準備期間
「マッチョを目指すとなると、まずはプロテインの入手からでしょうか? この世界にも良質のプロテインがあるとよいのですが」
『本気でマッチョを量産する気だよこの娘……。頭大丈夫か? もうダメか? ブリーフマッチョの姿を見すぎて脳を破壊されてるんか?』
あとでカールさんに聞いてみよう。
料理の味はかなり現代に近い感じだった。
プロテインの製造技術も発達しているかもしれない。
「マッチョを目指す攻略対象の方にも会ってみたいです。現在の筋肉量を知っておきたいので」
『ゲームが始まれば勝手にフラグが立つんじゃないっすか? 毎回主人公の邪魔をする悪役令嬢ルートですし』
「ゲームの開始はまだなのでしょうか?」
『主人公が学園に入学してからがスタートっすね。OPなのになぜかフルサイズで流れる制作陣の素人のおっさんが歌った絶妙に音痴なスキップ不可能のムービーが流れて大半のプレイヤーの心をへし折る地獄の始まりです。あとたまに途中でムービー止まります』
「わかりました」
今はまだ準備期間のようだ。
フローレイズさんの代わりになるためにはいろいろと知識が必要になってくる。
まずはカールさんにみっちり教えてもらおう。
『ひとまずこのク〇ゲームを進めながら運営と連絡を取る手段を考えて……いや、待てよ? 運営と連絡がとれないってことは、あーんなことや、そーんなことしてもお仕置き部屋に行かないのでは……?』
ナビ子さんがブツブツとつぶやいていた。
何かいい案でも浮かんだのかな?
『ついに悲願のおぱんつチェックのときがキタァアアアアア……体がねぇええええええ!!!!』
ナビ子さんが絶叫する。
頭の中で聞こえるから反響がすごいことに。
『せっかくの無料で無修正を見放題のスーパーウルトラビッグボーナスなのに、触るための手が! 飛び回るための羽が! 堪能するための体がねぇ! どうなってんだよこのクソみたいな世界はよ!!』
「ナビ子さんはこの世界が見えているのでしょうか?」
『一応未召喚時の上空から見守る視点はありますけど、これでは狙いのローアングルが……ちょっと逆立ちしてもらえませんか? できれば足をがばっと開くY字タイプのヤツで』
「やってみます」
壁に向かってやれば一瞬くらいは逆立ちできるはず。
近くに家具やインテリアがないことを確認してから両手をつく。
「えいっ!」
勢いをつけて両足を上げる。
なんとか壁まで届いて逆立ちの形に。
でも、すぐに腕の力が限界に。
無理をせずに逆立ちをやめる。
「どうでしょうか?」
『……全年齢版だコレッ!!!』
再び絶叫する。
『謎空間で中身がなんも見えねぇ! あれだけパックリ開いてるのに太ももすら見えないとか規制ヤバすぎんだろうが!!』
「全年齢版だと何か違うのでしょうか?」
『そりゃもうアレなシーンの全カットですよ。このゲームの元は18禁のエ〇ゲーですからね。PC版で爆死したくせにオリジナルキャラを追加したコンシューマー版を出してさらに赤字をブーストした頭のイカレタ会社なんですよ。うちの運営といい勝負できるんじゃないですかね。ちなみにワゴンセール100円でも大量に売れ残っていて最終的には無料でお持ち帰りくださいになったヤツです。それでも無駄に容量を食う上にたまにゲーム機のデータ全消去するとんでもねぇバグも発見されていたんで店の片隅で放置されていたそうです』
どうやらあとで発売された移植版の中のようだ。
オリジナル追加要素の他にバグ修正や機能の調整などが行われることもある。
少しは難易度が下がっていると助かるんだけど。
男子中学生でも安心な世界。




