18.取り巻き
生徒会室に3名の男子が集まった。
1名は生徒会長である鷹宮皇帝。
他2名は柄の悪い2年生であり、
柳瀬と井戸田という強面コンビだった。
ヤナセ・イトダ。
やなせいとだ。
嫌な生徒だ。
奇跡的に『名は体を表す』を地で行く2人だ。
「んで、俺らになんの用っスか?
インプすら倒せないザコ会長さん」
「あんま時間取らせないでくださいよ
お漏らししながら命乞いしてたヘタレ会長さん」
先日の不正調査以降、鷹宮の評判は更に悪くなり、
インプすら倒せずお漏らししながら命乞いしていた
という事実が全校生徒に伝わっていた。
こうして下級生から舐められるのも当然である。
「いや、違う!!
そんな事実は無い!!
僕はお漏らしなんてしてないぞ!!
根拠の無いデマに惑わされるんじゃあない!!」
「なんだこいつ、往生際悪りいなぁ
ビデオがあんだよビデオがよお〜
たたた弾切れだあああ、とか叫んでたじゃねえか
みっともないったらありゃしねえよ」
「び、ビデオだって!?
まさか隠し撮りか!?
そんなの犯罪だぞ犯罪!!
警察に訴えてやる!!」
「あんた本当に馬鹿なんだな……
調査員は事実の調査が仕事なんだから、
証拠映像くらい撮影すんだろうよ
それに俺らの制服にもカメラ付いてんだし、
オメーの醜態を撮らねえ奴なんざいねえよ」
「制服にカメラ……!?
くそっ、ふざけんな!!
……いや、違うんだ聞いてくれ!!
その映像は捏造なんだ!!
僕は嵌められたんだ!!
ドラマの自主制作に協力してくれと頼まれて、
仕方なく演技してあげてやっただけで──」
「ごっちゃごちゃゴチャゴチャうっせえなあ!!!
オメーの言い訳なんざどうでもいいんだよ!!!
俺らを呼び出したのはなんのためだよ!!!
さっさと用件を言えやクソ会長さんよお!!!」
鷹宮は強面2人の迫力に気圧され、
思わず身を引いて椅子ごと倒れそうになった。
が、なんとかバランスを取って転倒を回避。
とりあえずこれ以上この2人を怒らせてはいけない。
そう心に留めて会話を再開する。
「ああ、えっと……
とりあえず2人とも落ち着いてくれ
平和的に話し合おう、暴力はよくない
暴力は何も生み出さないんだ
君たちはそれをわかってない
僕のように平和を愛する心を持つべきだ」
柳瀬は固く握った拳を振り上げた。
「ヒイィッ!?
ま、待った!!
違う!! 違うんだ!!
まま、待て待て待て!!
用件!! 用件を言う!!
君たちの力を借りたい!!
もちろん報酬は出す!!」
「ァア〜ん?
俺らに何させる気ダぁ?」
「まあ予想はつくけどな
で、報酬いくらよ?」
「あ、その……
僕の悪口を言ってる奴がいたら、その、
ちょこっとだけ懲らしめてもらえないかなあと……
二度と僕を馬鹿にしないと誓わせる程度に、
そして外部の人間から問題視されない程度に、
ちょうどいい感じの半殺しをやってもらいたい
他人の悪口を言うのは悪いことだからね
生徒会長として見過ごすわけにはいかないし、
これもみんなが正しく生きるために必要な教育だよ
僕は生徒思いなんだ」
「んだよ、結局暴力で解決しろって話だろ?
何が平和を愛する心だよ、このクズ野郎が」
「俺らを呼び出した時点でわかってたぜ
んで、報酬の話をしようや」
「その、報酬といっても現金払いじゃなくて、
君たちの将来を約束するという方向でいいかな?
ほら、僕はいずれ社長の座を継ぐ人間だし、
たとえ能力の低い人材であろうと
コネで入社させるなんてこと朝飯前なんだ」
「おい、テメェ……
今なんつった……?」
「能力の低い人材だと……?
いちいち煽ってきやがんな……」
「ああっ、違う違う違う!!
君たちのことを言ったんじゃない!!
例えば、例えばの話さ!!
早とちりするのはやめたまえ!!
とにかく、いつか僕が社長になったら
君たちに特別なポストを用意してやれる!!
鷹宮テクノロジーの管理職だぞ!?
このBIGなチャンスを無駄にしてはいけない!!」
「鷹宮テクノロジーの、ねえ……」
「管理職とか微塵も興味ねえや」
「おいおいおい、何を言ってるんだ!?
業界二番手の大企業なんだぞ!?
あの不破開発のライバル企業なんだぞ!?
人生の勝利者にしてやろうと言ってるのに、
一体何がそこまで不満なんだ!?」
「一方的に不破開発をライバル視してるだけだろ?
1位と2位の開きが大きすぎんだよ
3位以降の企業と業績はそれほど変わらないし、
鷹宮テクノロジーにこだわる必要はねえな」
「最近はブラックな噂をよく聞くようになったし、
将来どうしても装備品メーカーに勤めてえなら
他のクリーンな企業を選ぶのが賢い選択だろうが
はっきり言って鷹宮テクノロジーは泥舟なんだよ」
「泥舟……だと?
おいおい、何か大事なことを忘れてないかい?
君たちの父親はその泥舟で働いてるじゃないか
その給料から食費やらなんやらの生活費を出して、
これまで君たちを育ててきたんだろう?
お父さんが仕事を失ってもいいのかな?」
「なっ……テメェ!!
親父は関係ねえだろうが!!」
「人質取って脅迫するとか……
こいつ正真正銘のゲス野郎だぜ」
鷹宮皇帝は手下を2人獲得した!
