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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
20/33

20.存在意義

『ひっかく』

その名の通り、鋭い爪で敵を引っ掻きまくるという

サラマンダーの近接物理攻撃だ!

ちなみにサラマンダーは硬い外殻に覆われているので

背面からの攻撃に強く、敵に囲まれても安心だ!


『ゴロゴロアタック』

団子のように丸まったサラマンダーが

地面を転がりながら敵を攻撃するという、

移動と攻撃を兼ねた便利な必殺技だぞ!

あまり転がりすぎると目を回してしまうので注意だ!


『ファイヤー!』

身に纏った炎を敵に向かって放出する魔法攻撃だ!

今はまだ火の粉をばら撒く程度のアクションだが、

成長すれば自由自在に爆炎を操れるようになるぞ!

たぶん、そうなると思うぞ!



『風の刃』

お次はシルフィードの魔法攻撃だ!

離れた相手を斬りつけるというシンプルな性能で、

安土流剣術奥義・剣風の魔法版といった感じだ!

もう語ることがないぞ!


『風の壁』

味方の周囲一帯を魔力の風で包み込み、

敵からの魔力攻撃を遮断するという防御技だ!

味方から敵への魔法も通さなくなるので注意だ!

とりあえず、マジックシールドの完全上位互換だぞ!


『追い風/向かい風』

風向きを操ることで敵味方の移動速度を調整したり、

投石などの遠隔物理攻撃の軌道を変えたりと、

テクニカルな使い方ができるサポート技だ!

扇風機としても利用できそうな気がするぞ!



『レッドサイクロン』

サラマンダーとシルフィードの協力必殺技だ!

炎の竜巻で敵を斬り裂く超強力な魔法攻撃だが、

魔力の消耗が激しいので1日1発しか放てないぞ!

強敵相手の切り札だ!


『ヒートアップ』

もう1つの協力必殺技だ!

とはいえ一時的に気温を上げるだけの地味な技で、

一見すると利用価値が低そうに思われがちだ!

しかし、これが非常に使えるのである!


「気温が高いほど音速は増しますからね

 鷲尾さんの音波銃との相性は抜群です

 ただでさえ強力な攻撃を更に強化できますよ

 完全に鷲尾さんをアシストするためだけの魔法……

 さすがは中村君、やりますねえ」


「葉加瀬はまたそういうこと言う……

 お前、実は結構恋バナ好きだろ?

 なんかキャライメージが崩れちまうが、

 なんだかんだで10代半ばの少年だもんな……」


「ええはい、僕だって男の子ですからね

 人並みに性欲はありますし、

 自分自身の嗜好は理解してます」


「ほーん、じゃあ聞かせてもらおうか

 お前がどんな趣味してんのかって話をな」


「僕は人工授精フェチですよ

 科学の力を駆使して絶対に妊娠させてやるという、

 強い意志を感じる行為にとても惹かれます

 告白だとか同棲だとか、そういう煩わしい手順を

 全部すっ飛ばして子孫を残せるのですから、

 無駄な時間を過ごさなくて済むのが利点ですね」


「ああ、お前のキャライメージが復活したよ」



リザルト


鷲尾梓:98匹

不動茜:44匹

中村誠:31匹

シルフィード:26匹

サラマンダー:23匹

佐原太陽:16匹

風間雛菊:0匹

葉加瀬文明:0匹


「……あの、ヒナさあ」


「ん、どったん茜?」


「いや、そろそろツッコむべきよね

 アンタ今まで1匹も魔物倒してない……ってか、

 本当に何もしてないよなあと思ってさ

 可愛いマスコットですら戦っているというのに、

 このままでいいのかなと……」


「いやいや、自分が出る幕も無いしねえ

 そもそも冒険者目指してるわけじゃないし、

 これからも葉加瀬君と同じ非戦闘員扱いでいいよ

 一応、荷物持ちはしてるし……」


「葉加瀬は活動方針決めたり、関所で手続きしたり、

 魔物のデータ提供したりと裏方で活躍してるでしょ

 ヒナの場合は本当にただついてきてるだけで、

 正直言って存在意義がわからないレベル」


「うわ、辛辣!

