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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
16/33

16.これがKINGの実力だ!

残り2分というところで鷹宮皇帝(きんぐ)が戻ってきた。


「鷹宮君

 制服の下にメビウスを装備していますね

 袖からはみ出ていますよ

 身の潔白を証明するチャンスだというのに、

 なぜ指示に従わないのですか?

 いい加減、大人を舐めるのはよしなさい」


開幕ダメ出しである。

ますます疑惑が確信に変わるだけだというのに、

鷹宮は平気でそういうことをできる奴なのだ。

本人はバレないと思っていたのだ。


「あ、いや、違いますよ!

 これはよく似てるけど、ただのインナーです!

 ほら、今日は肌寒いじゃないですか!

 僕は冷え性なんですよ!

 今朝の体温なんてマイナス10度くらいでした!」


そして、すぐにバレる嘘をつける男。

それが鷹宮皇帝なのだ。

頭が悪いのである。


もうこいつは完全にクロだ。

調査員はそう断定して調査終了を告げようとしたが、

意外にも被害者の中から待ったの声が上がる。


「まあ、べつに着ててもいいんじゃないですか?

 どうせ鷹宮が何を装備してようが、

 戦力に大きな影響が出るとは思えませんし

 つうか、そいつがどんな戦い方すんのか

 ちょっと見てみたいんですよね」


「鷹宮が魔物と戦ってるとこ……というか、

 訓練してる姿すら見かけたことがありません

 下手したらスライムに殺される可能性もあるので、

 保険をかけといて損は無いのでは?」


スライムにやられる弱さ……。

調査員は鷹宮ならそれもあり得ると判断し、

メビウスの着用を許可して調査を続行するのだった。




第1層。

入り口周辺にはレッドスライムが6匹おり、

進行の妨げとなるので当然始末することになった。

そこで梓たちは上級生から声を掛けられ、

一番槍を務める名誉を譲ってもらった。

まあ、雑用を押しつけられた感が強いが。


梓は仲間にハンドサインを送り、

茜、中村、佐原の3名を前線へと送り出す。


「おっ、あの1年……

 火の玉の餌食だな」


上級生たちは機動力の高い中村を見て、

迎撃されるという予測を立てながらニヤついた。

だが、予測は外れた。

中村は放たれた火の玉をヒョイとかわし、

勢いを維持したまま敵を斬り裂いてまずは1匹撃破。


「なんだ、経験者か」


なぜかガッカリされながらも中村の進撃は続く。

2匹目、3匹目も同じ要領で難なく撃破してゆき、

これにて北側通路を塞ぐ邪魔者はいなくなった。


「おい、あの子さ……

 もしかして不動茜じゃねえ!?

 ほら、ピンクミサイルの!!」


「あ、本当だ!!

 同じ学園にいたんだ!?」


「あとでサインくれるかなあ!?」


ファン……なのかどうかは知らないが、

ギャラリーの声援を受けながら茜が戦闘開始。


「スイッチオン!!」


ジー、パチパチ。

寂しい演出と共に茜の攻撃力が跳ね上がる。


「死ねぇ!! オラァ!!」


パァン!パァン!と、打撃にやや強いはずの魔物が

まるで風船のように破裂する光景を目の当たりにし、

上級生たちは困惑の表情を浮かべるしかなかった。


「スイッチオフ!!」


「こ、こっちも片付きました!!」


誰も注目していなかった佐原も無事に仕事を終え、

これにて東西の通路が開拓されたのであった。



上級生たちは少し焦っていた。


(この1年、俺らより強いんじゃ……?)

(いやいや、相手は赤スラだぞ?)

