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歓迎の少女 前編

家を出る頃には、すっかり夜になっていた。


街には無数の灯りがともっている。


昼間とはまるで違う景色だった。


「じゃあ出発するぞー」


運転席へ乗り込むゾイ。


助手席にはアディ。


そして当然のように。


セレナはアディの膝の上だった。


「アディ、すっごい笑顔だね」


「最高」


アディは即答した。


満面の笑みだった。


セレナは首を傾げる。


意味が分からない。


ちなみにウェルトは荷台だった。


「なんで俺だけ外なんだよ」


「ピックアップトラックだからね」


ゾイがエンジンをかける。


二人乗り。


どうしようもない。


ウェルトは諦めた。


「それじゃ、しゅっぱーつ!」


アディが拳を前に出す


「おー!」


セレナもそれに合わせるように拳を前に出した。


車が走り出す。


夜の街を抜ける。


昼間とはまるで違う景色だった。


店の看板。


街灯。


窓から漏れる光。


人々の笑い声。


色とりどりの灯りが夜を照らしている。


セレナは窓の外を見つめた。


ずっと。


飽きることなく。


流れていく景色を追い続ける。


「気になる?」


アディが聞く。


セレナは小さく頷いた。


「昼と違う」


「でしょ?」


アディは嬉しそうに笑う。


夜の街は夜の街で綺麗なのだ。


やがて車は目的地へ到着した。


木造の大きな飲み屋だった。


店の前には暖簾が下がっている。


「着いたぞー」


ウェルトが荷台から降りる。


乱れた髪を整える。


「さぁ、店に入るぞ」


店内は客でいっぱいだった。


「相変わらず人気ね。席空いてるかしら?」


アディは少し不安そうに店の中を見渡す。


「大丈夫だ」


そういうとウェルトが店員を呼ぶ。


すると店員がすぐに近付いてきた。


「いらっしゃいませ」


「ウェルトで予約してる」


「ああ、お待ちしておりました」


「え、予約してたの!?いつの間に!?」


アディは驚いた様子だ。


「昼間の買物してる間にな」


「さすが!」


ゾイがウェルトを褒める。


(普通にできる男でときめいてしまった、不覚だわ!)


アディは自分自身の顔が少し赤くなってることに気付き両手で顔を覆いながらも後ろからウェルトを睨んだ。


案内されたのは奥のテーブル席だった。


全員が腰を下ろす。


店員がメニューを配る。


ウェルトは自分の分を開く前にセレナへ渡した。


「ほら」


セレナは受け取る。


写真付きのメニューだった。


料理が全部載っている。


「好きなの頼め」


「これとかおすすめよ」


アディが横から覗き込む。


「写真見て気に入ったやつでいいわ」


セレナは真剣な顔でページをめくる。


未知の世界だった。


その様子を確認してから。


ウェルトは少しだけ身を乗り出した。


「なぁゾイ」


「ん?」


「今日の支払い頼む」


「は?」


ゾイが固まる。


ウェルトは真顔だった。


「今日、服と化粧品以外俺持ちだ。」


涙目だった。


ゾイは察した。


なんとなく察した。


「あー……」


納得した。


「……歓迎会だしな」


ゾイはため息を吐く。


「今回は出すよ」


「神か」


ウェルトは両手を合わせた。


セレナはまだメニューに集中している。


聞こえていない。


それでよかった。


今日は歓迎会なのだから。


注文が終わる。


しばらくすると料理が運ばれてきた。


肉料理。


魚料理。


揚げ物。


サラダ。


スープ。


テーブルが一気に賑やかになる。


そして飲み物も届いた。


ウェルトとアディの前には酒。


ゾイの前には炭酸ジュース。


セレナの前には甘い果実ジュースだった。


「よし」


ウェルトがグラスを持つ。


アディも持つ。


ゾイも持つ。


するとアディがセレナを見る。


「セレナちゃんも持って」


セレナは素直にコップを持つ。


「こう」


アディは少し前へ掲げた。


セレナも真似をする。


「そうそう」


ウェルトが立ち上がった。


軽く咳払いする。


「それじゃあ」


三人がセレナを見る。


セレナは少し緊張した。


ウェルトは笑う。


「セレナのチーム加入を祝って」


グラスを掲げた。


「乾杯!」


「乾杯ー!」


「乾杯」


三人のグラスが前へ出る。


そして。


コツン。


コツン。


コツン。


セレナのコップへ優しく触れた。


「……?」


セレナは不思議そうな顔をする。


アディが笑った。


「お店でご飯食べる時は最初にこうするのよ」


「そうなんだ」


「そうなの」


セレナは小さく頷いた。


そして歓迎会が始まった。

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