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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
27/33

27.手探りで突き進め

ギルドマスターの栗林氏が学園を訪れた。

だが彼はこの場所に用事があったのではなく、

目的地へ向かう途中で訓練場の件を思い出したので、

休憩ついでにふらりと見物に立ち寄っただけだった。


「ところで誠少年よ

 訓練場とは全く無関係な話題なんだが、

 君は“復活者(レヴナント)”を知っているか?」


「ええ、まあ

 並行世界で死亡してしまったけれど、

 名倉世界で生存していたことにより

 世界統合後に蘇った人たちのことですよね?

 なんでも、彼らには並行世界の記憶が無い

 というのが共通点なんだとか……

 名倉事変という現象名の元になった名倉友紀も

 レヴナントの1人であると考えられていますが、

 なにせ行方不明だったので真偽は不明です」


「ご名答、教科書に載せたいレベルの模範解答だった

 で、そのレヴナントなんだが……

 実は俺の同期にも1人生き返った奴がいてな

 先週そいつと直接話して複雑な気分になったよ

 そいつは第1世界とは違う生き方をしてきたから

 魔法学園には入学せず、俺とは出会わなかった

 そしてレヴナントには並行世界の記憶が無い……

 まあそいつと特別仲が良かったわけじゃないけど、

 それでも戦友が仲間たちと過ごした思い出を

 全く覚えちゃいないという事実はショックだった」


「それは……たしかに複雑な気分にもなりますね

 おそらくその人も複雑だったことでしょう

 死んだ記憶なんて無いのに、知らない人たちから

 『生き返ってよかった』とか祝福されても……」


「おお、まさにそんな反応だった!

 そいつは露骨にウンザリしていたぞ

 なかなか読解力があるじゃないか」


「俺も身に覚えのない経験のせいで

 しょっちゅうイジられてますからね

 ……ああ、そういえばその件に関しても

 ずっと気になってることがあるんですよ

 第1世界から移住してきた人が大多数みたいですが、

 それ以外の世界からやってきた人たちには

 何か共通点とかあるんですかね?

 俺は一体どの世界から来たんだろうって、

 そろそろはっきりさせておきたいなあと……」


「残念だが、君の出身世界はまだ特定できていない

 他に召喚術の使い手が都合良く登場してくれれば、

 何かしらのヒントを得られるはずなんだがな

 別世界からの移住者の共通点に関しては、

 『一番魔力の高い個体が選ばれた』という仮説が

 現状では最も信憑性が高いとされている

 第1世界の中村誠よりも第x世界の中村誠の方が、

 より優れた個体だったということなんだろう

 実際、第1世界以外からやってきた冒険者たちは

 世界統合前よりも確実に魔力が上昇していて、

 逆に下がったというケースは確認されていない

 無能力者が魔力持ちになった事例すら存在する

 おかげで魔法能力者の人口はかなり増加したよ」


「一番強い俺、か……

 少しスッキリしました

 ありがとうございます」


「いや、なんのなんの

 俺はそろそろ行かなきゃならないが、

 最後にもう1つ……召喚術についてだ

 この仮説は完全に俺の推測ではあるんだが、

 君のそれは魔力残滓を再利用する能力かもしれない

 ダンジョン内で使用する方が調子が良いのも、

 使い魔の成長レベルがリセットされないのも、

 使用済みの魔法カスを利用していると考えると

 ある程度は辻褄が合うんだよな

 こういう得体の知れない魔法の解明こそ

 国立魔法技術研究所にやってもらいたいものだが、

 名倉事変の余波でそれどころじゃないからな……」


「魔力残滓の再利用……!

 グリムさんがそう言うと、

 なんだかそれで当たりっぽい気がします!」


「推測だ、推測

 でもまあ、そのへん意識しながら練習すれば

 何か進展がある……かもしれないな

 とりあえず今日はここまでだ

 では、また会おう!

 精進しろよ、少年!」


「はい、ありがとうございました!」


フハハハと笑いながら軽自動車に乗り込む栗林氏を

見送りながら、中村は会話の内容を反芻した。


魔力残滓の再利用。

今まで不可能とされていた魔法技術ではあるが、

他の人間とは違う世界から移住してきた自分ならば、

それができたとしても不思議な話ではない。

魔法のメカニズムに関しては元々未解明だったのだ。

なんだって試してみる価値はある。

名倉事変という混沌の渦中にあるこの時期ならば、

尚更手探りで正解を引き当てるしかない。

既存の常識に囚われてはいけないのだ。


それからもう1つの話題、レヴナント。

家族や友人が蘇った者たちにとっては奇跡だろう。

たとえ復活した本人にその自覚が無くとも、だ。

しかし、どうしても考えてしまう。

逆のケース……並行世界では元気に生きていたのに、

名倉世界で死んでいたせいで消えてしまった人たち。

彼らが戻ってくることはない。

その理不尽な消失に、やるせない気持ちになる。






本日の冒険活動は第4層の視察を目的としていた。

3年前の資料によると物理攻撃が通じない精霊系の

魔物が出現するそうだが、現在も同じ環境であるとは

考えない方がよい。


つい最近、諸星司がソロで活動していたようだが、

彼が提出した報告書はほとんど空欄であり、

なんの役にも立たない紙切れであったという。

それを受理してしまう関所の職員も杜撰であり、

この学園にはまだまだ改善点があると言えるだろう。


さておき、梓たちは第2層で立ち止まり、

中村の試したいこととやらを見守っていた。


「こないだ天川が魔法使った座標ってここだよな?