(でも動きに迷いがなかったというか……)

(スライムのあんなやられ方は初めて見た)


差がつくのは当然だった。

この上級生たちは月に1回程度のペースでダラダラと

低レベルのダンジョンを適当に探索していたのだが、

梓たちはこの1ヶ月間ほぼ毎日学園ダンジョンに潜り、

魔物の討伐に目的を絞って活動してきたのだ。


梓たちは、ダンジョン入場回数も実戦経験も

既に上級生たちを上回っていたのである。




せっかく茜ちゃんが開拓してくれたのだから、と

冒険者たちは西側通路を進むことにした。

すると、ビンゴ。

本日の目的である新種の魔物と遭遇できたのだ。


「さて、皆さん

 鷹宮君の戦闘に影響が出ないように、

 あの魔物がどんな性質をしているのかという

 ネタバレは厳禁でお願いします

 一応、名前だけは教えておきましょう

 “インプ”です、以上!」


その魔物は痩せ細った子供のような体に

老人のような顔を持ち、背中にはコウモリのような

翼が生えているという、いかにもRPGの序盤に

登場しそうな悪魔系モンスターの外見をしていた。

一言で表すならば、「弱そう」である。


「では鷹宮君、初めてインプと戦った時の

 再現を行なってください」


「はいはい、やりますよ」

(なんだ、随分と小っせえ魔物じゃねえか

 全然大したことなさそうだし、これなら楽勝だな

 ま、俺様の強さを見せつけてやるとしますかね)


鷹宮はホルスターから銃を抜き、

インプに狙いをつけて引き金を引いた。


チュン!と発射されたのは光弾であった。

ただし科学エネルギーを撃ち出したのではなく、

使用者の魔力を変換させた弾丸である。


“捕食者(プレデター)”。

鷹宮テクノロジー製の魔道工学銃だ。


(チッ、外した……!)


チュン!チュン!チュン!と連射するが、

鷹宮の攻撃は標的に当たらない。

光弾が当たる前に素早く左右へ回避されてしまう。

苛立ちを隠せない鷹宮に対し、

調査員は呆れた顔をしながら話しかけた。


「鷹宮君、あなたは全然理解していませんね

 私は『初めて戦った時の再現』を求めています

 未知の魔物と対峙した際、まずは攻撃よりも

 他にやることがあるでしょう?

 ふざけてないで、報告書通りにやってくださいよ」


「え、はあ?」

(なんだこいつ、戦闘中に話しかけんじゃねえ!!

 くそっ、集中できねえだろうが!!

 俺の攻撃が当たらないのはこいつのせいだ!!)


未知なる魔物との戦いでは、まず解析魔法(アナライズ)。

それは新入生ですら理解している基本中の基本だ。

だというのに鷹宮はその基本をすっ飛ばし、

チュンチュンと無駄な発砲を続けるのだった。


当たるわけがない。

この魔物は攻撃魔法と同じ速さで回避するのだ。

素の状態で攻撃魔法を当てるのはまず不可能だが、

凍結や拘束などの状態異常で足止めすれば解決する。

……と、攻略法が報告書には書かれている。

鷹宮の魔力弾も攻撃魔法と認識されているので、

足止め無しで撃ちまくっても当たるわけがないのだ。



無駄な発砲を開始してから10分ほどが経過し、

鷹宮とインプの距離がだいぶ近くなっていた。

インプは回避行動をしながらも徐々に接近し、

ケタケタと笑いながら鋭い爪を鷹宮に見せびらかす。


「ほら、鷹宮君

 そろそろ本気出さないとヤバいですよ〜

 鷹宮君が提出したとされる報告書によれば、

 爪攻撃でホークシールドを破壊されたそうですね

 今あなたは盾を持っていませんし、

 直撃を喰らえば大変なことになっちゃいますよ〜」


「えっ、えっ、そんな……!!」

(やっべええええ!!!

 なんだよそんなの聞いてねえよ!!!

 もっと早く教えろやボケェ!!!)


「あ、でも制服の下に無敵のスーツを着ているので、

 露出している頭部を攻撃されなければ平気ですね」


「やっ、えっ……!?」

(頭攻撃されたらやべええええ!!!)


