第8話 魔法レベル
◆◆◆第8話 魔法レベル◆◆◆
「エーリヒ、今回の調べは付いたのか?」
俺は第三王子のオットー殿下の葬儀の後も死因を含め、犯人を捜しまわっていた。
その結果を王の執務室で報告することになった。もちろん、第一宰相で父でもあるフリードリヒも一緒に座っていた。
「はい、まずは死因ですが毒に間違いないでしょう」
「毒だと?麻薬の過剰摂取じゃなかったのか?」
王が驚いている。確かに俺も初めはそう聞いていた。
「間違いないです。幾つの瓶の中に使われていない麻薬がありましたが、全てコカの葉でした」
「コカの葉だと?山脈と魔の森の間にあると言うコカか」
これは父も驚いていた。多幸感と痛み止め、リラックスできると言う触れ込みで、昔の人は使用していたのだが、常習性があると言うのと、使っている時に魔物に襲われる事が多かったため、御禁制の薬として100年近くは禁止されていた薬なのだ。
「はい、そのコカです。全てで10本の瓶がありました。そして葉っぱが残っているのは残り3本。全てコカの葉だそうです。しかし、今使用していたと思われる瓶には何か分からない液体が葉に塗られていました。それが毒である可能性が高いとのことです。独特な香りをしていますが、もはや殿下は中毒症状が出ていたのでしょう、その匂いが分からなかったのだろうと思います。それを口に入れて毒で亡くなった。と言う訳です」
「で、その搬入経路は分かったか」
「いえ、その殿下はメイドなどとこっそりと逢引きしている場合が多く、護衛も無しに町へと出て行く事もありましたので……ただ、昨年の冬に一人だけメイドが退職しております。退職の理由としましては『実家の手伝いをするため』とありましたが、その村へ冒険者ギルドへ調査依頼をしたところ、該当する女性はいなかった、そういう年代の女性すらいなかったそうです」
「そのメイドの勤続年数や勤務態度はどうだ」
これは宰相として気になるのか、父が身を乗り出して来た。
「地方の学校を卒業し、王都の学校へと入学。それと同時に12歳でメイド見習いとして王城で働いています。辞めるまで約9年間、勤務態度はごく普通で真面目。ただ、同僚に聞くと辞める前から良い彼氏がいたような素振りがあったようです」
「で、その男は?」
「何も詳しい事は言っていなかったらしく、どこの誰だか不明です」
「では犯人らしき者は分からないと言う事か……」
宰相である父はポツリと言い、王も同時に視線を下へと向ける。
だが、俺の次の言葉で二人は頭を上げた。
「一つ良い事があります。これは人為的殺人の可能性が強く、レオナルト殿下の魔眼の影響ではないと思われる事です」
「そうだな」
「まあそうなるな」
「はい、最近のレオナルト殿下は離宮の1階で走り回る遊びを覚え、毎日元気に走っているそうですよ」
「遊んでいるのか、子供の成長は早いな」
「いえ、遊びと言うよりもひたすら走っているだけらしく、たまに砂遊びをしているらしいです」
「そうか、走る事が楽しいんだな」
「はい、マクダレーナ様はそうおっしゃられています。私も何度かお目にかかっていますが、何の影響もありませんし、1歳としてはかなり落ち着いていると言うか、利発そうと言いますか、そんな感じです」
「そんな感じとは何だ、ハッキリ申せ」
「……いや、あの、大人ぶっていると言いますか、発言が子供じみていないと言いますか……」
「子供に見えないと?」
「はあ、そんな感じです。マリア殿下が居る時は大人しく相手をしているようですが、王妃様の眼を離れると、とても1歳とは……」
「元々王族は成長が早かったしな、もしかすると魔法が使えるのかもしれないな。魔法が使えると知識を求める事が強くなるからな。何か欲しい者があれば全て用意するのだ。それがこの儂からのせめてのお詫びなのだからな」
報告は終わり、執務室を後にした。
すると、待っていたかのように第二、第三の宰相であるシュトラウスとシュトルムが廊下で待っていた。
「エーリヒ、どんな報告だ!」
「どんな情報だ!」
「私から報告出来る情報はありません。陛下からは決して他の者には漏らすなと言われているので。聞きたいのなら陛下へ聞かれて下さい」
「ぐぬぬ、この見習い風情が」
「次はお前が狙われるかもしれないのだぞ」
「好きに言って下さい。もし私が狙われる事があれば、その時は貴方が反逆罪として疑われるようになるのですから。分かっていますよね?」
「おのれは……」
「好き放題しやがって……」
もしこの二人が犯人、もしくは犯人の仲間だとしたら、情報は幾らでも入ってくるので、やりやすいだろう。俺が敵対する組織だとしたら狙うのは宰相のこの二人だからな。そんな単純なものじゃない可能性もあるけどな。
