17話「"無能"の初クエスト②」
お久しぶりです
Eランク冒険者、ナルイは今日はただ、パーティーメンバーであるノーノとツバキの3人でEランククエストを受けるだけの予定だった。
クエスト内容は森の中に生息する薬草を2束採取するという比較的簡単なクエストだ。しかも、ノーノの加護は『探索』。能力としては彼女の半径10メートル以内の物質を探ることが出来る。
彼女の加護のお陰で、モンスターに出来るだけ遭遇することなく薬草を2束採取することができた。
無事にクエスト達成。あとはギルドに戻り、報酬金で3人で美味しいご飯を食べに行く…………はずだった。
「ーーーーッッ!?」
唐突に、ノーノは涙を浮かべながら蹲り、苦しみ始めた。ツバキがどうかしたのか、と心配しながら聞くと彼女は震えながら言葉を出す。
「私たちの近くで何かが…………来てる………。しかも〜なんなの………この気配!?やばいよ!!」
いつもは温厚な彼女が、ここまで何かに怯え、震えている姿を見るのは初めてである。それほど、何か恐ろしいものが来ているのだろう。
「とりあえず、ここから離れよう」
「う、うん」
ナルイはツバキとノーノに言葉をかける。このままだと、さらにノーノが苦しむことになると考えられ、得体の知れない何かに遭遇する可能性がある。そうなる前にギルドに戻るべきだ
ナルイの言葉にツバキは頷き、動き出そうとした瞬間ーーー
ーーービュン!!
木々の奥から目に止まらないほどの速さで何かが通る。そして、
「は………??」
それは、ツバキの横腹を抉り取った。
「ツバキ!!」
横腹を抉り取られたツバキは膝を地につけて、苦しみの声を上げる。当然ながら、彼女の横腹からは大量の血が流れる。
「うぐぅ………!!!!」
「大丈夫!?すぐに治すから!『中級回復魔法』!」
ナルイはツバキの抉れてる横腹に手を当て、回復魔法を唱える。すると、彼女の両手はポワーっと光り、少しずつだが抉れた部分が元に戻り始める。
ーーービュン!!
「ーーーッッ!」
ツバキに回復魔法をかけている途中に、またしても何かが高速でナルイ達の方に向かい始める。しかし、まだ治療は終えていない。ナルイはぐっと目を閉じるが
「下級火属性魔法!!」
ナルイ達の背後でそんな声が響き渡り、小さな火の塊が向かってる何かの方へ飛んでいく。そして、直撃したのか、ドォォンと爆発が起きる。
「ナルイ、今のうちに!」
「ノーノ!」
先程の火属性魔法を繰り出した者の正体は苦しんでいたノーノだった。
「大丈夫なの!?」
「大丈夫じゃないけど、2人が危ない目に遭うならこれぐらい耐えるよ」
「ノーノ………」
確かに、よく見てみるとノーノの身体はとても震えていた。しかし、それでも彼女は恐怖よりもパーティーメンバーである2人を助けたいという想いで立ち上がり、火属性魔法を繰り出した。これは誰もが出来ることでは無い。本当に仲間を大切にしているかるこそ出来る行為だった。
ーーービュン!!
「ナルイ、早くツバキを。それまで、私がなんとか引き受けるから!」
ノーノはナルイにそう言って、再び火属性魔法を唱え、手の平から火の塊を発射させる。
「はぁぁ!!」
ノーノが時間を稼いでいる間に、ナルイはツバキの治療を続行させ、なんとか抉れた箇所を修復させ、止血に成功。しかし、これは応急処置に過ぎない。早く医療室へと連れていく必要がある
「悪い………助かった」
意識を取り戻し、立ち上がるツバキ。しかし、彼女はふらふら状態だった。
「ノーノ!こっちは大丈夫!!」
「OK!!『中級火属性魔法』!!」
ノーノは両手に魔力を溜めて、『初級火属性魔法』よりも威力のある『中級火属性魔法』を繰り出す。
「くっ………、今のうちに!!」
魔力がつきそうなのか、ノーノも少しだけふらふら状態としながら言葉を出し、彼女たちと共に走る。
ーーータッタッタッ
「みんな、早く!!急いで!!」
後ろを振り向きながら、ナルイらノーノとツバキに向かって言葉を出す。
「何よ………何よ、あのモンスターは!!あんなの………クエストには載ってなかった!!!」
ふらふらながらも、必死に走るツバキは大きな声で怒りをぶつける。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!今は逃げることに集中しなさい!!」
焦りゆえか、ナルイはツバキに向かって対抗するように言葉を出す。
「ふ、2人とも喧嘩しちゃダメだよ〜」
そして、2人を落ち着かせるようにノーノはあたふたとさせる。
3人はギャーギャーと騒ぎながら、全力で森の中を走る。
ーーーーーゾッッッッッ!!!!
「「「ーーーーーーーーッッッ!!??」」」
彼女たちの背後からは今までに感じたことの無い殺気が漂ってくる。それはとても脅威的な殺気で、それによって3人のうちノーノとツバキが気絶してしまい、口から泡を出して倒れてしまった。
「ッッ、2人とも………きゃあ!」
背後から漂う殺気に何とかギリギリで耐えたナルイは足がもつれてしまい、膝を地につけてしまった。すぐに立ち上がろうとしても、足が震えて言うことが聞かない。
(誰か…………助けて)
少しずつ少しずつと自分たちを追う『何か』の足音が大きくなっていくのを感じながら、ナルイは心の中でそう思うのであった。
ーーービュン!!
そして、聞きたくなかった音がナルイの耳に入る。
ツバキの横腹を抉りとった何かの音だ。回避したいが、ナルイ達は動ける状態ではない。
(あ、これ死ぬやつかもーーー)
己の死を予測したナルイは瞳に涙を溜めながら目を閉じる。恐らく、もうすぐに向かってくる何かはナルイのどこかを貫くことだろう。鍛えてるツバキの体を抉るほどの威力だ。彼女の体より劣っているナルイの体など奴からしたら豆腐みたいなものに違いない。
向かってくる音が最高潮になり、本格的に死を感じた瞬間ーーー
「もっと……ツバキとノーノと一緒に冒険したかったな」
無意識にナルイはそう誰もが聞き取れないほどの小さな声で呟いた。彼女にとって、ツバキとノーノは幼い頃からの友人で、共にパーティーを組んで過ごしてきた仲間たちだった。最低でも、3人はBランクへと昇格し、そこそこ有名なパーティーになるという目標もあったが、ナルイはどうでもよかった。
ただ、ツバキとノーノと一緒に馬鹿やりながらのんびりと冒険がやりたかった。ただ、それだけだった。
「だったら、やればいいじゃないですか。」
「え?」
近くにいても聞こえないほどの小さな声だったはずなのに、まるで聞こえてたかのような言葉が、彼女の耳に入る。その声は聞き覚えのない声だった。
ナルイはゆっくりと目を開けるとーーー
「ケモノミチ『地龍一閃!!』」
よく街で見かける地龍に乗った1人の白髪の少年が物凄い速さでナルイの目の前で、彼女に向かっていた『何か』の攻撃を弾いていた。
またよろしくお願い致します




