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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
29/33

29.楽しい魔法の使い方

「出でよ、インドラ!」


バリーン!と雷鳴と共に、

新たなる使い魔が梓たちの前に顕現する。


「新作来た!」

「そしてやはり可愛い!」

「ほほう、ウサギですか」

「ウナギと一文字違いだね」

「ウサギって角生えてたっけ……?」


そう、それは頭に2本の角が生えたウサギであった。

そして落雷のエフェクトを伴っていたことから、

雷属性の使い魔であることは容易に想像がついた。

これにより炎氷雷の3属性の使い魔が出揃い、

弱点属性を持つ敵への備えが整ったのだ。


「氷属性の魔法は天川が対応してるから、

 今後セラフィムの出番はあんま無いかもな

 ああ、でもあいつヒーラーだから、

 強敵との戦いでは必須要員になるかも」


同時に2匹までしか出せないという制約が悩ましい。

まあ、世の中に存在する冒険者の99%以上は

1匹も召喚できないのが当たり前な状況なので、

今のところ中村にしかわからない悩みではあるが。



とりあえず早速新入りを戦わせてみる。

するとインドラはさすがに雷がモチーフだけあって、

これまでの使い魔よりも格段に素早い動きで

第1層の魔物を蹴散らしてゆくのだった。


『突撃』……ダッシュで敵に角を突き刺す物理攻撃。

『電撃』……角から雷属性のビームを放つ魔法攻撃。


と、どちらの技も角を使った攻撃であり、

サラマンダーと同じく3つ目の技も

攻撃系であると予想された。


……が、召喚から3時間が経過しても、

インドラは3つ目の技を使用してくれなかった。

一応、中村が技を見せるよう命令してみたのだが、

なんとインドラは首を横に振って拒否したのである。

そしてなぜか中村のMPは消費されずに済んだ。

この謎の挙動に、一行は首を傾げるしかなかった。




しばらくして、一行は休憩タイムに入った。

梓と葉加瀬はノートPCを覗きながらロボット談義、

ヒナと茜は先日の実習先についての愚痴を語り合い、

中村は織姫から魔力とマナの違いを教わっていた。


1人余った佐原はスマホを取り出し、

音楽でも聴きながら時間を潰そうとしたのだが……


(あ、20%切っちゃってる……

 電池の減り、早くなったなあ

 そろそろ替え時かな……)


余談だが、よその魔法学園では入学時に

新入生全員に対してスマホが支給されるそうだが、

ここ中央魔法学園ではそんなサービスをしていない。

それはさておき、佐原は電池の残量が気になるので、

アイドルソングでリフレッシュするのを断念した。


……が、スマホをポケットに仕舞おうとする佐原に

インドラが擦り寄ってきたではないか。

そして、どうもインドラは佐原に懐いたのではなく、

スマホに対して強い関心を示しているようだった。


(電池が残り少ないスマホ……

 雷属性の使い魔…………ハッ!)


佐原は閃いた。

それも、確信めいた閃きである。

ほぼ当たりだろうという自信はあった。

が、私物でそれを試す気にはならなかった。


「み、みんな!

 インドラの技が判明したかもしれない!」



『充電』

ほぼそれで間違いないだろう。

インドラは佐原のスマホのUSBポートを見ると、

嬉しそうに2本の角をパチパチと光らせるのだ。

電気を流し込みたくてウズウズしているのだろう。


「近々スマホを買い替えようとは思ってるけど、

 万が一、データが飛んだりしたら嫌だし、

 誰か他の電化製品で試してもらえればなと……」


「自分も試したくないなあ」

「アタシもパス!」

「もちろん僕のPCもだめですよ」

「じゃあ俺……も、やっぱ怖いな」

「あ、あたしも無理……」


まあ、当然である。

インドラがどの程度のパワーで充電を行うのか、

全く予想がつかないのだ。

もしかしたら機械を壊すための技かもしれないし、

そう都合良く壊れてもよい電化製品を持っている

メンバーなんて、この中にはいないのである。


「友達1号で試してみるのはどうですか?」


いた。


「24時間稼働させてから回収し、

 消耗したバッテリーで実験するのです

 葉加瀬君、電流計は持っていますか?」


「ええ、持ってますよ

 いいですねえ、実験

 今からワクワクしますよ」






翌日、実験を終えた梓たちがダンジョンから帰還し、

監視員は冷蔵庫から7人分のジュースを取り出して

若者たちに振る舞うのだった。


「やあ、みんなお疲れ!

