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空腹の少女

オートマタの残骸の横。


少女は黙々とサンドイッチを食べていた。


一口。


また一口。


さらに一口。


どうやら口に詰め込みすぎたらしい。


少女は慌てることもなくウェルトから渡された水筒を持ち上げる。


ごくっ。


ごくっ。


そして飲み込んだ。


「……ふぅ」


ようやく一息つく少女を見ながら、ウェルトは頭を掻いた。


「つまりあれか」


少女は二個目のサンドイッチに手を伸ばす。


「三日も飲まず食わずで荒野を歩いてたのか?」


食事に集中したい少女は答える代わりに小さく頷いた。


「なんでそんなことになったんだよ……」


ウェルトは呆れたように言う。


そして二個目を食べ終わった少女は口を開く


「食料買うの忘れてた」


「いや、忘れたなら買いに戻れよ」


「一日で行けるかなって」


たしかに少女が出発した街からウェルトの街までは車で一日で行ける距離である。


「なんで三日も荒野を歩いてるんだよ。」


ウェルトは不思議そうに言う。


「乗合バスに乗らなかったの?」


つづいてゾイが語りかける。


「バス停の場所がわからなかった」


「地図持ってないのか?」


その言葉に少女は立ち上がった。


戦闘前に放り投げた鞄へ向かう。


オートマタの残骸を横切り、砂まみれになった鞄を拾い上げると再び戻ってきた。


そしてウェルトの前にしゃがみ込む。


鞄を開く。


ごそごそと中を漁る。


しばらくして一枚の紙を取り出した。


「ある」


そう言って差し出されたそれを見て、ウェルトは固まった。


地図だった。


ただし。


何度も開いては閉じたのだろう。


端は折れ曲がり。


所々しわだらけ。


「なんで地図があってこんなところにいるんだよ。」


「わからなかった」


「何が?」


「見方」


呆気にとられるウェルト。


すかさずフォローに入るゾイ。


「えっと、地図の見方がわからなかったてこと?」


「そうかも」


顔に手をやり大きく息を吐くウェルト。


少女はウェルトの服を引っ張った。


「ん、どうした?」


少女は少しだけ間を置く。


「サンドイッチ」


「……」


「もっと欲しい」


ウェルトは空を見た。


「....ゾイ、お前の分もくれてやれ」


「えー!?」


ウェルトは少女の行動に呆れながらも付近にあるオートマタの残骸に目をやる。


三日も飲まず食わずの体力の落ちた状態でたった数十秒で三体のオートマタを撃破する実力。


その圧倒的実力は文句のつけようがなかった。


この少女は、間違いなく異常だった。


そして――


ウェルトは無意識に考えていた。


(こいつを、うちのチームに入れられないか)


「とりあえず、討伐報告をさっきギルドにしたから、もう少したらギルドが確認に来るよ」


ゾイはそう言いながら自分のサンドイッチを少女に渡す。


「あぁ、すまん。すっかり忘れてた」


ウェルトがゾイに向かって謝罪する。


‐―


そして、セレナが最後のサンドイッチを食べ終わる頃。


「……来たか」


ウェルトの見つめる先には砂煙とエンジン音が響く。


ギルドの回収部隊だ。


討伐報告は必ず現地確認が入る。


虚偽報告を防ぐため。


そしてもう一つ理由がある。


オートマタには“マザー”と呼ばれる、残骸を回収、修理を行い。また戦場へ投入する自立型再生兵器がいる。


だから回収は必須だった。


砂煙を上げながら、一台の車が停止した。


扉が開く。


そこから降りてきたのは、いかにも“ギルド職員”といった雰囲気の青年だった。


整った制服。


細いフレームの眼鏡。


タブレットを抱えたまま、周囲を確認するように歩いてくる。


「……討伐お疲れ様です。ウェルトさん」


「おう、早かったな」


「それでは、さっそく……」


青年はオートマタの残骸を見て、目を細めた。


「これは……本当に、あなた方が?」


「も、もちろん!」


ギルドから貰える報酬はギルドの人間にしか払われない。


つまりギルドに所属していない少女が討伐したとバレれば今回の報酬は一切払われない。


ここはなんとしてでも嘘を突き通さなければならない。


職員もウェルトの実力をある程度は知っている。


だからこそ、この切断面や破壊された跡は彼の装備では難しく思えた。


とはいえ、他には車の荷台で水を飲む少女と、同じチームに所属するゾイしか見当たらない。


消去法的にはウェルト以外は無理だと考えた職員は怪しむのをやめた。


「わかりました。このまま回収してギルド支社のほうで報奨金をお支払いします」


「そうか、じゃあ街に戻ろうぜ」


ウェルトはホッとしながらも自分達の車に歩く。


そして荷台に座る少女に近づく。


「おい、えーっと名前はなんていうんだ?」


少女はゆっくりとウェルトの顔を見る。


「セレナ=クレイン」


「セレナか」


「うん、マーサが付けてくれた」


「マーサ?」


「私に自由を教えてくれた人」


「そうか、俺はウェルト=シャーリー、んでそっちはゾイ=ソートマンだ」


そう言うとゾイは運転席から後ろを振り返り手を振った。


「とりあえず行くあてはあるのか?」


ウェルトはセレナの横に座り語りかける。


首を横に振るセレナ。


「特に決めてない」


「だったらとりあえずは俺達の街へ連れて行く?ここにおいて帰るのはさすがにね」


ゾイが二人の会話に入ってくる。


「っというかだ、うちのチームに入らないか?」


ウェルトはついに本題を切り出す。


「ウェルト!?正気?この子をうちのチームに入れるの?」


ゾイは驚いた様子で語りかける。


「ゾイも見たろ?セレナのあの動き。正直俺なんて足元にも及ばないぞ」


「それは、たしかに」


ゾイもウェルトの言葉に納得してしまった。


あの戦闘能力があれば自分達のチームはもっと難易度の高い依頼を受けれる。


それだけセレナの能力は魅力的なのだ。


「もちろん無理強いはしない。だが、ギルドに入って依頼をすれば金も入ってサンドイッチだっていつでも食べれるぞ?」


「!!」


目を輝かせるセレナ。


これはもう一押しだ!っと確信するウェルト。


「とりあえずお試しでどうだ?」


お試しにすることでチーム加入のハードルを下げる。


そしてついにセレナの口が開く。


「いいよ」


「それじゃあ、よろしくなセレナ。」


ウェルトはセレナに対して手を差しだす。


セレナは持っていた水筒を荷台に置くとウェルトの手を掴み軽く握手をした。





誤字脱字があったらすみません。

国語そんな優秀じゃないもので^^;

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