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進め!魔法学園3  作者: 木こる
殺戮機械
11/33

11.生徒会長

所変わり、関東魔法学園。

その敷地周辺を大勢のマスコミが取り囲み、

学園職員たちが定型文を繰り返しながら押し返す。

マスコミの中には梯子を使って塀を乗り越えるという

ルール無用な輩も存在し、3名の逮捕者が出ている。

去年の8月以降、ずっとこんな感じだ。


彼らはそこまでして何を得たいのか……?

まあ、名倉友紀に関する情報だろう。

いくつもの世界が統合したことにより引き起こされた

大規模な社会的混乱、名倉事変の重要人物である。

彼は完全に被害者の立場なのだが、

『名倉のせいで世界がおかしくなった』と考える輩が

一定数存在しており、加害者扱いされることも多い。

現象の名前だけで判断する阿呆が多いという証拠だ。


その名倉がここにいる。

関東魔法学園3年1組所属、名倉友紀。

彼は連日のマスコミによる攻撃に悩まされていた。


「なあ、名倉〜

 いっそあの連中にビシッと言ってやったらどうだ?

 『僕はただの行方不明キャラなんだ!』ってよお」


「なんだよ行方不明キャラって!?

 そんなキャラ属性は初めて聞いたんだけど!!

 鳩中君の発想にはいつも驚かされるばかりだよ!!

 いっそ君がビシッと言ってきなよ!!

 目立つの好きでしょ!?」


「いやあ〜、それがな……

 オンエアされなかったんだよなぁ

 やっぱ本人が言わないとだめっぽい」


「実行済み……!!

 行動力高いなあ、さすがは生徒会長!!

 ……じゃあ安土君!!

 君がマスコミ追い払ってきてくれないかな!?

 イケメンの君がカメラに映ればみんな喜ぶよ!!

 それに伯父さんの会社の宣伝にもなるでしょ!?」


「なぜこの俺がお前の指図を受けねばならん

 あまり前に出過ぎれば俺の価値が下がる

 会社の宣伝は社員の仕事だ、俺には関係無い」


「期待はしてなかったけど、やっぱりだめか……

 じゃあ大上君!!

 あの時の話をマスコミに語るのはどう!?

 ほら、君も京都での戦いに参加したんでしょ!?

 行方不明だった僕が発見される1日前の出来事!!

 テレビに映ってないのは君だけだよ!!

 話題を掻っ攫えるよ、きっと!!」


「悪いな名倉

 俺も昔、マスコミに追い回された経験があるんだ

 あの連中とは二度と関わりたくない

 ところで話は変わるんだが、

 中央魔法学園に面白い新入生がいるんだ

 遠隔武器の使用が解禁された最初の年で、

 いきなり原石を発掘してしまったかもしれない

 ダイヤモンドの原石をな……」


「へえ、どんな新入生なんだ?」

「中央魔法学園だと……?」


「ほら、大上君には話題を掻っ攫う力がある!!

 しかもクールな安土君まで食いついてる始末!!

 それをあの連中にやってもらいたいんだけど!!」


「その子は音波を発射する銃の使い手でな

 武器自体の性能も非常に強力なんだが、

 それを使いこなせるだけの優れた射撃能力と

 超人じみた五感の持ち主なんだ」


「おおっ、そりゃたしかに期待大だな!」

「鷹宮テクノロジーが支配している学園か……」


「そろそろ再訪問してみようと思うんだが、

 もし興味があったら一緒に来ないか、亀山さん?」


「女子に話しかけてたんかーい!!」

「やめとけ、その学園には亀山を轢いた奴がいる」


「それなら猪瀬さん、どうかな?

