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足跡の少女

すべてが終わると、セレナは何かに気付いたように、じっと周囲を見回した。


そして、ウェルトの方へ歩み寄る。


「……」


ウェルトは、セレナが何か言いたそうにしていることに気付いた。


「どうした?」


セレナは少しだけ考えるように周囲を見たあと、倒れたオートマタの方を指差した。


「……足跡がたくさんある」


「足跡?」


ウェルトはセレナの指差した方向へ視線を向ける。


そして、すぐにオートマタの残骸へと駆け寄った。


その周辺には、無数の足跡が残されていた。


人間のものではない。


大きさも形も、先ほど戦ったオートマタのものと一致している。


間違いなく、オートマタの足跡だった。


しかも――


一つや二つではない。


無数の足跡が、同じ方向へと続いている。


ウェルトはその先へ視線を向けた。


「……」


足跡が続いている方向。


それは、自分たちがこれから向かおうとしている街――


サラティーの方角だった。


「まさか……」


ウェルトの表情が変わる。


すぐにゾイの乗るジープへ向かって走り出した。


その様子を見たゾイも、ただ事ではないと察する。


「ウェルト?」


ゾイはすぐにジープを発進させ、ウェルトの側まで車を寄せた。


窓を開ける。


「どうしたの?」


ウェルトは走りながら、車へ近付く。


「サラティーがヤバいかもしれない」


「え?」


「すぐにサラティー方面と連絡を取れるか?」


ゾイはすぐに端末を取り出した。


そして、サラティーのギルド支部へ通話を試みる。


「……」


呼び出し音が続く。


しかし。


「……」


一向に繋がらない。


ゾイの表情が険しくなる。


「駄目だ、繋がらない」


「最悪だな……」


ウェルトは低く呟いた。


そしてすぐにゾイを見る。


「とりあえずグランドル側に連絡を入れろ」


「わかった」


ゾイはすぐにグランドルのギルド支部へ通話を繋いだ。


今度はすぐに繋がる。


画面には、グランドルのギルド職員の姿が映し出された。


「こちらグランドルギルド支部です。シルバーラビットフットのゾイ様、どうされましたか?」


ゾイはすぐに端末をウェルトへ渡した。


ウェルトは端末を受け取る。


「俺はシルバーラビットフットのリーダー、ウェルトだ」


「緊急連絡だ」


職員の表情が変わる。


ウェルトは続けた。


「現在、俺たちはグランドルからサラティーへ向かっている」


「道中でオートマタと接敵した」


「その周辺に、無数のオートマタの足跡が残されていた」


ウェルトは足跡の続いていた方向へ視線を向ける。


「すべてサラティー方面に続いている」


「サラティーのギルド支部にも連絡を試みたが、繋がらない」


「サラティーがオートマタの群れに襲撃されている可能性がある」


職員の顔から、明らかに血の気が引いた。


「……!」


ウェルトはさらに続ける。


「至急、応援を要請する」


「軍にも連絡を入れてくれ」


「わかりました。すぐに報告します」


職員は慌ただしく端末へ視線を落とす。


「シルバーラビットフットはどうされますか?」


ウェルトは少しだけ考えた。


そして、サラティーの方角を見る。


「俺たちは単独で行けるところまで行ってみる」


「危険です!」


「分かってる」


ウェルトは落ち着いた声で答えた。


「だが、状況を確認しないことには何も始まらない」


職員は一瞬黙った。


そして、静かに頷く。


「……わかりました」


「無理はしないようにしてください」


「ご武運を」


通話が切れる。


ウェルトは端末をゾイへ返した。


そのやり取りを、後部座席から見ていたレナードは、状況を理解し始めていた。


ただの護衛任務ではなくなった。


サラティーで何かが起きている。


そして、今から自分たちは、その街へ向かおうとしている。


ウェルトはレナードへ振り返った。


「……レナードさん」


「はい」


「もしかしたら、もう護衛任務どころじゃなくなるかもしれない」


レナードは黙ってウェルトの言葉を聞いていた。


「サラティーが、オートマタの群れに襲われている可能性がある」


「俺たちはこのまま、街の状況を確認しに行く」


「もちろん、危険はある」


ウェルトは一度言葉を止めた。


レナードはしばらく黙っていた。


やがて、ゆっくりと首を横に振る。


「……大丈夫です」


「皆さんがどのような仕事をしているのかは、理解しています」


レナードは窓の外へ視線を向けた。


その先には、サラティーへ続く荒野が広がっている。


「それに、あの街には私の部下たちもいます」


「彼らを見捨てる気など、私にもありません」


ウェルトはレナードの顔を見つめた。


その表情に迷いはなかった。


「……そうか」


ウェルトは小さく頷く。


「分かった」


「では、サラティーへ向かいます」


「はい」


ウェルトは車のドアを開け、助手席へ乗り込む。


セレナは後部座席へと。


「セレナ」


「……うん」


「この先、何があるか分からない」


セレナは静かに頷く。


ウェルトは一瞬だけ目を細めた。


そして、前を向く。


「頼むぞ」


ゾイもアクセルを踏み込んだ。


ジープが荒野を駆ける。


目指すは、南の街――サラティー。


だが。


その街で、何が起きているのか。


まだ誰にも分からない。


ただ一つだけ確かなことがある。


無数のオートマタが、同じ方向へ向かっている。


そしてその先には――


サラティーがある。


三人と一人を乗せたジープは、荒野を走り続けた。


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