(2)日常の裏側で-2
――こんなのでいいの?
――うん、大丈夫。
僕が持ってきた菓子(チョコレートの塗られたビスケット)を前にして、ウーティスは目を輝かせた。そしてその小さな手で、器用に、妙に慣れた手つきで開けて、ほおばり始めた。
異様な光景だった。画としてはほのぼのとしているように見えるべきものなのかもしれなかったけれど、実際に立ち会って見ていると、ひたすらに異様で、不可思議だった。それは、カップを抱きかかえるようにして牛乳を飲んでいる間も同じだった。
――何だっていいんだけどね。でもやっぱり、こっちの世界のものに合わせた方が、いろいろと都合がいいから。
――『こっち』?
――そう、今ここにいる、この世界のことさ。
――じゃあ、『こっち』じゃない世界があるってこと?
――そういうことになるね。僕はそこから来たんだ。
――何のために? どうやって? いや、それ以前に……
――順番に話すよ。君には、全部知っておいてもらわないといけないからね。
――どうして?
――君が選ばれたからさ。
――それ、もう何度も聞いてるんだけど。
――必要だから何回だって言うさ。分かってもらうためにね。
――何を?
――君の使命さ。
――勝手に……
――確かに勝手な話だね。でも仕方ないだろ? 君だって体験したじゃないか。自分がどれだけの力を持ってるか、もう分かってるでしょ?
――だから、それが勝手な話だって言うのに!
僕は声を荒げて――といっても、声を潜めながらだったから、態度だけのことだったのだけれど――そう言った。テレビもつけておいていたけれど、この会話だって、周りに聞かれてはいけないに違いなかった。
ウーティスはそんな僕の様子に、やれやれといった感じで肩をすくめて見せた。人の気も知らないとは、こういうことだろう。
――使命でも力でもなんでも、どうして僕なんだよ! 今からでも他の人のところに、もっと有能な人のところにでも行けばいいだろ!
――そう簡単じゃないさ。そんなにすぐにとっかえひっかえできるものじゃないからね。選ばれたって言ったろ? 見てみなよ。
ウーティスはその小さな手で、そのごく短い指で、あぐらをかいていた僕の方を示した。そして、ウーティスの角がうっすらと光り始め、それに呼応するように、僕の下腹部(この言い方は嫌いだ)がうずくのが分かった。
おそるおそるパジャマをまくり、ズボンを下げてみると、そこがぼんやり光っていた。
――もう、力は君のものになってるんだ。君の一部って言った方がいいかな?
――君が……こうしたの?
――君が選ばれたからさ。
ウーティスはまたそう言った。目をらんらんと輝かせ、じっとこちらを見つめながら。肯定でも否定でもない、まるで最良の逃げ道を見つけたかのようだった。
――その力って、何なの?
――僕たちは『ロートス』と呼んでる。本当は、僕たちの世界にしか存在しないはずなんだけど。
――でも、ここにこうしてあるじゃないか。
――その通り。順番に話していこうか。
ウーティスはそう言って、抱えていたマグカップの中身を飲み干した。そしてその小さな舌で、ぺろりと小さな口の周りをなめた。満足したらしい。




