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或る歌舞伎町の女

斜陽をベースに歌舞伎町の女が語る

私はあの日或る男といました。粗野で品も学もない。そうお母様と女学校の学友のタエ子は言います。でも私は彼にきらりと光る、天から与えられた高貴さがあると直感しています。

彼と歩いた歌舞伎町は正しく煌めき、私の生まれ育った退屈な静けさとは違いました。

舶来品のグラスを傾ける彼の顔は私の心を反射して美しく、でも妖しかった。私はその妖艶な光に魅せられて暗く光る街の扉を開けてしまった。

タエ子はいつからかLINEを返さなくなりました。いや、私はタエ子に文を送らなくなりました。彼に愛を送りそれだけが幸せだったのです。

私は彼以外に肌を見せてしまいました。悲しい事なのに、彼はグラスを傾けてうっそりと微笑みます。だからこれは世界でたった一つ正しいことなのだと思うのです。

これでいいんだと思うのです。あなたもそうお思いでしょう?


膝に青あざのある女はそう僕に問いかけた。その女のしっとりとした口調と裏腹にその姿に高貴さはなく、それが酷く僕には悲しかった。彼女を救うなどこの僕には出来ない。僕は女に君が正しいよと嘯いて、紙幣を2枚渡した。

僕はその店を後にした。

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