闇の中で時は止まって-1
以上で僕の物語の大部分は語り終えられた。後は色あせた蛇足に過ぎない。
その日の夕食(とびきり豪華で、ケーキまでついていた)のときも次の朝も、僕のその日の有様、つまりは素っ裸で薄汚れた体で帰ったことについて、僕は何も言わなかった。本当に一切、何をどう聞かれても一言も答えなかった。
いくらなだめすかすような尋ねられ方だったとしても、僕は何も答えなかった。答えてもどうにもならないし、そもそもどうにかするということについて、僕はすっかりあきらめていた。すがすがしいほどに。
全ては終わったんだという思いが胸を満たしていて、どんな言葉をどうかけられても、僕の心に何の動揺も起こさなかった。そんな僕の前にうろたえる両親や祖父を尻目に、僕は何事もなかったかのように用意された夕食を平らげ(ケーキも半ホール近く食べて、食後に自分で入れた紅茶を飲みさえした)、風呂に入り、ゲームを部屋でたっぷり楽しんだ後、ベッドに入って部屋の明かりを消した。
もう夜中に出入りする同居相手はいないから、しっかりと窓には鍵を閉めて。意識はあっという間に眠りの湖底に沈んだ。
翌日と翌々日は学校は休みだったけれど、ずっと家で過ごした。日曜日の約束も無視して。
全く何事もなかったかのように僕は振るまい、ほとんどの時間を自分の部屋でテレビを見たりゲームをしたりしてつぶし、家族とはやっぱり一つの会話も交わさなかった。というか、僕が何を話しかけられても答えなかった。とうとう夕食の席では、『いい加減にしなさい』と怒られてしまったけれど、それでも僕は、そんな控えめな怒声をあげた父を一瞥しただけで、何も言わなかった。
父は延々と僕のそれまでの生活態度について苦言を呈した末に我慢の限界に達していたらしい。僕の無視という態度でそれがぶち切れてしまったみたいで、僕は平手打ちを頬に食らい、椅子から転げ落ちた。
初めての経験だったけれど、痛みの他に何も感じなかった。それどころか、なんだかその痛みがひどく懐かしい感じがして、笑いすらしてしまいそうだった。僕が平然と起き上がって椅子に座り直し、夕食を続けると、父はあきれかえったらしく、もう何も言わなくなったし、何もしなかった。
月曜日の学校ではどうだったか。簡単なことで、僕はますます有名人になっていた。しかしそれまでとは少し違う形で、僕を揶揄するような声はほとんど聞こえなくなった。みんながそれを、内緒話にしようとしていたからだ。
誰も僕には近づかなくなった。昼休みに担任の教師に呼び出され、話をさせられたけれど、家と同じように、僕は何も答えなかった。内心、せっかくの休み時間を無駄にさせられているなんてことを思いながら。そっちの方が、僕にとってはずっと重要なことだったのだろう。
学校でもいつも通りに過ごしたかと言えば、大部分はそうだ。もともと僕はいつも一人でいたし、こんなことになった僕にあえて近づこうとするような奇特な人はいるわけがない。だから休み時間もいつも通り自分の席で本を読んでいた。いつも通りにしていたというわけだ。
けれど、昼休みに図書室に行くのはやめた。何日か前からもうそういうことは控えていたけれど、はっきり意識して、行かないことに決めた。帰る時間になったら、一目散に走って帰るというのは、それまでとは違っていた。誰にも追いつかれないように、間違っても誰かと話しながら帰ったりしないように。
僕についての噂が僕だけにとどまっているというのは、漏れ聞こえてくる話からなんとなく分かった。いくら尾ひれがついても、誰かが、特にただ一人、その可能性があると思える人が巻き添えになったりはしていなかった。
だから、僕は周りで何をささやかれていようが、どうでもよかった。絶望的なほどの孤独が、僕の伴侶になった。僕はそんな状態を甘んじて、というか、積極的に受け入れた。
一度、変な気を起こして、あの場所を見に行ったことがある。不思議なことに、そこには何の異常もなかった。
あの日僕が目にしたはずの、直面したはずの戦い(笑)の痕跡なんて、どこにも見つけられなかった。僕が最後の『必殺技』で開けたはずのあの大穴はどこに行ったのだろう?
やがて僕が学校で噂に上ることはなくなっていき、家では少しずつ話をするようになって僕と家族の関係は元通りになっていた。しこりというか、露わになっている地雷には、誰もがその意識を向けざるを得なかったようだけれど、僕はそれを無視して、まるで何事もなかったかのように振る舞った。
そうやってやがて小学校を卒業して、中学校、高校と上がっていった。その間、友人は一人もできなかった。自分自身がそういうことの当事者になってみると、それがたいして異常なことではなく思えるのだけれど、世間一般としてはどうなのだろうか。まあ別にどうでもいいことだ。そうだよ、本当に。




