(7)不安の影(二日前)-2
歩いていく先は、もちろん僕たちの住んでいる団地に向かう道からは外れている。いくつか古くさいマンションが並んでいて、近くにはスイミングスクールがある。マンションの向かいには、ラウンジとかいう、その頃の僕にはよく分からなかった(今もよく分からないけれど)店があった。
僕たちの帰りの時間には開店していないらしくて、暗く、人気がなかった。だからそこで、僕たちは待ち合わせていた。もちろんここで言う僕たちとは、僕とウーティスのことではない。しばらく建物の影で待っていると、辺根さんがひょっこり姿を見せた。
僕は結局、彼女と会わないようにしなければならないという思い、義務感、矜持を持ち続けることができなかった。僕の浅ましさのために、と付け加えておく。
だからそのために、学校では話さず、接したりもせず、代わりにこうして帰り道で会うことにした。用心深く、わざわざ帰り道から外れたところで待ち合わせて。
相変わらず僕は、学校では疎外されていた。この日も、誰とも話さなかった。もちろん辺根さんとも。教師はそういう様子に気づかないものらしい。
僕の気持ちとか取り巻いている状況に全く気づかず、またしても帰りの会であの話が蒸し返され、暗くなる前に帰るようにとか、決まり文句が繰り返された。その話がされるたびに僕にクラス中の視線が突き刺さっているのを僕は感じた。僕はもうそういうことにも慣れてしまっていた。この後にあるはずの、辺根さんとの密会(魅惑的な響き)を楽しみにするくらいに。
彼女は、僕の歩いて行く姿を校門あたりで見たと言った。すぐ追いつけそうだったから走って追いかけようとしちゃったよ、と、笑って言った。
僕は内心青ざめていた。じゃあ、その間、僕が帰り道を歩いている間のことも見ていたのか、と。ウーティスは平然としていた。それは本当に正しい態度だったのかと、今更思った。
彼女もまた平然としていた。平然と微笑んでいた。平然と帰り道を歩いていた。