 それで、実験はどうだったんだい?」


「成功です

 やはりインドラの技は充電でした

 しかも対象物毎に電流を調節してくれるので、

 電化製品が壊れる危険性は非常に低いです」


「おお……

 コンセントの無い環境でも充電可能かぁ

 そりゃまた随分と便利そうだねえ」


「はい、とても便利だと思います

 ちなみに蓄電するタイプの電化製品だけでなく

 ドライヤーなどもその場で使用可能なので、

 濡れた衣服をすぐに乾かすこともできます」


「それは電気代の節約になるねえ

 サラマンダーはガス代の節約になるし、

 おじさんも召喚術を使ってみたいものだよ」


「あ、いえ

 サラマンダーの炎は実体ではないので、

 何かを燃やしたりすることはできないのです」


「ん、そうなの?

 たしか、シルフィードとの組み合わせで

 気温を上げることができるんだよね?

 それって熱を操ってるのかと思ってたけど……

 う〜ん、やっぱり魔法って難しいなあ」


おじさんの言葉に、一同は固まった。

例の協力技は『鷲尾梓の攻撃力を上げる魔法』

としか認識していなかったのだ。

根本を見落としていた。

基本的に魔法は物質に干渉できないとされているが、

“実体化”という高等技術を駆使すればそれが可能だ。


インドラが充電した電化製品たちは、

どれも問題無く使えている。

紛い物ではない、本物の電気が流されたからである。

実体化という高等技術が使われたという証拠だ。


サラマンダーとシルフィードによるヒートアップは、

気温を上昇させて音の伝わる速さを高めることで

結果的に梓の音波銃がより強力になるという効果だ。

“音”という物理現象に影響を与えている時点で、

空気中の分子に干渉していることは明白である。


サラマンダーも実体化を使用可能なのだ。


もしかしたらシルフィードの力を借りないと

本物の熱を操れないのかもしれないが、

物質の温度を上昇させられるのならば、

それを燃やすことは不可能な話ではない。


「おじさんのおかげで戦術の幅が広がりました

 ありがとうございます」


「え? ええっ!?

 おじさん、何かすごいこと言ったかな!?

 全然自覚無いんだけど……

 でも、君たちの成長に貢献できたのなら嬉しいよ」


おじさんにはジュースが1本贈呈された。






後日、ギルドマスターの栗林氏が訪れた。

彼はべつに暇人というわけではない。

むしろ滅茶苦茶忙しい身である。


現在ギルドの拠点は埼玉の1ヶ所だけだが、

支部を作るよう上から命令を受けているのだ。

西へ東へと駆け回っているのは、支部を作るにあたり

信頼に足る人材を確保するためであり、

そのついでに中央魔法学園へ立ち寄っているだけだ。


とりあえず梓たちはこれまでの活動の成果を報告し、

新たな使い魔2匹を確認できた栗林氏は満足した。

そして、今回は彼からも報告があるそうだ。


「これはつい先週、俺自身がまた発見してしまった

 面白い魔法の使い方だ

 近々発表する予定の未公開情報だぞ

 誠少年、気が引けるとは思うが、

 サラマンダーの『ファイヤー!』で

 俺を攻撃するよう命令してくれないか?」


「サラマンダー、あいつを燃やし尽くせ!!」

「ピィ!!」


「容赦ねえな!?」


サラマンダーは自身と同サイズの火の玉を撃ち出し、

その軌道はまっすぐ栗林氏へと向かった。


「喰らったらひとたまりもない…………だが!!」


突如、栗林氏の前に黒炎の壁が発生し、

サラマンダーの炎はあっさりと掻き消されたのだ。


「えっ……あれ?

 グリムさん、マジックシールド使えましたっけ?

 習得枠も追加効果枠も使い切ってたはず……」


すると栗林氏は左手で顔の右半分を覆い隠すという

お馴染みのポーズを取りながら、

少年らにカラクリを教えるのだった。


「フハハハハ!!

 どうだ見たか、我が暗黒の力を!!

 闇の焔の前ではいかなる攻撃も無力!!

 ……ってのは冗談で、

 『攻撃魔法を攻撃魔法で打ち消すことができる』

 という発見を俺はしてしまったのだよ

 これも新時代の魔法ルールの1つだな

 昔はこんなことできなかったんだぜ?

