第17話 死神と悪魔
◆◆◆第17話 死神と悪魔◆◆◆
一人の兵士は寝返った事を今さら後悔していた。
なぜなら黒い甲冑を着た味方になる兵士が次々に倒れているのだ。
「誰だよ。こんな強い騎士は残ってないはずだぞ……」
第三宰相の作戦は途中までは完璧だった。
徐々に寝返る味方を増やし、状況を見て一気に反乱を起こす。反乱の日には王子達を色んな罪状を読み上げ、少しの間ですからと全員別々の牢屋へと入れる。
そして宰相が呼んだ強力な味方により王を討伐し、その首を掲げて反抗する残りの兵を抑える。
だが、この惨劇は想定されていなかった。
二階の守備隊と聞いていたが、そもそも二階に登ってくる敵性人物はいない。そのはずだった。
だが、この惨劇は何だ。
さっきから派手な魔法音を響かせながら仲間を、寝返った仲間を殲滅しているのは相手側だった。
鋭利な魔法で斬られ、土魔法なのだろう、貫通した土くれが辺りに散乱している。
また、首が折られて苦悶の表情で事切れている兵士もいる。
「手練れの冒険者パーティーか」
仲間の死体を辿っていくと罵声や剣戟のような派手な音や硬質な音が聞こえて来た。
と言う事はこのまま進めば敵の背後を突ける。
この兵士はそう思っていた。
だが、兵士は魔法を甘く侮っていた。
炎の魔法とは違う、皮膚が内部から焦げたような跡がある事を。
「おい」
ビクンッ!
背後を見ると黒い甲冑の仲間だった。
「驚かすなよ。このままいけば敵の背後を付けれる。二人同時なら……行くぞ」
突然現れた仲間に気分を良くし、先を急いだ。
角を曲がると、敵はすぐ近くで味方と戦っていた。
黒いローブに金髪の髪。その髪には黒いベルト?が掛かっている。黒いズボンは汚れているが、一般人には買えない高級品だと言う事も分かった。
貴族か、それともランクの高い冒険者か。
だが、どうでもいい。
もうすぐこいつは死ぬのだから。
「おい、せーのでいくぞ、せーの――」
そこまで来てハッキリ分かった。
いきなり視界が真っ暗になっていた。
窓があったにも関わらず。まだ2時間程度は太陽が照らしているはずなのに、目の前は濃密で手が握れそうな闇だった。
そしてその金髪が俺らに振り返った。
「邪魔だ、失せろ」
「だ、誰だこの化け物が!」
自分が言葉を発した時、薄ら寒い雰囲気の闇が隣を瞬時に通り過ぎた。
どさっ
隣を見ると仲間と思っていた男はスイッチが切れたかのようにそのまま崩れ落ちていた。
◇兵士:視点◇
気が付けば、男の顔は俺らに振り返っており、手には黒い革を握りしめていた。
ああ、あの後頭部に掛かっていたベルトはこの眼帯だったんだな。この赤い片目を隠す為の……アレ?赤い目?金髪、見た事も無い顔、だが……面影が……皇后陛下のような綺麗な目で、小さく綺麗な鼻と口。どこかで……どこだ。
あいつか。魔眼だ!
離宮に幽閉された卑しき厄災の原因!
こいつが生まれてこなければ!こいつ……が……
「…………魔眼の……王子、か!」
「死ね」
奴が、目を赤く光らせた時、黒い影が奴の背後から動き出した。
音も無く、空気感もなく、黒い空間に取り残されたような感覚が全身を包む。
黒いフードを、ローブを目深にかぶった男が黒光りする鎌を!デスサイズを構えて!
「ひっ!し、しにが……みっ!」
ドクン!
音も無くデスサイズが振り下ろされ、手で遮ったはずなのに、その鎌は手をすり抜け、骸骨の笑みを俺に見せながら、鎌を振り切った。
俺の魂を強引に刈り取りながら…………
地面に顎が開き、じ、地獄の……いや、冥界、冥府の入り口が開き、俺を……………………
◇レオナルト:視点◇
「うわああああ!死神だ!魔眼が死神を連れてきたぞおおおおおお!」
一斉に隠れていた兵士がクモの子を散らすように逃げていく。
「死神ってなんだよ……死神なのか?」
まだ黒い靄にしか見えないのだが、あの中に死神でもいるのか?まあいいが、流石に少し疲れてきた。さっきかあ
指を咥えて水分を補給しているが、朝飯から何も胃袋に入れていない。
時間はもうそろそろ夕方のはずだ。
だが、この魔眼を使用すると、体力よりも精神的に疲れるのは仕様か?
何かが蝕むと言うか、浸透していると言うか……馴染んでいる?
裏切った兵士を背後から魔眼で狙いすましながら一人一人片付ける。
まあ数人に逃げられたが、下にいる味方が駆除してくれるだろう。
すると、俺がスキルを使った訳でもないのに、辺りが漆黒に変わった。
その瞬間、戦場の音が消え、時間が停止したかのように無音になる。
正面には黒いローブの男が、ターナーがいた。
「よう。張り切ってるじゃねえか死神さんよ。もう、後戻りは出来ねえぞ。後は頑張るだけだ」
「おいターナー!アレは死神なのか?!俺は死神を……消えやがった」
スーっと。ヤカンの蒸気が消えるように、身体全身が煙のように消えた。
即死魔法ではないと?
……イヤイヤ、そもそも『デス』って言うのは死ねと言う意味か?
発動の時に、『死ね』と言ってる気がするし。
黒い霧が当たった途端、苦しみながら死ぬと言うよりも、命が一瞬で抜けるような。
あのの魔法よりも綺麗な死体で良いけど……なんだろう。
これでいいのか?死神って……
◇反乱軍◇
恐怖が伝わるのはあっと言う間だ。
戦いの3割は精神が占めていると言ってもいい。その肝心な戦いを有利に運ぶ精神が崩れしだした。
恐怖
魔眼
死
そして死神が出た、と。
せっかく、給金と地位を約束されて寝返ったはずなのに、今はあの魔眼持ちの殿下の参戦が少々怖かった。
◇ジークフリート:視点◇
「何だ?この禍々しい魔力は……けど……それほど嫌じゃない?……ハインツか?いや、それとも、まさかレオナルトか!?合流しなければ!」
俺は目に入る物全てを使い、レオナルトと合流するべく破壊していた地下から一階へと登り出した。
◇ハインリヒ:視点◇
「来たか!レオ」
濃密な黒い魔力の流れを感じ。ハインリヒは身震いしていた。
「これぞ魔眼の力。信じていたぞ!合流しなきゃ!」
ハインツは1階の敵兵を纏めて真空刃で切り刻みながら力を集結しようと進みだした。
◇城の最上部では……◇
「失礼します!」
元々は物見櫓のように高いところから周りの状況を把握・観察する小部屋には、アスモデウスと呼ばれた男が、三面顔の悪魔が椅子に座っていた。
「報告します!魔眼持ちと見られる男が急速に力を付けております。2階の守備隊の全滅は免れません」
人間・牛・羊の三つの顔を持つ男も異形だが、報告をしている男も黒い羽を背中から生やした超絶イケメンの男だった。
「まずいねえ。作戦を前倒しする。お前らでアレを引っ張ってこい」
「はっ」
それだけ言うとイケメンの男は窓から飛び出して空を飛んでいった。