その時、流れが変わった。

いくら鷹宮が引き金を引いたところで

カチ、カチ、と虚しい音が響くだけであり、

銃口から魔力弾が発射されることはなかった。


「た、たたっ、弾切れだあああ!!!

 うわあああああああ!!!

 誰かっ!!! 誰か俺を助けろおおお!!!

 早くしろおおお!!! 急げえええ!!!」


そして命乞いである。

なんと情けない姿だろうか。

観衆たちはその醜態をニヤニヤしながら見守り、

誰一人として助けに入ろうとする者はいない。


「どうしたんだお前ら!!!

 早くあいつをやっつけろよ!!!

 俺を見殺しにする気かよ!!!

 この人間の屑共が!!!

 いい加減にしないとぶっ殺すぞ!!!」


などと威勢の良い啖呵を切ってはいるが、

鷹宮は涙目であり、声も体もガタガタに震えていた。

その上腰を抜かして地面にへたり込んでおり、

それになんだかアンモニア臭まで漂ってくる始末だ。


「あ〜、鷹宮君

 彼らはあなたを助ける気が無いのではなく、

 助ける必要が無いから動かないだけですよ

 それから戦闘中に敵から目を離さないでくださいね

 ほら、インプをよく見てください」


「…………へ???」


調査員に促されて前方に目を向けると、

ついさっきまで目と鼻の先にいたインプが

壁際まで後退しているではないか。

この不可解な状況に、鷹宮は首を傾げるばかりだ。


「別の報告書にはこうも書かれています

 『インプは声に反応して後退する』とね

 つまり、『あ〜』とか声を出しながら近づけば、

 敵の接近を阻止できるというわけです

 この情報が出回ってから5ヶ月経っていますが、

 鷹宮君はそれすら知らずにいたようですね

 とても勉強不足であると言わざるを得ません」


呆然とする鷹宮。

腹を抱えながら爆笑する上級生たち。

やれやれと溜め息を吐く調査員。

これはどうしたものか。


「……さて、インプを倒してお開きにしましょう

 ですが鷹宮君は弾切れのようですし、

 誰か代わりに倒してやってくれませんか?」


その提案に、一同の注目が一点に集まる。

1年生チームで一番背の高い風間雛菊である。

彼女なら何かやってくれそうだ。

一体どんな戦い方をするのだろう?

期待感が高まる。


「えっ……

 いや、ちょっ、自分は戦えないです!!

 でもこの子!! この子すごいから!!」


と、キラーパスを梓にパスするファインプレー。

観衆たちは「まあ、いいか」という雰囲気になり、

結局梓がトリを飾ることになった。


「目標を殲滅します」


パシュン!と、仲間には聞き慣れた発砲音。

そして次の瞬間にはインプの頭部が弾け飛び、

その恐ろしい攻撃力を観衆に見せつけたのだ。


ちなみに、インプは梓の攻撃にやられたのではない。

音波と同じ速さ、つまり秒速340mで後退した結果、

壁に激突して自爆したのである。

人間の肉声でも同じことができそうだが、

鷹宮が叫んだ時とは明らかに移動速度が違った。

おそらく音の密度などが関係しているのだろう。






──調査の結果、鷹宮皇帝は新種の魔物の

発見ボーナスを不正受給していたと断定され、

その日のうちに口座から被害額が引き出され、

正当な受給者たちに支払われることとなった。


不正に関わった職員の調査は後日行われるそうで、

おそらく今回も職員だけが処分され、

肝心の鷹宮はお咎め無しになるのだろう。

いくら国内の冒険者をまとめ上げているギルドでも、

生徒に関する人事権までは持っていないのだ。

その判断は各魔法学園の運営に委ねられており、

正しい選択をしてくれることを信じるしかない。


まあ、してくれないのだろうが。

生徒情報


氏名:鷹宮皇帝 <タカミヤキング>

所属:中央魔法学園冒険者クラス3-A

役割:KING


武装①:プレデター

武装②:メビウス


魔法:非公開


宿星:バテンカイトス

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