早速、柳瀬と井戸田は行動を開始した。
まずは自身の所属している冒険者クラス2-Aにて、
わざわざ皆の見ている前で気弱な眼鏡君を締め上げて
同級生たちに恐怖を植え付けることにしたのだ。
いちいち1人ずつ脅して回るよりも時間効率が良く、
被害者を最小限に抑えられるという算段である。
「おい、胸倉を掴むのをやめるんだ柳瀬君!!
井戸田君も顔が近すぎるぞ!!
眼鏡君が一体何をしたというんだ!?」
「ァア〜ん?
なんだ邪魔すんじゃねえよ委員長さんよぉ
眼鏡君、こいつはなぁ……
鷹宮さんの動画観て笑ってやがったんだぜ?」
「他人の醜態を嘲笑うなんざ、
人としてやっちゃいけねえことだよなあ?
鷹宮さんだって人間なんだ
傷付けていいはずがねえだろ」
「君たちも笑ってただろ!?
ついさっき、30分前までは!!
それになんだ、その……『鷹宮さん』って!?
空白の30分間に一体何があったというんだ!?
まあ大体、想像はつくけども!!」
「いいかテメェら!!
もし今後、鷹宮さんを笑う奴がいたら
眼鏡君と同じ目に遭わせてやっからな!!」
「他のクラスの連中にも伝えとけ!!
それから3年と1年の奴らにもだ!!
鷹宮さんを馬鹿にすんじゃねえってなあ!!」
「くっ……!!
柳瀬君、井戸田君……!!」
きっと彼らは人質でも取られているのだろう。
そう思った同級生たちは迅速に行動し、
その日のうちに全校生徒への連絡が済んだのである。
それから3日後、
柳瀬と井戸田は再び生徒会室に呼び出された。
「さて、君たちの働きで僕への悪口は止んだ
だけど、それだけじゃだめなんだ
例の映像を持ってる奴が大勢いるだろう?
それを全部消してもらいたいんだ
ネットにアップされた物は職員に消させてるが、
元を断たない限りは永遠にイタチごっこだ
そこで君たちの出番というわけだよ」
「それは……無理なんじゃねえっすかねえ?」
「ギルドが保管してる映像はどうしようもねえな」
「なっ……しまった!!
それがあったか!!
くそっ、どうすれば……」
(なんで忘れてんだよ……)
(何も考えてねえな、こいつ……)
「ま、まあ、とにかくだ
ギルドの方はあとで対処するとして、
学園の連中が持ってる映像には手が届くだろう?
それをどうにかするのが君たちの仕事だ
あんなインチキ映像を後世に残してはならないんだ
将来、僕から社長の座を奪おうとする者にとっては
強力な武器にもなり得るからね
僕はそこまで未来を見据えて行動しているのだよ
悪意の芽は早めに摘み取っておくに限る」
「へいへい、やりますよ」
「どうせ逆らえないしな」
教室に戻った2人は皆の前で眼鏡君を締め上げ、
とりあえず同級生全員のスマホを没収した。
「柳瀬君、井戸田君!!
眼鏡君の胸倉を掴むのをやめるんだ!!
それから、眼鏡に指紋を付けるんじゃあない!!」
「邪魔すんじゃねえ委員長!!
こうするしかねえんだよ!!
眼鏡君には悪いと思ってるがなあ!!」
「おい、例の映像をPCに保存してる奴!!
明日までに全部消しておかないと、
眼鏡君と同じ目に遭わせてやっからなあ!!」
「柳瀬君、井戸田君!!
眼鏡を掛けてない人には効果が薄い脅しだぞ!!
何か、何か他の方法は無いのか!?」
「今考えてる!!
どうすりゃいいんだよ、くそっ!!」
「とにかく酷い目に遭わしてやんよ!!
他のクラスの連中にはそう伝えとけ!!」
「わかったよ、上手く伝えておく!!」
同級生たちが上手く伝えてくれたことにより、
その日のうちに学園関係者が持っている例の映像は
ほとんど消去することができた。
そう、全てではない。
学園職員の私用PCにまでは手が回らないし、
中には映像の消去を拒んだ1年生たちもいたのだ。
彼らの主張は『パーティーの活動記録』であり、
鷹宮の醜態をメインに撮影された物ではない。
念のためその映像を確認させてもらったが、
たしかに鷹宮の姿はチラリとしか映っておらず、
真剣に冒険活動に取り組んでいる証拠であった。
それに不動茜の勇姿がバッチリ撮れている。
これを消してしまうなんてとんでもない。
「どうします、先輩方?
僕としては残しておきたいんですが、
仲間に危害が及ぶようであれば消去しますよ」
「う〜ん、どうする井戸田?
肝心の場面が映ってるわけじゃねえし、
放っといても問題ねえとは思うが……」
「徹底的に潰しておいた方がいい気もするが、
真面目にやってる奴らの邪魔はしたくねえしなぁ
とりあえず保留ってことにしとくか?」
こうして梓たちの活動記録は処分を免れたのだ。
生徒情報
通称:柳瀬&井戸田 <ヤナセ&イトダ>
所属:中央魔法学園冒険者クラス2-A
役割:力と技のコンビネーション
武装①(柳瀬):山賊サーベル
武装②(柳瀬):山賊の鎧
魔法(柳瀬):ライジングフォース(攻撃強化+増幅)
武装①(井戸田):海賊カトラス
武装②(井戸田):海賊の鎧
魔法(井戸田):ヴェクサシオン(攻撃弱体+拘束)
宿星:カストル&ポルックス