 誰でもいいから女子をバイクの後ろに乗せたいんだ

 将来、彼女が出来た時に備えておきたい」


「大上お前、女の扱いわかってねえなあ!!」

「なぜ俺のパーティーメンバーから選ぶ……」


「ええよ〜、大上君」

「よし、決まりだな」


「まさかのOKキターーー!!」

「リーダーの俺に断りもせずに即答か……」


名倉から完全に話題を掻っ攫った隼斗は、

今週末に名古屋へ向かう計画を立てた。






そして土曜日、中央魔法学園は大騒ぎとなった。

正門前には生徒のみならず職員までもが押し寄せ、

本日の来客を今や遅しと待ち侘びる。

その人混みはほとんど女性で構成されており、

まるで男性アイドルの出待ちをしているかのような、

異様な熱狂が現場には蔓延していた。


イケメン安土桃太郎。

……と、他3名。


京都の難関ダンジョンを制覇したイケメン英雄が、

はるばる埼玉からやってくるというのだ。

彼を生で拝める貴重なチャンスを逃す手はない。


と、ここでまずバイクに乗った男女が正門に到着。

大上隼斗と猪瀬牡丹(いのせぼたん)である。

隼斗は安土と間違われないようにヘルメットを脱ぎ、

そのまま駐輪場までバイクを押していった。


「はえ〜、ごっつい人集りやね

 安土君目当ての女子(おなご)がこんなにも……」


「京都での一戦後、インタビューを受けて

 あいつの顔が全国に知れ渡ったからなあ

 今や名倉やアキラさんに次ぐ話題の人だ」


「大上君もインタビュー受ければよかったやん

 男前なんやし、絶対人気出たで」


「教室でも話した通り、マスコミは苦手でね

 もう充分に有名人気分を味わったよ

 それより猪瀬さん、急いだ方がいい

 お父さんと会う約束をしてるんだろ?」


「ああ、そうやったそうやった

 ほな大上君、また明日な!」


猪瀬の目的は、幼い頃に離れ離れになった

実父との再会であった。

父の所在地は半年以上前に知ることができたが、

いつ会いに行こうかと悩んでいたところへ

名古屋行きの話が持ち上がったので、

これを絶好の機会と捉えて便乗したのである。


猪瀬を見送った直後、正門から黄色い歓声が上がる。

安土桃太郎のご到着だ。



タクシーから降りた安土は大量の女性を前にしても

顔色一つ変えず、人混みを掻き分けながら進む。


「キャー! モモ様ー!」

「こっち向いてー!」

「無視されちゃった♡」

「だが、それがいい!」


それは関東魔法学園でも見慣れた光景であり、

ファンたちは彼に無視されるという行為を

一種のプレイとして受け止めていた。

全国共通なのだ。


そしてもう1人、タクシーから降りてきた男子は

満面の笑顔を浮かべながら大手を振って歩く。


「やあやあ、どうもどうも!!

 みんな出迎えありがとう!!

 どうもどうも、ありがとう!!

 ウッヒョ〜〜〜!!

 こいつぁ気持ちいいぜぇ〜〜〜!!」


関東魔法学園生徒会長、鳩中剣(はとなかけん)。

呼ばれてないのに参上だ。

安土目当ての女性たちに笑顔を振り向くその姿は、

まるで悲しきピエロである。


(あいつのメンタルすごいな……)


イケメンの安土でもなく、努力家の隼斗でもなく、

有名人の名倉でもなく、彼が生徒会長に選ばれたのは

この鋼のメンタルと友人の多さが要因なのだろう。




出待ちのファンたちを引き連れながら、

安土と鳩中は中央魔法学園の敷地を練り歩いた。

行く先々でファンが勝手に解説してくれるが、

特に興味を引かれるような情報は得られない。


校舎は……一般の高校と同じような作りだ。

校庭は……一般の高校と同じような作りだ。

食堂は……一般の高校と同じような作りだ。

体育館は……一般の高校と同じような作りだ。

守衛室は無い。芸術棟も無い。訓練棟すら無い。

タワーは無くても仕方ない。


「おいおい、安土……

 ここも魔法学園なんだよな?

 うちとは大違いだぜ

 こんなんで冒険者を育てられるのか……?」


「俺に聞かれてもな

 まあ、俺にも思うところはある

 関東より多少グレードが下がる程度だと

 予想していたが、これはさすがに……」


恐ろしいまでに一般の高校。

まあ技術者クラスがあるので工業高校寄りだが、

とにかく冒険者の養成所としてはまず不合格だ。


「一応、訓練場はあるみたいだぜ

 そこはまともであってくれよな〜」



その願いは儚く散った。

狭い屋内には古びたカカシと的があるだけで、

落書きだらけの仕切り板はベコベコに歪んでおり、

役目を果たせないであろうことは一目瞭然だ。


「安土……

 こうゆうの、なんつったっけ?