 もうあちこちに散らばってるかもしんないけど、

 まだ大量の魔力残滓が残ってるはずだ

 そういう場所なら、たぶん……」


と、中村は目を閉じて精神を集中させた。


ダンジョン内を漂う氷属性の魔力残滓をイメージ……

それを自分の手元に引き寄せるイメージ……

その魔力残滓を具現化するイメージ……

具現化……動物……氷属性……



2分、3分、5分と時間が過ぎてゆく。

もしかしたら無駄な試みなのかもしれない。

だが、必ずしも失敗するとは断言できない。

たとえ失敗したとしても構わない。

何度も試して、失敗して、無駄であったと、

その結論に辿り着くためには挑戦し続けるしかない。

当然だが、過程が無ければ結果は出ない。

成功はおまけみたいなものだ。


そして──


「あ、なんか形になってく……!」

「見たことないやつだ!」

「ほうほう、これはこれは……」

「中村君、もう少しだよ!」

「ま、誠君ガンバ……!」


仲間たちから熱い声援を受ける中、

中村の手元では魔力の塊が何かの形を成しており、

栗林氏が提唱した理論は間違っていなかったのだと

証明されつつあった。


「出でよ…………セラフィム!!」


命名と同時に中村の魔力が解き放たれ、

新たなる使い魔へと注ぎ込まれる。


セラフィム──

それは6枚の翼足を持つクリオネであり、

“流氷の天使”のイメージを強調させるかのように

キラキラと輝く氷の結晶を周囲に纏わせていた。

ちなみに熾天使セラフィムは“燃える者”なのだが、

クリオネ成分が勝った結果がこれなので仕方ない。


「またしても可愛いやつだねえ」

「アタシの地位が脅かされている……」

「これで召喚が1つの魔法であると証明されましたね」

「魔法習得枠が1つ無事だったってことだね!」

「誠君……すごい!」


こうして新たな仲間が加わるのであった。




その後の調査で、場に出せる使い魔の数は

最大2匹までと判明した。

そしてサラマンダーはセラフィムが苦手なようで、

これは属性相性が反映されているものと考えられる。

炎は雷に強く、氷は炎に強く、雷は氷に強い。

炎属性のサラマンダーが氷属性の新入りを避けるのも

仕方のないことである。


そして、ここで1つ仕様が発覚する。

今まで使い魔には好き勝手に動いてもらっていたが、

中村のMPを消費することで命令が可能だったのだ。

これにより相性の悪い2匹を共闘させることができ、

任意で協力必殺技を使用できるようになった。



『聖水生成』

サラマンダーとセラフィムの協力必殺技である。

聖水は強力な魔力伝導性を持っており、

単体対象の魔法を範囲化しつつ

魔法効果を増幅させるという性能をしている。

ダンジョンの外ではすぐに蒸発してしまうので、

量産不可能な奇跡の水とされていた。

それを好きなタイミングで作れるようになったのだ。

非常に大きな収穫である。


ちなみにセラフィムの基本技だが、

『氷弾』で氷属性の単体魔法攻撃、

『吹雪』で広範囲の敵を凍結……と、

織姫のアイスストーム劣化版を思わせたが、

3つ目の技が異彩を放っていたのである。



『天使の羽』

HPと状態異常を回復させるという効果であり、

しかも広範囲で、人間だけを癒すという便利技だ。

更に嬉しいことに、防具のバリア性能を修復させる

だけでなく、生物の自然治癒力を高めるという、

これまでの常識を覆す破格の性能を秘めていたのだ。

さすがに折れた骨を瞬時に復元などはできないが、

ちょっとした切り傷なんかをすぐ止血できる程度には

高い治癒効果を持っている。


梓パーティーに足りなかったヒーラーが誕生した。




「召喚便利すぎィ!!」

「なんか中村だけズルくない!?」

「どんどん万能化していきますねえ」

「そのうち僕の役割を奪われるんじゃ……」

「な、なんでもできる誠君はすごいよ!」


様々な意見が飛び交う。

まあ、たしかに2つしか魔法を使えない環境で、

それ以上の魔法効果を使い分けられる中村は

ズルいと思われてしまっても仕方ない。

だが彼自身、弱点らしきものには心当たりがあった。


「実は召喚時の消耗が結構激しいんだよな

 だからあんまり出したり引っ込めたりできないし、

 使い魔に命令できる回数も限られてる

 訓練でMP伸ばせば少しは解決するんだろうけど、

 そこまで劇的に改善できるかというと……

 まあ呼び出す使い魔選びは慎重に、だな」


選択肢は多いが、手数が少ない。

連発できないというのが召喚術の弱点である。




第4層の敵は事前に仕入れた情報通り、

物理攻撃が通用しない精霊系ばかりだった。

新種の魔物も混じっているので物理アタッカーにも

出番はあるが、やはり魔法メインのフロアだろう。


火の玉のようなジェリーは炎属性で氷に弱く、

雪だるまのようなジャックは氷属性で雷に弱く、

雷小僧のようなジンは雷属性で炎に弱い魔物であり、

いずれも無属性ダメージを与えてゴリ押すか

凍結させて耐性を上書きするという抜け道はあるが、

なんだかんだで弱点属性を突くのが手っ取り早い。


「サラマンダーが炎、セラフィムが氷だから、

 あと雷属性の使い魔が揃えばバランス取れるな」


「動物は何にするのー?」

「雷っぽい動物ねえ……なんだろ?」

「電気ウナギとかどうですかね?」

「ウナギはちょっと可愛くないかもね」

「じゃ、じゃあ…………ネズミとかどうかな?」


「「「 ネズミはまずい!!! 」」」

生徒情報


氏名:中村誠 <ナカムラマコト>

所属:中央魔法学園冒険者クラス1-B

役割:召喚士


武装①:レプリカリバー

武装②:戦士の鎧


魔法:召喚


召喚①:サラマンダー

召喚②:シルフィード

召喚③:セラフィム


宿星:アルタイル

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