 そんな言い方しなくても……!

 自分だって、なんで一緒にいるのかわからないよ!

 どうしてダンジョンなんかにいるんだろう!」


「えっ……?」


「え、あれ……?

 本当に、なんでここにいるんだっけ?

 なんか流されるままにしてたらいつの間にか……

 ねえ、わっしー

 どうして自分なんかをパーティーに誘ったの?」


「ヒナの一人称が『自分』だからです

 当時の私は『自分もダンジョンに行きたい人間』

 を探していたので、最初に声を掛けたのです

 今となっては解釈の誤りを理解していますが、

 特に問題は無いとしてこれまで放置してきました

 ヒナは迷惑に思っていたのですか?

 もしそうならば、私はヒナに謝らねばなりません」


(( しょうもない理由だった……!! ))


「あ……いや、べつに迷惑とか思ってないよ

 だから安心して……とりあえず、うん……」


「そうですか、安心しました

 これからもよろしくお願いします」


「ああうん、よろしく……ね」


(こいつ、また流されとる……)






翌朝、ヒナはいつもより早く目を覚ました。

午前4時58分。二度寝する時間はたっぷりある。

が、なんだかそんな気にはなれなかった。

昨日の『なんでここにいるんだっけ』という、

自分自身の言葉が何度も頭をよぎるのだ。


現役バスケ選手の父と現役バレー選手の母との

間に生まれ、物心つく前からボールを持たされ、

ひたすら血反吐を吐くような練習を強要され、

強制的に入れられたチームが試合に勝ったとしても

反省点を責められるだけで、褒められたことはない。

それもこれも『将来お前が成功者になるため』で、

娘への深い愛情ゆえに厳しくしているのだという。


そんな気はしなかった。

本当に愛している娘を『ノロマ』だの『カス』だの、

ゴミクズを見るような眼差しで罵るだろうか?

突き指をして泣き喚く娘を引っ叩くだろうか?

熱中症で倒れた娘の腹に蹴りを入れるだろうか?

とても両親から愛されていたとは思えない。


教師に相談しても『あなたは期待されてるのよ』。

警察の人間は最初こそ親身になってくれるものの、

親が有名人だとわかると掌を返して『躾の一環』。

マスコミに垂れ込んだ時には美談扱いされてしまい、

両親は『将来のエースを育てる現役選手夫婦』として

ますます周囲からの評判がよろしくなってしまった。


だから逃げたのだ。


親の愛、成功者のレール、周囲からの期待、

理不尽な暴力、自由の無い人生、プレッシャー……。

そういった全ての煩わしさから解放されるために、

スポーツとは無縁の環境に身を投じたのである。


目的を達成した今、何をすればよいのかわからない。

まるで抜け殻の気分である。

とりあえず毎日制服を着て学園に通い、

友人たちと放課後を過ごして生きている。

ただ、それでも楽しいのだ。

なんの主体性も無く流されるままの人生であっても、

過度な期待をされていたあの頃よりは幸せである。


もうずっとこのままでいいと思っている。

反面、そろそろ何かするべきだとも思っている。

複雑な心境なのだ。


梓の『一人称が自分だから』発言には参った。

あの子はこちらに全く期待していなかったのだ。

もしもパーティーに誘ってきた理由が

『体が大きいから』などであったならば、

場合によっては縁を切っていたかもしれない。

まったく、変な子と出会ってしまったものだ。


あの子のために何かするべきだろうか?

今の自分に何ができるだろうか?