 ほら、漢字2文字で……」


「杜撰(ずさん)」


「それよそれ!

 何もかもが杜撰なんだよ!

 こんなの魔法学園じゃねえ!」


「鷹宮テクノロジーが労働者を確保するために

 建てられた学園だって話だからな

 冒険者よりも技術者の育成に力を注いでるんだ

 まあ、それに関しても黒い噂がある

 現場実習と称して生徒をタダ働きさせて、

 人件費を大幅にカットしているとかなんとか……

 それが学習目的なら無給でも違法にはならないが、

 会社に利益をもたらすための生産活動はアウトだ

 鷹宮テクノロジーはそのへんを上手くやっていて、

 限りなくブラックに近いグレーといったところだ

 世の中に魔道工学を完全に理解している人間が

 非常に少ないという点が原因だと云われている」


「おお、安土が俺に解説してくれたぜ……

 とりあえずやべえ学園ってことだな!」


「そうだ」




鳩中は中央の訓練官から修練用ソードを借り、

ボロボロのカカシに向かって必殺技を放った。

せっかくよその学園に来たのだし、

自分たちの学園との違いを比べたかったからだ。


「行くぜっ、ダッシュ斬り!!」


もう技名のまんまである。

するとカカシはスッパリと真っ二つになり、

訓練場にはとても気まずい空気が流れる。


「げっ、やっべえ……!!

 す、すんません!!

 俺やっちゃいました!!

 こんなはずじゃ……加減はしたんですが!!」


鳩中が強いのか、カカシが弱いのか、

とにかく訓練場の備品が1つ使い物にならなくなった。

鳩中は青褪め、訓練官はマニュアルを探しに走り、

安土は涼しい顔で修練用ソードを拾い上げた。



「安土流剣術奥義──剣風」



安土は見えない斬撃を連続で飛ばし、

残りのカカシを全て真っ二つにした。

しかも縦にだ。


「キャー!! 何今の見た!?」

「あんなに離れてたのに!!」

「達人……剣術の達人だわ!!」

「私も斬られてみたい……!!」


そんなファンたちの明るい反応とは正反対に、

鳩中はますます青褪めて大慌てするのだった。


「おいおいおいおい安土ぃぃぃ!!

 お前何やってんの!?

 全部壊しちゃだめだろぉ!?

 せめて1体くらい残しとけよお!!」


「この程度の攻撃で壊れるカカシが悪い

 いっそ全部壊して新調した方が後進のためになる

 安心しろ鳩中、鷹宮テクノロジーは儲かってるんだ

 弁償しろだなんてみみっちい要求はしないだろう

 そもそも学園の備品が破損した場合、

 生徒が弁償せずともよいルールは全国共通だ

 お前も生徒会長なら、それくらい覚えておけ

 まあ、今マニュアルを探しに行った訓練官はゴミだ

 設備だけでなく人間までこの有様とは恐れ入った」


「な、なんだ弁償しなくていいのか

 つい慌てちまったよ……

 それにしても酷い環境だよなあ

 よその学園ボロクソに言いたかないけど、

 いっそ学園ごと新調しなきゃだめなレベルだぜ」


その時、突然ファンの群れがざわめき出し、

左右に分かれて通り道を作った。

道の先には伊達眼鏡を掛けた男子が立っており、

その表情から激怒しているのは明らかであった。


「お前、このっ…………安土桃太郎!!!

 なんてことしてくれるんだ……!!!

 わかってんだろうなあ!?

 弁償だぞ弁償!!!

 カカシ1本につき1000万払え!!!」


「うわっ、みみっちい要求キターーー!!

 なんだよあいつ……すごく小物臭がする!!」


すると安土はニヤリと笑い、

みみっちい男子と向かい合うのであった。


「鷹宮皇帝(たかみやきんぐ)──

 中央魔法学園の生徒会長

 鷹宮テクノロジー社長の息子

 そして昔、飲酒運転で亀山を轢いたゲス野郎だ」

生徒情報


氏名:鷹宮皇帝 <タカミヤキング>

所属:中央魔法学園冒険者クラス3-A

役割:KING


武装①:プレデター

武装②:メビウス


魔法:非公開


宿星:バテンカイトス

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