 攻撃魔法同士をぶつけ合おうとしても、

 大抵の場合はお互いに貫通しちまってたんだ

 波長が一致すれば……いや、難しいからよそう」


「へえ……

 これはなかなか使い道がありそうですね

 場合によっちゃマジックシールドを習得しなくても

 いいわけですから、枠の節約にもなるし……」


「うむ、そうだな

 ちなみに属性相性の影響をモロに受けるので注意だ

 例えば炎は氷に吸収されて、絶対に打ち負ける

 同じ属性同士ならば出力の高い方が打ち勝つ、

 そういう仕組みだ

 全属性に対して等倍の無属性がド安定なんだが、

 無属性攻撃の適性持ちは極端に少ないんだよなあ」


(この人は会う度に有益な情報くれるなあ……)




「ああ、それと確認しておきたいんだが、

 君たちは“エイジア連合共和国”を知っているか?」


梓たちは首を傾げ、顔を見合わせたりして

なんとか思い出そうとするが、全く心当たりがない。

つまり、知らないのだ。


「最近、その国名を口にする者が増えてきてな

 なんでも彼らが元いた世界に存在していたそうで、

 アジアの国々は1つの巨大国家にまとめられて、

 日本もその一部だったという話なんだ

 ただし生活様式なんかは現在とそれほど変わらず、

 “エイジア国民”の意識を持っている人間は

 ほとんどいなかったようだがな

 まあ、とりあえず出身世界の判別を行う上での

 重要な手掛かりと言えるだろう」


出身世界の判別……。

特に中村が知りたがっている情報だが、

残念ながら彼もエイジアなんて知らなかった。


7割以上の人間が生活していたとされる第1世界。

魔法のルールが変更される原因となった第2世界。

エイジアとかいう国が存在したエイジア世界(仮)。

中村も並行世界の記憶を持っていることから、

名倉世界の原住民というわけではない。

彼はもっと他の世界からやってきたのである。


「……あ、そっか

 『召喚術が使える』だけじゃあ、

 判断材料が足りなかったですよね?

 この世界と俺が住んでた世界との

 大きな違いを教えておくべきでした」


「ふむ、言われてみればそうだな

 俺は珍しい魔法ばかりに注意が向いて、

 その点を見落としてしまっていた

 では是非教えてくれ、その違いとやらを」


「はい、俺のいた世界はここより科学が進んでいて、

 空飛ぶスケボーとか普通に流通してましたね」


「えっ、おい……ホバーボードか!?」

「構造は覚えてますかねえ!?」


科学大好き少年の葉加瀬が食いついた。

心なしか、梓も興味深そうに中村を見つめている。


「いや、構造とかはちょっと……

 まあとにかく、そんな文明レベルだったから

 ロボット開発技術が一段階進んでまして、

 人間と見分けがつかないアンドロイドなんかも

 よく街中を歩いてる環境だったんですよ」


「まるでSF映画の世界じゃないか……」

「その世界に統合されたかったですねえ……」


「ちなみにアンドロイドと結婚する人が多かったです

 自分好みの外見で、文句の1つも言わずに黙々と

 求められた働きをしてくれるパートナーですからね

 度々“本物の愛”について議論が交わされましたが、

 人間同士の夫婦の離婚率が9割を超えてたことから

 アンドロイド婚のが圧倒的に幸福度は高かったです

 一度も離婚しなかったうちの両親は希少種ですよ」


「それこそ本物の愛ってやつなのかねえ」

「素晴らしいと思いますよ、アンドロイド婚」


「中村君はロボットと結婚したいですか?」


と、梓からの質問。これは珍しい。

しかも結婚に関する話題だ。

梓が、中村に、だ。


この異例の事態を受け、

仲間たちはある種の好奇心を抱きながら

中村の返答に耳を傾けるのだった。


「いやあ、考えたことないな

 あっちの世界の俺はゲームばっかやっててさ、

 将来の心配なんてそっちのけでレベル上げやら

 クエスト消化やら素材集めやら……

 って、こっちの世界でも似たようなもんか

 まあそんなわけで、恋愛の話題とか苦手なんだ」


「そうですか、私も恋愛の話題は苦手です」


進展無し。

大半の仲間がガッカリする中、織姫はニヤリと笑い、

栗林氏と葉加瀬は『ゲーム』について考察する。


「そっちの開発技術も進んでたんだろうなあ……」

「フルダイブ型VRMMORPGとかでしょうねえ……」


羨ましい限りだ。

生徒情報


氏名:中村誠 <ナカムラマコト>

所属:中央魔法学園冒険者クラス1-B

役割:召喚士


武装①:レプリカリバー

武装②:戦士の鎧


魔法:召喚


召喚①:サラマンダー

召喚②:シルフィード

召喚③:セラフィム

召喚④:インドラ


宿星:アルタイル

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