(4)ヒーローの日常-6
――何突っ立ってんの?
光を吸収し終えて、一度ぶるっと身震いしたウーティスが、僕を見てそう言った。そしてぴょんとひと飛びすると、僕が荷物を放り捨てた方に向かって駆け出していった。
――早く着替えて帰らないと、まずいんじゃないの?
お節介なウーティスのそんな言葉は、言われなくてもわかりきっていた言葉だったから、耳から入ってどこかに流れていった。僕にとっては、もっと別の問題があった。
――あ、あのさぁ。
ウーティスが待ち構える方に向かってのそのそ歩きながら、僕は情けない調子で、必死にそうなるのを隠そうとしていたから余計に、なおのこと情けなく、僕はもっと重要な問題について声を発した。
――これ、どうやったら脱げるの?
僕は左手でマスクを、右手でマントを引っ張りながら、そう言った。ウーティスは、そんな僕の、これ以上ないほど間抜けな様子を、その大きな目をぱちくりとさせながら見つめていた。そして上から下まで一通り眺めると、ぷっと一つ吹き出して、
――ああ、ごめん、そうだったね。教えてなかったね。
笑いながらこう言った。こう言いやがったと表現したくなるような調子だった。
そして僕に、深呼吸でもして落ち着いて、何も着ていないように強くイメージしろと伝えた。僕は言われたとおりにやってみた。すると、手足や体を覆っていた衣装がゆっくりと光になって溶けていき、やがてすぐに消えてなくなった。
僕はなんとなく、そんな雰囲気だと感じたからか目を閉じていたけれど、体に当たる風の感触で、それが分かった。
廃工場の隅で素っ裸に戻った僕は、脱ぎ捨てた服や靴のほこりを払い、汚れきったそれを大急ぎで身に着けた。使わずに済んだプールバッグの重みが、ひどく腕に食い込むような気がした。
そんなことを考えながら、入るためにガラスを割った窓に向かい、一応外の様子を見回してから、僕は外に飛び出した。そのとき、まだ窓枠に残っていたガラスの破片が二の腕をひっかき、浅いけれど、かなり大きな、隠すのに難儀しそうな傷を作ってしまった。
そんな傷をさすりながら、ウーティスには、見つからないようにと念を押して家に帰ってくるように言い含め、僕は家に向かった。
これが僕にとっての二番目の戦いで、一番うまくいった戦いでもあった。攻撃をされることもなく、必殺技が見事命中し、服が破り散らされることもなかった。
こんなにあっけなく、そしてスムーズに事が運んだのは、ほとんどこのときだけだった。用心深く持ってきたプールバッグは幸いにも活躍の場がなかったし、実にうまいところに標的がいてくれたし、あっさりと片がついた。
しかしこの他の戦いのことは、思い出したくもないし、筆舌に尽くしがたいというか、ひどい目に遭ってばかりだった。上下の服が一セット無くなるだけで、僕にはどんな言い訳をすればいいのかが分からなかった。
僕が何をしているのか、秘密にしておくのがなんて大変なんだろうと思い知らされたことばかりだったのだ。何しろ、腕に作ってしまったあの傷を見て祖父が騒ぎ立てたせいで、それにつられた父と母も含めた三人に向かって、僕は放課後の大冒険の作り話をするハメになったのだから。




