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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
24/33

24.訓練場

中央魔法学園にまともな訓練場が完成した。

旧訓練場と体育館を取り壊して合体させただけあり、

学園内で最も広いスペースを誇る建造物となった。


1階は新体育館とも呼べる空間で、

体育の授業や集会の場として利用する他、

休み時間や放課後に屋内スポーツを楽しめる。

南東の区画には畳が敷かれており、

剣道や柔道などの武道を嗜む生徒にとっては

心の落ち着く作りなのかもしれない。

南西の区画はトランポリンスペースとなっており、

多くの生徒が遊びに訪れるであろうと予想される。


2階はこの建物の肝となる訓練フロアであり、

スポーツジムばりに各種トレーニングマシンが

揃えられている“基礎体力訓練エリア”、

剣や槍などの扱いを学ぶ“武器格闘訓練エリア”、

魔法能力を伸ばすための“魔法技術訓練エリア”、

座学やシミュレーターなどで冒険知識を増やすための

“戦略エリア”の、4エリアに分かれている。


3階は基礎体力訓練エリアの延長であり、

主に悪路走行訓練を実施するためのフロアだ。

足元に人工的なぬかるみを作り出して走ったり、

地震中でもバランスを取れるように体幹を鍛えたり、

高壁をよじ登ったり、狭い通路をすり抜けたりと、

ダンジョン探索能力を向上させる目的の場である。


4階には男女別の温水プールがあり、

水泳で全身の体力強化を図るだけでなく、

単純に遊び目的で利用してもよいとされている。

そろそろ夏休みが始まる。

やはりここにも連日多くの生徒が訪れるのだろう。


5階は弓や銃などの射撃訓練場となっており、

免許を持っていない者は立ち入ることができない。

遠隔武器の使用は今年解禁されたばかりなので

現在はごく一部の生徒専用のフロアであるが、

年月が進むにつれて利用者が増えてゆくはずだ。




茜は飛び切りの本気スマイルを浮かべ、

隣に立つ隼斗の腕に抱きつきながら話しかけた。

彼は他校の生徒ながらもはるばる埼玉から駆けつけ、

訓練場の完成を共に喜んでくれたのである。


「隼斗さん、ありがとうございます!

 これでアタシたちも一流の冒険者を目指して

 本格的な訓練に取り組むことができます!

