表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/47

防衛戦の少女 前篇

戦闘が始まろうとしていたその頃――。


オートマタの大軍のはるか後方を、一台のジープが土煙を上げながら走っていた。


「あの土煙……間に合った?」


運転席のゾイが前方を見据えながら呟く。


ウェルトは双眼鏡で戦場を確認すると、険しい表情を浮かべた。


「とはいえ、このまま近づいたところであの大群に蜂の巣にされるだけだ……どうする」


重苦しい空気が流れる。


その時だった。


「いい案があります」


後部座席のレナードが静かに口を開いた。


「このまま山の向こう側へ行ってください」


「山の向こう?」


ウェルトは眉をひそめる。


「そんなことをしてどうする。まさか歩いて山を越える気じゃないだろうな。さすがにあの山は無理だぞ」


「いえ、違います」


レナードは首を横に振る。


「このまま進めば古い廃教会があります。まずはそこを目指してください」


理由は分からない。


だが、このまま正面から突っ込めば全滅するだけなのも事実だった。


「……分かった。ゾイ」


「了解」


ゾイはハンドルを大きく切り、レナードの示した方向へ車を走らせる。


しばらくすると、本当に一つの建物が姿を現した。


千年以上前に建てられたであろう石造りの教会。


壁は崩れ、屋根もところどころ抜け落ちている。


それでもなお、その姿は今も静かにそこへ佇んでいた。


ジープを教会前へ停めると、レナードは真っ先に車を降りる。


「ライトはありますか?」


ゾイは荷台から携帯ライトを取り出して渡した。


「ありがとうございます。では、皆さんもライトを持って私について来てください」


四人はそのまま教会の中へ入る。


内部も外観同様に老朽化していたが、よく見ると床や柱の一部には比較的新しい補修跡が残されていた。


三人が周囲を見回している間に、レナードは迷いなく一本の柱の前へ歩いていく。


床へしゃがみ込み、石畳を探るように触れる。


「あった」


次の瞬間。


ガコン、と鈍い音を立てて床の一部が持ち上がった。


その下には暗闇へと続く石階段が現れる。


「これは……」


ウェルトは驚きながら階段を覗き込んだ。


「着いてきてください」


レナードはライトを点け、そのまま地下へ降りていく。


ゾイは少し不安そうに苦笑した。


「……本当に大丈夫かな」


ウェルトは小さく息を吐く。


「ここで引き返すわけにもいかねぇ。行こう」


そう覚悟を決める。


一方、セレナはというと――


「……!」


少しだけ目を輝かせていた。


二人が躊躇している隙に、すでに階段を降り始めている。


「あいつはこんな状況でも変わらねぇな……」


ウェルトは苦笑しながらその後を追った。


地下通路は想像以上に広く、人一人が余裕で歩ける幅があった。


歩きながらレナードが説明を始める。


「実は私の会社のサラティー支社は、元々この街を治めていた王族の離宮を買い取って改装した建物なんです」


「建物の補修や耐震調査をしていた際、この地下通路を偶然発見しました」


「おそらく王族だけが知る秘密の避難路だったのでしょう」


「敵に防壁を突破された際、密かに城外へ脱出するための通路だったのだと思います」


ウェルトは感心したように頷く。


「なるほどな」


レナードは少し照れくさそうに笑った。


「本当はこの通路も整備して、歴史探検や地下アトラクションとして一般公開する計画だったんですよ」


「秘密の王族地下通路なんて、宣伝すれば人気が出そうですからね」


その言葉にゾイは思わず笑った。


「さすが商売人ですね」


「商売の種はどこにでも転がっていますから」


レナードも笑い返した。


そんな和やかな空気の中――


ズゥン……


地の底から響くような鈍い衝撃音が地下通路全体を揺らした。


天井から細かな砂がぱらぱらと落ちる。


ウェルトは表情を引き締める。


「……始まったな」


—————


場面はサラティー防壁。


オーズは双眼鏡を下ろし、砲台部隊へ視線を向けた。


「砲台はどうだ?」


「いつでも撃てます!」


砲兵が力強く返事をする。


オーズは頷き、前方のオートマタの群れを睨みつけた。


「どうせシールドで防がれるだろうが、撃たないよりはマシだ」


「射程に入り次第、一斉射撃を開始しろ!」


「了解!」


防壁に並ぶ砲台が一斉に砲身を敵へ向ける。


そして――


「射程内!」


「撃てぇ!!」


轟音が防壁を震わせた。


何門もの砲台が火を吹き、無数の砲弾が一直線にオートマタの先頭集団へ降り注ぐ。


しかし、その先頭にいたサソリ型オートマタが前へ出る。


鋭い両爪と長い尻尾を正面へ向けると、淡い光が展開され、大型のシールドが形成された。


次の瞬間。


ドォォォンッ!!


砲弾が次々と着弾し、爆炎と土煙が舞い上がる。


凄まじい爆発音が戦場へ響き渡る。


だが――


煙が晴れると、シールドには細かな波紋が広がっているだけだった。


砲撃はすべて防がれていた。


「やはりか……」


オーズは悔しそうに呟く。


すると今度は、そのサソリ型の後方で動きがあった。


中型の四足歩行型オートマタ。


その背中には巨大な砲塔が据え付けられている。


砲身がゆっくりと持ち上がり、青白い光が収束し始めた。


「来るぞ!」


誰かが叫ぶ。


直後――


眩い閃光と共に、巨大なビーム砲が放たれた。


一直線にサラティー防壁へ突き進み、シールドへ激突する。


ゴォォォォンッ!!


防壁全体が大きく震えた。


シールド表面に激しい光の波紋が走る。


しかし、防壁そのものへの被害はない。


こちらもシールドによって守られていた。


互いにシールドを持つ両軍。


砲撃を放っては防がれ、撃ち返されては防ぐ。


戦場は膠着状態へと入っていく。


それでも、オートマタの群れは歩みを止めなかった。


砲撃を続けながら、一歩、また一歩と防壁との距離を詰めてくる。


その圧倒的な物量を前に、城壁の上に立つ戦士たちは、無言のまま武器を握り締めていた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