歓迎の少女 後編
最初に料理へ手を伸ばしたのはセレナだった。
ぱくり。
もぐもぐ。
その瞬間。
目が輝く。
「おいしい」
「でしょ!」
アディがなぜか誇らしげだった。
セレナは次の料理へ向かう。
また食べる。
また目が輝く。
さらに次。
さらに次。
完全に夢中だった。
「セレナちゃん」
アディが苦笑する。
「料理は逃げないからゆっくり食べていいのよ?」
セレナは口いっぱいに頬張ったまま頷いた。
「あと口」
アディがナプキンを取る。
「ほら汚れてる」
口元を優しく拭く。
「ん」
セレナの開いたコップに気付くアディ。
「おかわりするでしょ?どれがいい?」
ドリンクメニューをセレナの前に持ってくる。
完全に母親だった。
セレナはされるがままである。
一方。
ウェルト。
ぐびっ。
酒を飲む。
ぐびっ。
さらに飲む。
そして。
「かぁーーーーーっ!!」
テーブルへグラスを置いた。
「生き返る……」
ゾイは苦笑しながら料理を食べる。
「まあ、お疲れ様」
「分かってくれるか」
「少しだけね」
その言葉だけで救われた気がした。
料理を食べながら談笑する一同。
テーブルの上から皿が少しずつ減っていく。
そんな中。
ウェルトが立ち上がる。
少し酒が入っている。
顔も赤い。
だが目は真面目だった。
「改めてだ」
全員の視線が集まる。
ウェルトはセレナを見る。
そして笑った。
「俺のチームへようこそ」
「歓迎するぜ」
セレナは少し目を丸くした。
歓迎。
その言葉を噛み締めるように小さく頷く。
「うん」
「これでうちのチームも評価が上がっていくといいなぁ」
ゾイがそう言う。
セレナは首を傾げた。
「評価?」
「ああ」
ゾイが説明を始める。
「チームには各々ギルドから評価が付いてるんだ」
「実績や依頼達成率なんかでポイントが増える」
「評価が高いほど信頼されるし、難しい依頼も受けられるようになる」
「報酬も良くなるよ」
セレナは納得したように頷いた。
「アディ達のチームは?」
そう尋ねる。
アディは胸を張った。
「中級より少し上ってところかしら」
「実績もあるし、それなりに有名よ」
「へぇ」
セレナは感心した。
そして次にウェルトを見る。
「ウェルトは?」
その瞬間。
ウェルトは酒を一口飲んだ。
そして遠い目をする。
「あー……」
嫌な質問だった。
「俺のとこは下の下だ」
「え?」
セレナが驚く。
ウェルトは肩を竦めた。
「だってゾイ戦えねぇし」
「裏方専門だし」
「実質ずっと俺一人で戦ってたからな」
ゾイは苦笑した。
「ウェルトがチームメンバー全然増やさないからでしょ」
アディが即座に突っ込む。
「誘っても全然来ねぇんだよ!」
悔しがるウェルト。
「だが!」
ウェルトはグラスを持つ。
酒を一気に飲み干す。
「ぷはぁ!今は違う!」
大きな声だ。
「お前が入った!」
「つまり!」
「ここからが俺達の時代だ!!」
どんっ!
テーブルを叩く。
店員がちらっと見る。
アディは額を押さえた。
「もう酔ってるじゃない」
ため息だった。
ウェルトは気にしない。
上機嫌である。
だがアディの表情は少しだけ真面目になった。
「でも実際」
そう言ってセレナを見る。
「私はまだセレナちゃんの実力を見てないのよね」
「実力?」
「ええ」
アディは頷く。
「ウェルトのことは信頼してる」
「でもセレナちゃん自身がどんな戦い方をするのかは知らないのよね」
少し考える。
そして。
「ねぇウェルト」
「ん?」
「明日、合同で依頼受けない?」
アディが提案する。
「いいぞ」
即答するウェルト。
「早っ」
アディが驚く。
「断る理由がないからな」
ウェルトは笑う。
「合同なら受けられる依頼の幅も広がる」
「むしろ助かる」
「決まりね」
アディは満足そうに頷いた。
「うちのチームのメンバーにも何人か声をかけておくわ」
そう言って笑った。
そうして、また食事が始まる。
歓迎会はまだ続いている。
――
そして、セレナの歓迎会が終わり全員が帰路についた。
アディを家まで送る。
「セレナちゃんと別れたくない!今日は泊まってって~」
セレナに抱きついて離れないアディ。
「明日も同行するんだろうが!さっさと帰れ!」
ウェルトに怒られながら渋々と帰るアディ。
「バイバイ」
そういいながら小さく手を振るセレナ。
「セレナちゃ~ん!」
全力で両手で振り返すアディ。
彼女も相当酔っているようだ。
「さぁ、俺達の家に帰るぞ」
ウェルトはそう言ってセレナの頭をぽんと撫でた。
セレナは小さく頷く。
「うん」
そうして、3人で帰宅。
「さぁ、とりあえず明日に備えて風呂入って、歯磨きして、さっさと寝るぞ」
そう言いながら鍵を開け、ドアを開けるウェルト。
「ウェルトがお風呂先に入りなよ。結構動き回ったんでしょ」
ウェルトに続きゾイが玄関に入りながら喋る。
ふと何かを思い出し、玄関前で止まるセレナ。
「どうした?セレナ」
その動きに気付いたウェルトはセレナに問いかける。
―さぁ、俺達の家に帰るぞ―
ここはもうセレナの家になった。
ふと思い出す。
一番最初にマーサに教えてもらった大切な言葉
自分の家に帰ってきたら言う言葉
「ただいま」
その言葉にゾイとウェルトは顔を見合わせる。
そして少し笑いながらセレナの方を向いた。
「おかえり」
その言葉を聞いてゆっくりと玄関に入るセレナ。
長い1日は終わった。
セレナがお風呂後の歯磨きをしてリビングに入る。
ウェルトはお酒のせいかお風呂から上がるとすぐに寝ていた。
ゾイは明日の準備をしているようだ。
自分の部屋のドアを開ける。
改めて自分の部屋を見ながらベッドに座る。
ベッドの横に置いたマーサの写真を見る。
「おやすみ」
そう言うとアディから貰ったぬいぐるみを抱きゆっくりとベッドに寝転がり静かに目を閉じる。
明日からはセレナの本当の意味でギルドの一員としての日々が始まる。




