッッ!!!!





 「「「ーーーーーーーーッッッ!!??」」」





 彼女たちの背後からは今までに感じたことの無い殺気が漂ってくる。それはとても脅威的な殺気で、それによって3人のうち2人が気絶してしまい、口から泡を出して倒れてしまった。


 「ッッ、2人とも………きゃあ!」


 背後から漂う殺気に何とかギリギリで耐えた1人の少女も足がもつれてしまい、膝を地につけてしまった。すぐに立ち上がろうとしても、足が震えて言うことが聞かない。



 (誰か…………助けて)



 少しずつ少しずつと自分たちを追う『何か』の足音が大きくなっていくのを感じながら、少女は瞳に涙を浮かばせそう思うのであった。





 ♠️♠️♠️♠️♠️




 時はほんの少しだけ遡りーーーー



 「うーん………、詳細だとここ辺りなんだけどなぁ………。」


 ヒナの背に乗りながら、ウルフは頬をポリポリと掻いて言葉を呟く。クエストの詳細だと、『ユマニ街』の近くにある草原にコボルトが住み着いているとなっているが、いざ行ってみるとコボルトどころか他のモンスターの気配さえ感じることは出来なかった。


 ウルフは視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚といった五感が他の誰よりも冴えているため、ターゲットを見つけるのは得意な方である。しかし、未だにその五感センターが反応することは無かった。


 ここで考えられることは2つ。



 1つは、クエスト関係なしで他の冒険者によってモンスター達が狩られてしまったこと。これは冒険者をやっていく中ではよくある事だ。しかし、そうなると事前にギルドの方から連絡が送られてくるため、可能性は低い。



 そして、もう1つは…………



 「高ランクモンスターが潜んでいる…………とか?」



 ウルフは周りを警戒しながら、そう呟いた。


 これも可能性としては0ではない。むしろ、この状況を考えればその可能性の方が高いかもしれない。


 数え切れないほど存在するモンスターが高ランクモンスターと認定されるには多くの基準がある。モンスター自体の強さは勿論のことだが、他にも知能の高さやモンスターの発見率にも大いに関わりがある。


 もし、知能が高いモンスターならばウルフの五感センターに引っかかることなくこの辺りに潜むことなど容易いことだろう。


 ウルフは即座にギルドカードを取り出してメッセージ機能を起動させる。


 『は〜い、こちらギルド本部で〜す。こちら〜、ギルド受付担当、ディーナが承りま〜す』


 数回のコール音がしたあとに、すぐに女性の声がカードから聞こえてきた。言葉の言い方からして、先程、ウルフのクエストを受理してくれたあの受付の女性だと分かる。


 「Fランク冒険者のリーフです。」


 『あ〜、さっきクエスト受けてた方ですね〜。どうかされたんですか〜?』


 「僕、Fランクのコボルト討伐のクエストを受けて草原に来てるんですけど、モンスターの気配を一切、感じられなくて………。他の冒険者が討伐したっていう報告は来てないですか?」


 『そうですね〜、私〜、昨晩からここにいますけどコボルト討伐の連絡は来てないですね〜。』


 ウルフが考えられる2つのうち、1つがディーナの返答によって潰されてしまった。つまり………


 「コボルトは基本、住み着いたら最低でも2年は余程な事がない限りはその場に留まるモンスターです。そんなコボルトがいないってことはーーー」



 『………高ランクモンスターがそこに潜んでる可能性があるってことになりますね〜』



 少しだけ動揺が見られるような感情が込められた言葉を出したディーナ。たった少しの情報でここにたどり着くと考えるとディーナは見た目に反して頭が鋭いらしい。


 「どうしますか?」


 『至急〜、何人かの冒険者をそちらに応援として駆けつけさせま〜す。』


 ディーナはギルド本部の受付として慣れた口調で今後の対応をし始める。実力のある冒険者を何人かをウルフのいる草原に派遣させ、捜索させるようだ。


 「僕はどうすれば??」


 『リーフ様は冒険者が駆けつけるまで〜、草原近辺にある村まで行ってもらって住民の方々に注意の呼びかけをお願いしてもいいですか〜??』


 草原の近くには、今回、コボルト討伐の依頼を出した人が住む村が存在する。もし、本当に高ランクモンスターが潜んでいるならば、それを村の住民に知らせなければならない。最悪の場合、避難する必要がある。


 「分かりました。今すぐにーーー」




 ーーーきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!




