(4)ヒーローの日常-3
僕が学校にいる間にも、そうしていた――図々しいことに。そのたびに僕はどきどきさせられながら周りの目を避けて、どうにかしてウーティスと向き合える場所(そういう場所を分かっていてそいつは現れるのだけれど)に大急ぎで行き、収穫の報告を聞かされたものだった。
『今すぐ来てよ』とか言われたのも二度三度ではなかったけれど、そんなことができるわけがなく(何しろ、『義務』教育中の身だったのだから。それから逃げたいとはいつも思っていたけれど、現実的にできるはずも、できるとも、しようとも思わなかった。どれだけ面倒な事態が起こるか、火を見るよりも明らかと言うべきだろう。ウーティスはそういうことを、結局最後まで理解しなかった)、ウーティスに、僕が『義務』から放たれるまで待つようになだめすかし、そいつのやれやれといった態度に内心激怒し、なぜ僕がこんな立場に置かされているのかということに憤慨し、同時に、『ウーティスは自分の役割を果たしているだけなんだから』という、そいつの立場を理解してやろうという気持ちを多少抱きながら、学校の隅っこで汗びっしょりになっていたものだった。懐かしくもないし、不愉快な後味しか残していない記憶。
その日はそういうことがなかったけれど、そんなのはたまたまに過ぎなかった。学校でウーティスの姿を見させられる日の方が、遙かに多かったのだから。
そういう状態になってからも、僕は習慣をできるだけ変えなかった。朝は遅めに出て鹿屋さんに会い、学校では昼休みに図書室で辺根さんと同じテーブルで本を広げる、というように。
しかし、そのことにはもはや全く集中できなくなっていた。いつあいつが現れるかと思うと、怖くてたまらなかった。肝を冷やすとかそんなレベルの話ではなくて、気が気でなかった。退屈な授業はその時間が倍ぐらいに長く感じられ、授業中に頓狂な声を上げるハメになることも、二度や三度ではなかった。
いちいち詳しく語る必要もないだろうから、ここではさっさとその地点まで時間を飛ばすことにしよう。朝の次にウーティスの姿を見たのは、この日は帰り道だった。
習慣を変えなかったと言ったけれど、実際には変えざるを得なかったこともあった。授業が終わると、僕はもう何を待つこともなく、さっさと学校を出て帰りを急ぐようになっていた。おかげで、帰り道で辺根さんと会うことがほとんどなくなった。不愉快だったけれど、どうしようもなかった。
帰り道では、決まってウーティスがどこかで待ち構えているものだから、僕はいつも何か警戒しながら帰り道を歩くようになった。おかげでこの日は、僕の方が先にウーティスを見つけた。帰り道に通る、公園にある茂みの中にいたそいつの姿を。
――待ってたよ、シズカ。
僕は待ってない、とは答えなかった。ただ無言でウーティスを見て、というかにらみつけた。そして、はっと気づいて、慌てて周囲を見回した。
――大丈夫だよ、誰も見てないって。
僕とは対照的に、ウーティスの方は落ち着き払っていた。こういう状況ではいつもそうだった。
僕の気持ちも知らないで、あるいは、知っていて。たぶん後者だったのだろう。ウーティスはそういうやつだと、この頃、まだ出会ってから数日経ったくらいのこの日には、もう理解していた。いくら鈍くても、そう思い知らされていた。
ウーティスは何も言えない僕を無視して、茂みから飛び出し、言葉を投げつけた。
――ロートスを見つけたんだ。君の力がいるかもしれない。ついてきて!
――い、いや待ってよ! 人に見られたらどうするんだよ!
――誰も見てやしないよ。見てても、猫か何かだって思ってくれるさ。
――ああ、ちょっと!
結局は僕に有無を言わせる暇を与えてくれないまま、ウーティスは走り出した。僕はそれを追いかけ、帰り道から思い切り外れた方に向かって駆け出すことになった。