 それもこれも、関東の皆さんがうちを訪問して、

 改善のきっかけを与えてくれたおかげです!」


「ああ、どういたしまして

 ……と言いたいところだけど、

 俺自身は何もしてないんだよな

 こうなるように仕向けたのは安土で、

 実際に動いたのは鷹宮社長なんだ

 創立当初は徐々に施設を増やす計画だったのが、

 信頼できる部下に学園の運営を任せていたら

 今まで何もしてこなかった件に驚愕したそうだ

 これからは社長自ら舵取りをするそうだから、

 この学園はようやく冒険者の養成所としての

 第一歩を踏み出したって感じだな」


「へえ、そんな経緯が……

 それでも、ありがとうございます!」


「ああ、どういたしまして」


と、いい感じに締め括ろうとしたところへ

イケ好かないメンズが口を挟んできた。

ちなみに安土桃太郎のことだ。

彼も訓練場の完成を祝いに……

否、他に目的があるのだろう。


「やはり関東の訓練棟と比べると見劣りするな

 規模も小さいし、設備もショボい

 お前の大好きなサンドバッグを置いてないあたり、

 拳武器使いのようなニッチ需要を満たせるだけの

 余分なスペースを確保できなかったということだ

 だがまあ、突貫工事にしてはよくやった方だろう」


「ON」

「待て、不動さん

 今の君の実力じゃ返り討ちにされるだけだ

 気持ちはわかるが、落ち着こう」

「OFF」

「とりあえず銃専用の訓練スペースは関東には無いぞ

 その点においては、どの魔法学園よりも最先端だ

 ……ところで銃といえば、

 鷲尾さんが免許を持っている件は驚きはしないが、

 あの鷹宮がどうやって免許を取れたんだろうな?」


「そんなもの、替え玉に決まっているだろう

 全国で合格者100人以下の難関試験だったんだ

 あの頭の悪い鷹宮が実力で突破できたはずがない

 筆記も実技も別人が受験したと考えるのが妥当だ

 そうでなければ試験官に賄賂でも握らせたんだろう

 鷹宮皇帝(きんぐ)はそういうことを平気でやる男だ」


「記念すべき最初の試験で不正とはな……

 いくら人手が足りなかったとはいえ、

 日本冒険者協会の連中に試験監督を任せたのは

 大きな過ちだったと言えるな」


現在日本では、冒険者が魔物を討伐する目的で

弓矢、クロスボウ、火薬を使用しない銃器を所持及び

使用することが正式に認められている。

それは冒険者免許とは別に遠隔武器を取り扱うための

免許を取得した者のみに与えられた特権であり、

梓は仮免冒険者で唯一の銃免許保持者となっている。


鷹宮皇帝は試験官に賄賂を握らせて取得した口だ。




全校生徒&他校の生徒4名が一通りの見学を済ませ、

いよいよ実際に設備を使ってみる流れになった。

そして記念すべき利用者第一号は……


「さて、それじゃあ生徒会長であるこの僕が、

 みんなに訓練場の利用方法を教えてあげよう」


(鷹宮か……)(鷹宮かよ……)

(なんであいつなんだよ……)

(理解はできるが納得はできん)


生徒たちは内心苛立ちを募らせながらも、

とりあえず生徒会長の言葉に耳を傾けることにした。

思い切り反発の声を上げてやりたいところだが

鷹宮の背後に柳瀬と糸田が険しい表情で立っており、

おそらく人質を取られているであろう彼らのために

下手なアクションはしないよう控えていたのだ。


「とりあえず1階は普通の体育館だからいいとして、

 2階より上の設備を使いたい時は受付で登録して

 所定のコースを選ぶんだ」


鷹宮が手を振ると受付係がお辞儀を返し、

登録を済ませたかのような雰囲気を醸し出す。

肝心の登録方法は一切説明されていない。


「そうすると手の空いてる訓練官が出てきて、

 選んだコースに応じた内容の訓練メニューを

 マンツーマンで指導してくれるよ」


笑顔のマッスルマンが指導するふりをして、

鷹宮はその場で小走りを始めた。


(えっ、マンツーマン……?)

(どう考えても訓練官足りねーだろ)

(まさか予約制なのか……?)


「ただ、訓練官の人数には限りがあるから、

 どうしても予約制になっちゃうのは仕方ないね」


(やっぱ予約制かよ……!)

(なんでそうなるんだよ……!)

(自由に使わせろよ……!)


「これも君たちの安全を考えての措置なんだ

 この学園には今までこんなに大掛かりな訓練場が

 無かったから、いきなり全ての生徒が知識も無く

 思い思いの方法で訓練すると怪我人が出かねない

 そこで訓練のプロである方々にお越しいただき、

 安全且つ効率的なトレーニングを実践するために

 話し合った結果がマンツーマン方式なんだ」



呆れて物が言えない生徒たちを掻き分けて、

関東の生徒会長である鳩中が質問してみた。


「なあ、臨時の訓練官って何人雇ったんだ?」


「ん……

 たしか10人くらいだったかな

 いずれも魔法学園以外の冒険者養成機関で

 10年以上の実績を積み上げてきた優秀な人材さ」


「なら、各エリアに1人ずつ配置すりゃよくね?

 そんだけキャリアのある訓練官たちなら、

 集団に対する指導法くらい心得てるだろ

 よほど集中して育てたい生徒がいるならともかく、

 マンツーマン指導なんて非効率的だと思うぜ」


(おお、代弁してくれた!)

(ナイスだ関東の人!)