 「ーーーーーーッッ!?」



 ディーナから今後の行動の指示を言われ、直ちに動こうとした瞬間に微かだが草原の近くにある森の方から女性らしき声が耳に入ってきた。


 しかも、それだけではない。



 「なんなんだよ………、これ」



 『リーフ様?』


 音だけではない。次から次へとウルフの五感センターが反応を見せ始める。そして、その反応を感じる度にウルフは顔をしかめ、たらりと汗が垂れる。


 ウルフは自分の五感センターによって4つの『何か』が動いているのを理解することが出来た。その内、3つは音や匂いからして女性だということも。



 問題なのは残りの1つの方。



 これは音や匂いからして人間ではない。確実にモンスターだ。しかも、そのモンスターは3人の女性とは違い、今までに味わったことのない程に大きな殺気や威圧を発している。ここからかなり離れているはずなのに、ウルフは鳥肌を立ててしまうほど、それを肌で感じていた。



 このモンスターはヤバい。そして、そらに追われている女性がかなり危ない。


 『リーフ様〜?どうしーーー』




 「ディーナさん!森の中で女性3人がモンスターに襲われています!!」




 『ーーーッッ!?』


 反応を見せなくなったウルフを心配してディーナは何回も声掛けをしていた所、彼は彼女の声を遮って大きな声で言葉を出した。



 「そいつが、今回の高ランクモンスターかどうかは分かりませんが、今すぐに僕は森の中に入って助けに行きます!!」



 『ま、待ってください〜!!リーフ様はFランクです〜!!行っても君が返り討ちに遭うだけーーー!!』



 「失礼します!!!」



 またしてもウルフはディーナの言葉を遮って一言言ったあと、ガチャと通話を終了させた。



 「ヒナ!!今すぐに森の中に向かうよ!!」



 「ピャアァァァーーーーーー!!!」



 ギルドカードをポケットにしまったウルフはヒナにそう声をかけ、ヒナも雄叫びを上げながら自慢の足で森の中へと走りながら入って行った。




 ♠️♠️♠️♠️♠️



 「も〜!!なんなの〜、あの子は〜!!」



 ウルフと話していたディーナは頬をふくらませながら、言葉を出していく。先程のウルフの行動をみれば、失礼極まりなく、彼女がぷりぷりと怒るのも無理はない。


 「それより〜、早く連絡しないと〜!!」


 かなり怒っているディーナだが、こんな所で愚痴を言う時間はないということは百の承知だ。すぐに彼女はギルドカードを手にして何人かの冒険者に連絡しようとした所で


 「どうしたの?ディーナ」


 近くから聞きなれた声がディーナの耳に入っていく。振り向くとそこにはーーー




 「ッッ、クーちゃ〜〜ん!!!」




 彼女の目の前に現れたのは、Sランク冒険者の1人、『氷の狂戦士』という2つ名を持っているクリスだった。美麗な彼女の顔や装備品が少しだけ汚れているため、クエストから帰ってきたのだろう。


 ちなみに、ウルフは知らなかったことだが、ディーナはクリスが冒険者になった当初から仲良くなり、プライベートでも数多く一緒に出かけたりしている。クリスの数少ない心を開いている人物でもあった。



 「うぇぇぇ〜〜ん!!クーちゃ〜ん!!助けて〜〜〜!!!」



 「………詳しく聞くよ。」



 ディーナは泣きながらクリスに抱きついて腹部に顔を埋める。クリスは呆れながらも、少しだけ微笑みながら言葉を呟いた。



 そして、その数分後。ギルドから1人のSランク冒険者がウルフ達がいる方角へ向かったのが確認された。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] おお? 2人になにかしら前向きな進展があるといいなあ。
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