答えは出ない。


とりあえずせっかく早く起きてしまったのだし、

久々にランニングをしてみるのも悪くない。




その日の放課後、ヒナは梓に尋ねた。


「あのさ、この……

 電磁加速シューズの使い方教えて?」


「はい、ではまず起動しましょう

 円周率を小数点以下13桁まで音声入力してください

 誤作動を防ぐ目的で、口にする機会が少ない数列を

 起動用パスワードに設定しておきました」


「設定の変更って可能だよね?

 起動する度にカンペ見るのは効率悪いし、

 もっとこう、『起動!』とか短くした方が……」


「『起動』は大上先輩が使用しています

 今後、彼と活動を共にした場合に

 誤作動を起こす可能性があるので、

 同じパスワードは避けるべきです」


意中の人物の名を聞いたせいか、

テンション高めの茜が横から口を出す。


「いっそのこと、ゲストモードじゃなくて

 専用装備化すればいいんじゃない?

 アタシね、隼斗さんから教えてもらったの!

 生体認証とか設定すれば、登録者以外が装備しても

 真価を発揮することはできないんだってね!

 ついでだからアタシのも専用化しちゃおうよ!」


「電磁加速グローブの話をしているのですか?

 それは茜の所有物ではありませんよ

 あくまで私が貸している物であることを

 忘れてはなりません

 専用化するという案は悪くありませんね

 もし茜がよからぬ使用方法を企んだとしても、

 私と葉加瀬君は強制解除コードを知っているので

 茜の暴走を阻止することが可能です」


「なんかアタシが暴走する前提……!!」


「私は冗談を言ったのです」


(( わっしーが冗談を言った……!! ))



梓と葉加瀬が専用化の設定をしている最中、

茜はヒナの心変わりについて尋ねてみた。


「もしかしてアタシの発言が原因?

 その、昨日はごめんね

 存在意義がわからないとか言い過ぎたよね

 煽っておいてなんだけど、焦らなくていいよ

 ヒナは冒険者目指してないんだし……」


「う〜ん……

 まあ、気にしないで

 存在意義がわからないのは自分も同じだし、

 べつに焦ってるわけじゃないんだ

 きっと今回も流されてるだけなんだろうけど、

 なんかこう、悪い流れではない感じがする

 自分に何ができるのか、何をしたいのか……

 それを見つけるためにも少し頑張ってみるよ」


「おお、ヒナが覚醒しよった……

 後に“The 神風”と呼ばれる風間雛菊の伝説は

 今この瞬間、始まったのであった──」


「勝手に変な設定作らないで!?」




その後、専用化の処理を無事に済ませて

電磁加速グローブの登録者は不動茜、

電磁加速シューズの登録者は風間雛菊となった。


茜はてっきり憧れの隼斗さんと

同じ入力方法にするのかと思いきや、

起動時は『ON』、終了時は『OFF』と、

敢えて別の音声を設定することにした。

まあ、彼女なりに何か考えがあっての選択だろう。


ヒナは起動時に『加速』、終了時に『減速』と、

スピードを意識した音声入力に設定しておいた。

やはり靴なので走るイメージを連想しやすく、

移動速度に直結するのでそうしたのだろう。


「ヒナ、いきなり全力で走らないでくださいね

 先日のインプのように、壁に激突して死にます

 それからジャンプする時も気をつけてください

 屋内では天井に頭を打ちつけて死にますし、

 屋外では着地時の衝撃で全身を骨折するか、

 あるいはそのまま落下死する危険性があります」


「何それ超怖いんだけど!!

 自分、やっぱり頑張るのやめようかなあ!?」


「校庭を走るなりして、加速状態に体を慣らしてから

 ダンジョンへ向かった方がいいですね

 まあ、準備運動だと思ってください」


とんでもないハズレ装備を掴まされてしまった。

そう後悔しながら校庭を駆け回るヒナであった。

生徒情報


氏名:風間雛菊 <カザマヒナギク>

所属:中央魔法学園技術者クラス1-A

役割:未登録


武装①:電磁加速シューズ

武装②:中央魔法学園女子制服


魔法:未登録


宿星:スピカ

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