(人質の件を知らない強み……!)


「いや、もう決まったことだよ

 うちにはうちのやり方があるんだ

 ここは僕の学園なんだから、

 部外者は黙っててくれないか?」


「は? なんだその『僕の学園』って……

 お前はただの生徒会長だろ?

 運営してんのは鷹宮テクノロジーであって、

 お前に学園を私物化する権利は無いだろうよ」


「いや、君はわかってないなあ

 僕はその鷹宮テクノロジー社長の息子だよ?

 いずれ社長の座を継ぐ身なんだし、

 実質、僕の学園と言っても過言ではないんだ

 そんなこともわからないのか?」


「まだ継いでねえじゃん

 たとえ将来を約束されていようが、

 今のお前はただの生徒の1人なんだよ

 そんなこともわからないのか?

 ところでコース料金表見せてくれ」


「こっ……いや、なんのことだい!?!?」


さらりと痛い所を突かれ、鷹宮は取り乱した。

その件については、関東の連中が帰ってから

メール等でこっそり発表する予定だったのだ。


(え、今……料金表って……)

(金取るつもりだったのかよ……)

(関東じゃ絶対にやってないことだよなあ……)


鷹宮は過去にダンジョン入場料をせしめていた男だ。

訓練場で稼ごうと企んだとしてもおかしくない。

業界二番手の社長の息子だというのに、

いちいちやることがみみっちい男である。






結局その日は訓練場を閉鎖し、

鳩中、安土、鷹宮、臨時の訓練官、一部の職員たちは

鷹宮社長を交えて今後の展望を話し合うために

鷹宮テクノロジー本社へと向かった。


隼斗はどうせ暇だからと梓たちの冒険活動に同行し、

以前には見られなかった魔法ありの戦闘風景や

メンバー毎の役割分担を目の当たりにして、

着実にレベルアップしている件に満足するのだった。

そして無事帰還した後、関東からやってきた

もう1名の生徒と会話を交わす。


彼女はスタイル抜群の緑髪美人であり、

どこかエキゾチックな視線が独特の魅力を振り撒き、

一目惚れしてしまった男子は相当いたそうな。


「大上、座りバックしてもいいかしら?」


「バイクの後部座席に乗せればいいんだな?」


「ええ、そう言ったわ

 安土君と鳩中は会議が長引くそうよ

 だから先に帰っていいと言われたの」


「そうか、駐輪場で落ち合おう

 俺もすぐに向かう」


「了解

 あまり焦らさないでね」


「ああ、『待たせない』」


隼斗はやれやれといった表情で彼女を見送り、

梓たちに別れの挨拶を──


「隼斗さん

 今の女は何者ですか?

 名前と住所を教えてくださいよ」


茜の冷たく燃える視線に、隼斗は既視感を覚えた。

女子から好意を持たれるのは嬉しいものだが、

なぜこうも特殊な方向の相手ばかり……


「妙な勘繰りはしないでくれ

 以前にも言ったが、俺に彼女はいない

 今のは亀山千歳(かめやまちとせ)という同級生で、

 君たちも聞いたことがあるんじゃないか?

 昔、鷹宮に轢き逃げされた被害者だよ

 彼女は敢えて加害者に自分の姿を見せつけて

 揺さぶりをかけるつもりだったんだが、

 鷹宮は彼女の顔を全然知らなかったようで、

 とんだ無駄足だったと嘆いていたよ」


すると茜の表情が柔らかくなり、

それは亀山への疑いが晴れたことを意味していた。


(女連れでここに来るのはやめよう……)


そう誓い、隼斗は中央魔法学園から立ち去った。

生徒情報


氏名:鳩中剣 <ハトナカケン>

所属:関東魔法学園3年1組

役割:切込隊長


武装①:サンダーバード

武装②:阿修羅リミックス


魔法①:サンダーボール(雷属性攻撃+感電)

魔法②:ヒール(HP回復)


宿星:ワズン

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