↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼きヒーローの肖像 ―A portrait of the hero as a young boy―  作者: 入江晶
第二部 ヒーローと少年の二重露出
PR
22/93

(2)日常の裏側で-4

 僕はぞっとして、そして次に、自分がどんな格好をしていたのかを思い返してみた。間抜けにもほどがあると思え、そして、あの怪物と同じ力を持ってしまったのかと思い、震えが起きた。ウーティスはそんな僕に全くかまわず、しゃべり続けた。


 ――僕はロートスを集めることができて、それを使って、『門』を開くことができる。それに、君のように、選ばれた人に力を与えることも。

 そういう人は、そういう運命にあるんだ。ポリフェムスという悪魔を封じるヒーローになる、ね。そのために、力を形にするのも僕のできること……って言うか、使命とか役割って言った方がいいかな。

 君が名乗った、アンティノスというのは、そのヒーローとしての名前なのさ。本来なら、ポリフェムスを倒すのがそのヒーローの役目ってわけなんだけど、『門』を開けるためにロートスを集めなきゃいけないし、あんな化け物が出てきてしまったからね。ロートスを集めるためにあれをぶっ倒すのも、君の役目になりそうだよ。

 ――あの格好は?

 ――さあ。前からあんな形だっただけのことだけど。

 ――前、って、僕よりも前に、その……君の言う、選ばれた人がいたってこと?

 ――そうだよ。それがどうかした?

 ――どうかするに決まってるだろ!

 ――どうして?

 ――どうしてって……


 ウーティスは、本当に、僕の態度の意味が分からないという様子で、目をぱちくりとさせた。


 ――あれの何が不満なんだい? 痛みも消してくれるし、まだ気づいてないのかもしれないけど空だって飛べるんだよ。それに、あの必殺技だって! 君を、ヒーローにしてくれる力なんだ。何か問題がある?

 ――いや、そうじゃなくて、その……その、僕の『前』の人は、どうなったんだよ。その人も、ロートスとかいう、力に選ばれたんでしょ?

 ――それはそうなんだけど、こっちの世界の人のことはよく分からないからね。ロートスの方が、その人を嫌っちゃったみたいで。変身できなくなっちゃってね。まあ、気まぐれってやつだと思うけれどね。


 何を言っても無駄だと、僕は思った。ウーティスの中にある考えは(それが言葉の通りであるかどうかも分からないにせよ)あまりにも確固としていて、僕の言葉では変えようがないに違いなかったからだ。


 ――その人が、あの……服っていうか、格好にしたわけ?

 ――たぶんね。

 ――どうにかできないの?

 ――どうにかって?

 ――もっと、こう……形とかさ。

 ――無理だろうね。もう、こっちの世界で決まった形に定着してしまったから。


 こんな風にして、僕の負わされた戦いに、意味が与えられていった。


 ポリフェムスという『悪者』、ロートスとかいう『力』、化け物、役目……改めて一つ一つ数えてみると、その馬鹿らしさには唖然とする以外にない。しかしそれが、まざまざと見せつけられた現実の全てを説明していたのだから、僕は信じて、真に受けることにしたのだった。


 ただし一つだけ注文をつけ、『変身』した後の格好だけはどうにかしてくれと頼み込んだ結果、股を隠すパレオと顔を隠すマスクが追加された。この要求というか抵抗もまた、あまりにも馬鹿馬鹿しい話だ。しかし僕にとっては切実な交換条件だった。


 その程度で黙らせられる程度には、僕にとっても、『ヒーロー』になることは、気分を悪くさせるようなことではなかったのかもしれない。それだけ、その頃の僕は(今もだろうけれど)馬鹿だったのだろう。


 つまり僕の役割は三つ。

 アンティノスとかいう名前のもとに、ロートスとかいうものを集めること、その力を持った化け物を倒すこと、ポリフェムスとかいう悪者を捕まえること。


 どれも、あまりにも気が重い仕事ではあったけれど、それが『ヒーロー』としての役割なら、立ち向かわなければならないに違いなかった。そう思うくらいにも、僕は馬鹿で、幼稚だったわけだ。


 同時に、自分が抱え込んでしまった困難が、全く他の誰とも共有などできるはずがない秘密なのだと、僕は思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。