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ミッションインポッシブル

「あの……ボクとフローレイズさんは似ているのでしょうか?」


 気になっていたことを聞いてみる。

 性別や身長に関してはひとまず置いておくとしても、そもそも見た目が近くなければなりすますこともできない。

 知り合いに会ってしまったら一発でバレてしまう。


「似ているかどうかと言われますと、まったくもってこれっぽっちも似ていません」


 カールさんが断言する。


「フローレイズお嬢様は幼いころから美人として有名でした。愛らしいタイプのお嬢様とは真逆と言えましょう」

「そうなると、ボクが代わりになるのは難しいような……」

「幸いフローレイズお嬢様は社交界が嫌いでサボりまくっていましたから本当の姿を知る者は多くありません。顔見知りに合わないようやり過ごせばなんとか……いや、いくらなんでもこれは……うーん」

「いっそのことフローレイズお嬢様と面識がある者を片っ端から処理しますか?」


 ナーランさんが真顔で提案する。


「待て待て、顔見知りには皇子殿下や主要貴族もいる。内乱を引き起こすわけにはいかない」

「それでは目だけ潰しましょう」

「ナーランくん、もう少し穏便にいこうか? お嬢様もいらっしゃるわけだし」


 ナーランさんをなだめる。

 それから、ボクのことをじっと見つめる。


「しかし、旦那様はなぜこのような無理難題を……いくら魔法の才があるとはいえ、このような幼子を代わりにするとは……いや、旦那様が決めた以上腹をくくるしかないか」


 カールさんがボクの前でひざまずく。


「あとはお嬢様のお気持ち次第です。突然のことで大変だとは思いますが、なにとぞお力添えいただきますようお願い申し上げます」

「もしも途中で偽者だとバレてしまった場合はどうなるのでしょうか?」

「偽りの婚約者を送り込んだとなれば皇族に対する詐欺罪で極刑は免れません。我々使用人は首が飛び、旦那様は爵位と領地を取り上げられるでしょう」

「そこまでのリスクがあるなら正直に言ってしまうのはダメなのでしょうか?」

「皇太子殿下の婚約者が海賊の真似事をしているとバレても責任を追及されて同じような結果になるでしょう。わずかな可能性に賭けたほうがまだマシとの判断です」


 なんだか大変な話になってきた。

 思っていたよりもすっごく難しいクエストのようだ。


「公爵家の者であれば学園に3名まで従者を連れていけます。ナーラン、ステア、プーリーの3名が全力でサポートします」

「お嬢様の身は何があろうとも全力でお守りいたします」


 事情を知っている人が周りにいるのは心強い。

 でも、どれだけサポートしてくれてもすぐにバレてしまうような気がする。

 見た目も似ていないようだし男だし。


「どうかよろしくお願いいたします」

「やっぱり、ボクが男な時点で代わりになるのは難しいような……」

「そうですか……仕方ありません。お嬢様に見捨てられた以上、これもベルダン家の運命だと受け入れるしかありません。皇子殿下の婚約者を育て上げることができなかった不名誉を背負い、爵位と領地と財産すべてを没収され、我々使用人たちは処刑台で首をゴットンゴットン切り落とされ、腐り落ちて骨になるまでさらし首に……」

「やります!」

「ありがとうございます、お嬢様! いえ、フローレイズお嬢様」


 深くお辞儀をするカールさん。

 思わず返事をしちゃったけど……本当に大丈夫かな?

 ただの男子中学生が公爵家のお嬢様の代わりをするなんて、どう考えても無理しかないような……。

 絶対にバレてはいけないファンタジー学園。

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