結果、この脅しが効いたのか、俺は狙われる事が無く過ごせた。
単純に勘違いであればいいのだが、城の中に何者かが蔓延っているのだろうとは思っていた。
◇レオナルト視点◇
ふーん、また兄弟の誰かが死んだんだ。
今度は毒薬なんだ。
「ねえエーリッヒ、解毒剤くらいは準備してるんでしょ」
マミーへ報告している何でも屋のエーリッヒに割って話しをした。
「もちろんです。この辺りにある毒薬の解毒剤は常に準備しているんだよ。食事には毒を入れやすいから抜かりはないさ」
「じゃあ食器や飲み物まで監視しているんだ」
「うっ……そこまではちょっと……分からないな」
「やるなら徹底的にしないと。お皿やカトラリーに毒を塗れば人は殺せるんだよ。もちろん普段から飲んでいる水や、お酒の瓶も監視、もしくは鍵の掛けられた保管庫、もしくは部屋に保管。あと、ランダムで無作為に選んだ人へ毒見をさせるのも忘れずにね」
「え?……あ……ちょっとまって、メモするから」
「メモするならついでに初心者向きの魔法書を持ってきて貰ってもいい?」
「はい、どのような魔法がいいですか?」
「そうねぇ。まずは四元素魔法だね。できれば他の魔法が書かれているような物も欲しいかなぁ」
「四元素と他の魔法も、と……」
この国では戦争が長くなかったせいか、紙の製造や学校の開設での識字率が高かった。
もちろん学校へ行けれない貧民層も居るのだろうが、識字率が高いせいでこうした本が発展しているようだ。
元々、本を読むのが好きだった俺には正に天国。
それにチマチマと閉じ込められた環境で魔法を使うのは限界があった。
マミーから聞いた話と子供用の冒険活劇本では、この世界にある魔法は基本的に四つ。
四元素魔法と呼ばれる火、水、風、土の四つだ。
おおよそ人口の2~3%。この四元素魔法とは別に身体強化も魔法の内に入り、こちらだけでは人口の10~25%と多かった。
通常魔法使いと呼ばれる者は前者の四元素を扱う方だと言う。そしてこの魔法と身体強化は同じ人に発現するのはマレ。ほぼいないらしい。
ここで魔法の事を説明するが、魔法を得るには先天性か後天性に分かれる。
俺の場合は生まれる時に嵐だったせいか、それにちなんだ魔法が使える。
だが、この魔法にはレベルと言う段階が存在する。
もちろん俺はレベル1からのスタートだった。そして色々と使ってみて理解したのだが、意味も無く窓の外へ風魔法を使っても、経験値と言うのか、レベルがアップする様子が無かった。だが、床の埃を飛ばしたり、身体に風を送ったりするような意味のある事をするとレベルが上がる事が分かった。
そしてこのレベルアップは本人にだけが分かるようになのか、頭の中に次の魔法が思い浮かぶようになるのだ。
詠唱が必要かどうかも分からない。風よ出ろと思いながら「えい」と言っていたら出ていたので、多分ないんだろう。要はイメージなのか?
使う度に体内から何かが減っていく感覚があるので、MPと言うべき物があるのだろうが、何度もステータス、ステータスオープンなどと言ってみたが現れなかった。
やはりゲームが基本のラノベとは違うようだ。
何となく体内のMP残量を気にしながら意味のある事に魔法を使う。
これで初めから使っていた風魔法は、1歳と少し経った時にはレベル3の風弾が使えるようになっていた。ここまでくるのに早いかどうかは比べる人がいない為に分からないが、魔素と言うべき体内の魔力を大量に使えば、エアーボールと言うべき風弾の飛距離はかなり遠くまで飛ぶ事は分かっていた。
ついでに言うと水魔法はレベル2の水流までだ。塔の下にある土遊びをする時の飲み水と手足を洗う時のみなので、レベルの上昇が遅いのは仕方がないか。
そうそう、呪いとか、不吉だとか言われているこの左目の魔眼なのだが、使い方が分かった。
基本的に魔眼と言うのは魔法の一種だ。何故目が赤くなるのかは不明だが、命を刈り取る事が出来るのは将来的に間違いない。この魔法だけ先の進化の道筋が分かるのだ。
最強にして最恐の魔法。四元素の魔法がダイア神様より授かったと言われているらしいが、この魔眼も神か悪魔か、魔神から授かったのだろうと俺は思っている。
今はレベル2だが、生き物の気配が360度分かり、弱ったものは瀕死に出来るような命への干渉が出来るようになった。
この塔の1階で足腰を鍛えているのだが、通気用の小さい穴からネズミが入りこむのだ。
特に寒い冬は寝床を中に作るので、走り回り、風弾で弾き飛ばし、弱らせたところで魔眼で命を狩る。何十、何百と言うネズミを退治してやっとレベル2は効率が悪いのだろうが、この塔に幽閉されているからにはここで出来る事をしていかないといけない。
いつの日か来るであろう魔王に備える為に……
多分…………
次は21時投稿です。




