状況説明
コンコン。
「お嬢様をお連れしました」
『お入りください』
離れにある一室の中に入っていく。
中にはカールさんがいた。
きらびやかな家具が並んだ応接室になっている。
「どうぞおかけください」
「ありがとうございます」
近くにあるソファーに座る。
本格的な革張り仕様。
硬すぎず柔らかすぎずでちょうどいい座り心地。
「お飲み物をご用意いたします」
ナーランさんが紅茶の準備をしていく。
部屋の中に紅茶の爽やかな香りが広がっていく。
「さて、本題からお伝えしましょう」
カールさんが口を開く。
「お嬢様には『フローレイズ・ラックス・マス・ベルダン公爵令嬢』の身代わりとして『グレントニー学園』に入学してほしいのです」
「……?」
「1つずつご説明いたしましょう。この屋敷を所有している我々の主人が『ガリアン・ラックス・マス・ベルダン公爵様』です。公爵の位についてはおわかりになりますか?」
「えっと……すごく偉い人です」
歴史の授業で習ったことがある。
王族の人たちの次に偉い人。
そのあとは侯爵、伯爵といった感じの序列が続いている。
「その認識で問題ありません。特に我がベルダン家は『ビルボディ皇国』建国時から続く由緒ある家系であり、現存する公爵家の中で一番偉いと言っても過言ではありません」
それならこのお屋敷の豪華さも納得できる。
なぜそんなところにボクが招待されたのか不思議ではあるけど。
「そのベルダン家の長女であるフローレイズお嬢様は『ビルボディ第二皇子殿下』と婚約されています」
「許嫁の関係でしょうか?」
「その通りです。婚約が正式に決まったのはフローレイズお嬢様が5歳のときです」
身分が高い人たちの間ではよくある話。
千合学園でも入学前から婚約している生徒がたくさんいる。
「しかし、つい先日そのフローレイズお嬢様が突然人が変わったかのように妙な行動を取り始め『悪役令嬢処刑ルートは避けなければ……』と言い残し失踪してしまいました」
「家出みたいな感じでしょうか?」
「はい。皇子殿下の婚約者を不手際で失ったとなればベルダン家の大失態です。場合によっては爵位を失うこともあるでしょう」
「フローレイズさんの行方は……」
「南方の海で海賊の真似事をしながら生活をしているようです。なんでも『攻略対象外の推しと出会うためにはこのルートしかねぇ!』と周りの船員に話しているそうです」
見つかってよかった……とは言いづらい状況のようだ。
貴族の令嬢が海賊をしているのはなかなか破天荒な人生。
お父さんであるガリアンさんも心配していると思う。
「なんとか説得して連れ戻すことはできないのでしょうか?」
「『公爵家に戻るくらいならこの場でクラーケンのエサになるほうを選ぶわ!』と言われてしまってはどうしようもありません。公爵閣下も無理に連れ戻すつもりはないようです」
本物のフローレイズさんには戻りたくない理由があるようだ。
人が変わってしまったことと何か関係があるのかな?
女装して令嬢のフリをしているのもなかなか破天荒。




