(9)別れの瞬間に行き着くとき(その日)-10
説明させていただきたい。多少の(多少で済むのかどうか)冗漫さと、全ては僕の想像に過ぎないせいで避けられない不正確さは覚悟の上で。
その日、僕は約束していた時間よりだいぶ早めに、辺根さんとの待ち合わせ場所に着こうとしていた。あまりにもその時間が待ち遠しかったからだ。しかしその途中でウーティスに呼び止められ、戦いの場へと引っ張り込まれたのは長々と述べてきた通り。
どうやらウーティスが待ち合わせ場所に向かう僕の前に姿を現したとき、辺根さんはもう近くまで来ていたらしい。理由は分からない。僕が抱いていたのと同じような思いのせいで、と考えるのは我田引水というものだろうか。
ともかく、彼女はもう待ち合わせ場所の近くまで来ていて、おそらくはそこに通じる道路か、少なくともあの踏切のところあたりにはもういたらしい。だから、彼女は見ていたのだ。僕がウーティスの後に続いて走っている姿を、あるいは、僕がウーティスと話している姿を、あるいは、ウーティスが僕の居場所に向かっているところを。
そして彼女は、僕たちを追いかけた。声をかけることはせずに。しかしそんな彼女でも追いかけなければならないと思うようなことが、僕たちの様子にはあったということだ。
確かに、僕だってそんな立場に置かれたら、同じことをしていたと思う。見慣れない生き物が、どうやら人間と会話をしているらしく、その上それが人間と連れだって駆けていくのだから(ぜひ想像してみてもらいたい、僕がそうしたように)。
そしてあの場所に僕たちがたどり着いたのにしばらく遅れて、彼女は同じ場所に来たようだ。彼女は痕跡を追って山に入り、僕たちを追いかけた。
その間に僕はウーティスと、はぐれたと思っていた。しかし違った。ウーティスは、わざと僕の前から姿を消していたのだ。そして、彼女の前に現れた。
細かいやりとりとか、詳しい様子は分かるわけがない。誰の証言も、手がかりも、痕跡も何もないのだから。それでも想像できるのはただ一つ。
おそらくウーティスは、これまで『ロートス』の力をため込んできたその角で、彼女を刺し貫いたのだろう(別に何の隠喩でもない)。それによって彼女はあの尋常ではない力を持たされ、怪物へと変貌したのだ。僕が聞いたあの叫び声は、そのときの彼女の悲鳴だったに違いないと思う。
こんな風に考えるしかない。あいつはこうして、僕と彼女と、ついでにポリフェムスを陥れた。
考えてみれば、あいつは辺根さんのことを気にしていた。僕と彼女がどういう関係にあるのか、近くで見ていたあいつは、きっとよく分かっていたのだろう。だから全て計算ずくでこの日、あの場面で僕の前に現れたのだ。
そうやって、僕と、ポリフェムスが置かれているこの状況を作り出したというわけだ。




