大きな問題
「先ほどお伝えしたようにフローレイズお嬢様のグレントニー学園への入学も決まっていました。こちらの学園は貴族の子息子女にとって社交界のような非常に重要な場所です」
カールさんが説明を続ける。
「もしもお嬢様が通えないとなればベルダン家の権威が大きく失墜することになります」
「そうならないために代わりとしてボクが呼ばれたのでしょうか?」
「お察しの通りです。ベルダン家の特性である『炎の魔法』を見事に操っていたのが公爵閣下のお眼鏡にかなったようです」
この前のテストは採用試験だったようだ。
条件に合うのはフローレイズさんと同じくらいの年齢で火属性魔法を使える『女性』になる。
「あの……1つとても大きな問題があるのですが」
「なんでしょうか?」
「ボクは男です」
「……?」
とても不思議そうな顔をする。
「見たらわかると思いますが」
「……??」
さらに不思議そうな顔をする。
「ナーラン、どういうことだ?」
「どういうことでしょうか……?」
ナーランさんも不思議そうな顔をする。
「お着替えの際に見た限りではそれらしき『モノ』は確認できませんでした。恥ずかしがって体を隠していたので」
「なるほど? 我々が勝手に『お嬢様』であると勘違いしていた可能性があると?」
「お嬢様用のドレスを作るために骨格のチェックもしていますが、まったくもってこれっぽっちも男要素はありませんでした。お嬢様の言葉は正確ではない可能性が高そうです」
「まあ、そうだろうな。誰がどう見ても、だし』
ボクのほうをチラっと見るカールさん。
『それでは、なぜ、お嬢様は自分を『男』だと言っているんだ?」
「そうですね……生まれ育った環境に何かしらの理由があるのではないかと私は考えております」
「ああ、一部地方ではそういった娘を息子として育てるような男尊女卑の風習があると聞いているな。お嬢様はそこの出身ということか」
「おそらくは」
2人でうなずき合う。
ちゃんと伝わったのかな?
ボクの姿を見たら一目瞭然なので確認するまでもない。
仮に見た目や背格好がフローレイズさんに近かったとしても、性別まではごまかしようがない。
ガシッ。
「?」
ナーランさんがボクの手を取る。
「ご安心ください、お嬢様。この国では女子の人権も守られています」
「そうなのですか」
「はい。わざわざ男のフリなんてしなくても大丈夫ですよ。そのままのお嬢様でいいんです」
とてもやさしそうな笑みを浮かべる。
あれ?
うまく伝わっていない……?
「本当に男なのですが」
「お嬢様に『男であれ』と押し付けてくるような連中は一切近づけさせません。この私がお守りいたします」
やっぱり話がかみ合わない。
フローレイズさんの代役をするために男ではないということにしておきたいのかな?
どれだけがんばって女の子のフリをしてもすぐにバレてしまうと思うけど。
全員がはてなマークを浮かべている不思議な空間。




