(2)ある朝-1
夏休みが終わって少し経ち、僕の十二歳の誕生日まで一ヶ月を切った頃だった。
僕の朝は、同年代の他の人たちとは様子が違う部分もあったのだろうと思う。それをいちいち数え上げる気にはならないから、ただその日を思い返してみよう。
僕はいつも、目覚まし時計が鳴る前に目を覚ましていた。だからその日も、六時前には起きて、部屋を出て一階に降りた。
ふすまの閉まっている和室(祖父の部屋)の前を横切って、キッチンに向かう。コーンフレークだったかシリアルだったか、どちらでも同じようなものだけれど、それに牛乳をかけて食べる(だけ)というのが、僕の決まった朝食のメニューだった。朝のニュース番組をBGMにして。
僕の年頃の子供向けの情報番組からは、もう卒業していた。といって、別にニュース番組の中身にたいした興味があったわけでもない。政治だとかスポーツだとか、僕にとってはどうでもいい話ばかりだった。
一番興味をそそられたのは戦場だとかテロの現場だとか、そういったものの映像に映り込む銃が何だろうかということで、AKとかM4とかMP5とか、テレビゲームやインターネットで覚えた知識が効果を発揮すると、自分がわくわくとしているのがはっきりと分かった。年頃に関係なく、ファルス的なものに興味を持っていたということだろうか――どこかの藪医者の言うように。
ともかく、そうやって朝食を食べ終わると、使い終わった皿をさっさと洗ってテレビを消し、自分の部屋に戻る。まだ六時半にもなっていなくて、学校に行くまでにはたっぷりと時間がある。
祖父の部屋からは、ふすま越しにテレビの音がかすかに聞こえた。僕の部屋の隣の両親の寝室からは、ほとんど何の音もしない。まだそういう時間だったわけだ。
僕はそのことの優越感に浸りながら、ベッドに潜り込んだ。ベッドの枕の横には、漫画となんとか入門とかなんとかへの招待とかいったタイトルの文庫本と携帯型のゲーム機が置かれている。僕が置いて寝たからだ。ベッドに入ったのは、眠るためではもちろんなくて、本当の僕だけの空間で楽しみを得るためだった。
楽しみと言ったって、何かを分かった気になるために(今の僕にとってすらも)ちんぷんかんぷんな本を読んだり、ゲーム機で遊んだり、何かの物語の断片を書いたりすることだった。その頃一番熱中していたのが三つ目のことで、その日もそうしていたと思う。
書くのはたいてい学校でもらったプリントの裏だった。それが小テストだろうが連絡事項だろうが、その裏に、物語が僕の手で書き込まれていった――今というか後になって振り返ってみれば、僕以外の誰にも見せられないほどに幼稚で痛々しい、物語のなりそこないでしかなかったにしても。
その内容についていちいち思い出すだけで顔から火が出そうだから、あまり詳しくここで言うことはしない。ただ言えるのは、僕にとってはそういう時間が大切で、少なくとも僕が天才だなんてとても言えないほどに年相応に幼稚で、少しは不相応なほどに想像力を形にするための努力をしていたということくらいだろう。




