或る女の面妖な顔
女生徒をベースにSNS社会で加工に狂った女の友達の独白。
信じられないわ!
ちょっと聞いてくださるかしら?
私は山の手の女学生なのですが、友達のるみ子が破廉恥なんですの。
彼女、面妖なんだわ。スマホの中の彼女の顔は目が犬畜生みたいにくりくりして鼻は噂に聞くメンフクロウのように尖っているの。
私は或る日にるみ子にせがまれてふたりで写真を撮ったのよ。そうしたらそこに写る私ったら!犬畜生の鳥畜生の顔になっていたわ。あら、一寸、お下品ですわね。これは失礼。
るみ子はこれが麗しいんですって。インスタにこの不可思議な写真を載せて他校の男性からDMを頂いてるんですって。嫌だわ、はしたない。
私はるみ子の切長の目に柔らかい鼻が愛おしいと思っているのに、彼女は変!変ですわ。
女学校を卒業して数年後のことです。わたくしはこの会話を思い出しました。
るみ子と私はあれから就職して暫くあっていなかったのです。懐かしさに微笑みながら女学校の頃の写真を振り返っておりましたら、面妖な写真を見つけたんですの。犬のように大きな瞳に、メンフクロウのように尖った鼻。これは誰ですの?としばし逡巡し、これを思い出したのです。
わたくしの自分で撮った写真は、いやだわ、思春期でしょうね、少し吹き出物があって、でもね、幼くて可愛らしい。るみ子もスッキリとした目元に丸っこくてくすぐりたくなり様な鼻でわたくしは自然と微笑みました。
るみ子の撮った写真はわたくしもるみ子も奇妙な顔をして写って、わたくしは最初わたくし達だと気づきませんでした。
るみ子から久しぶりに会いましょうと連絡が来ました。わたくしは彼女に会えることがうれしくって。浮き足だちながらヒルトン東京のラウンジにむかいました。
美しく歴史を感じさせる建物に、わたくしのように浮き足立った娘たち。西洋のティーカップにクリームの乗った洋菓子。わたくしははやる気持ちでるみ子を探しました。でもいないのです。不審に思い電話をかけると、なんでしょう。すぐ側の娘が電話を取りました。
あら、お久しぶりね。変わらないわね。るみ子はそう言いました。でもわたくしは可笑しくて怖くてどんな顔をすればいいか分からなくなりましたわ。だって、るみ子の顔は変だったのよ。
犬みたいな目にメンフクロウのような鼻。女学生の時に撮った写真とそっくり同じ顔をしていたの。
るみ子、あなたは少し変わったわね。私がそうるみ子に言うと、嬉しそうな、でも悲しそうな、噛み締めるように、ええ。とだけお返事を頂きました。話に聞くと、何かしらの怪しい施術を受けたみたいよ。なんでも、銀座のクリニックだとか。
私はもう二度とるみ子には会いませんでした。私だけが持ってる写真の中の目が切れ長で柔らかい鼻の可愛らしいあどけないるみ子だけを記憶しておきたかった。それだけです。




