通話の少女
モールへ到着する。
ウェルト。
ゾイ。
セレナ。
そして。
なぜかアディ達もいる。
「なんでお前らもいるんだ」
ウェルトが聞く。
「当然でしょ」
アディは胸を張る。
「セレナちゃんの初端末よ?」
「歴史的瞬間じゃない」
「意味が分からねぇ」
ウェルトがドルスを見る。
助けを求める視線。
ドルスは諦めた顔だった。
「アディに聞いてください」
「お前も諦めてんじゃねぇか」
コールも肩をすくめる。
「俺らも巻き込まれたっす」
端末ショップ。
店員が奥から箱を持ってくる。
「お待たせしました」
「ご注文いただいていた端末になります」
人気の最新機種。
ウェルトが受け取る。
その横でアディが満足そうに頷く。
「やっぱりこれよね」
ウェルトはため息を吐いた。
「お前のメモ通りに買ったせいで納品待ちになったんだぞ」
「普通のやつなら当日持ち帰れたんだ」
アディは呆れた顔をした。
「何言ってるの」
「こういうのは大事なの」
「最新機種なのよ?」
「巷ではこの機種じゃないだけで若い子はグループから外されるんだから」
ウェルトはセレナを見る。
(こいつには絶対関係ない)
だが。
面倒なので何も言わない。
カフェ。
飲み物を注文する。
全員が席につく。
そして。
セレナは箱を開けた。
新品。
傷一つない端末。
画面に自分の顔が映る。
じっと見る。
ひっくり返す。
また見る。
「貸して」
アディが手を伸ばす。
「設定してあげる」
「設定」
「そう」
そこから始まった。
「これは連絡用」
「これは地図」
「これは買い物」
「これは動画」
「これは便利」
「これは絶対必要」
「これは?」
「可愛い」
「可愛い?」
セレナは真面目に聞く。
ウェルトが横で呟く。
「絶対いらねぇの混じってるだろ」
しばらくして。
連絡用アプリの設定が終わる。
アディが一番最初に登録される。
当然だった。
次に。
ウェルト。
ゾイ。
ドルス。
コール。
五人の名前が並ぶ。
セレナは画面を見る。
じっと見る。
また見る。
少しだけ目が輝いた。
「待ってて」
突然立ち上がる。
そして。
走る。
「おい?」
ウェルトが呼ぶ。
だが。
セレナは角の向こうへ消えた。
数秒後。
アディの端末が鳴る。
着信。
画面を見る。
表示された名前。
『セレナ』
通話ボタンを押した。
「も、もしもし……?」
端末の向こうから声がする。
『聞こえる?』
アディは慌てて答える。
「き、聞こえるわ!」
「ちゃんと聞こえる!」
すると。
少し間があって。
『よかった』
『かけてみた』
少しだけ嬉しそうな声。
その瞬間。
アディが固まる。
数秒。
そして。
アディは両手で顔を覆った。
「尊い……」
「姉御?」
「世界は美しい……」
椅子へ崩れ落ちる。
昇天していた。
少しして。
角の向こうから戻ってくるセレナ。
「聞こえた」
満足そうな顔をしていた。
――
帰宅後。
ウェルト達は再びテーブルを囲んでいた。
議題。
チーム名。
中級チームへ昇格した以上。
正式名称が必要になる。
そして。
なぜか。
「それじゃあ始めるわよ」
アディが司会をしていた。
「他の二人は帰ったぞ」
ウェルトが突っ込む。
「問題ないわ」
堂々としている。
誰も止められない。
「アディ」
セレナが首を傾げた。
「アディのチーム名は?」
アディは胸を張る。
待ってましたと言わんばかりだ。
「ワイルドローズよ」
「私の赤い髪が由来」
誇らしげだった。
「かっこいい」
セレナが素直に言う。
すこし顔を赤らめるアディ。
「こほん」
「気を取り直して」
アディがウェルトを見る。
「まずはリーダー案」
「俺か?」
ウェルトは少し考えた。
そして。
少しだけ恥ずかしそうに言う。
「アイアン……ガントレットとか」
沈黙。
アディが真顔になる。
「は?」
「ふざけてんの?」
「あんたの腕のことなんてどうでもいいのよ」
「なんでチーム名が義手中心なのよ」
言葉の暴力。
「そこまで言わなくても」
小さくなっていくウェルト。
「ダサい」
即死。
ウェルトが沈んだ。
「次」
アディがゾイを見る。
「ゾイ案」
ゾイは少し顔を赤くした。
「漆黒の……翼とか」
沈黙。
さらに長い沈黙。
「は?」
「今更厨二病なの?」
「右目でも疼くの?」
「人生やり直してきなさい」
二人揃って部屋の隅へ移動。
体育座り。
落ち込む。
そして。
アディの顔が一瞬で変わる。
「じゃあセレナちゃんは何がいい?」
声が甘い。
さっきまでの毒舌はどこへ行ったのか。
セレナは少し考えた。
そして。
立ち上がる。
部屋を出る。
数十秒後。
戻ってきた。
腕にはぬいぐるみ。
アディがプレゼントしたうさぎだった。
ぎゅっと抱きしめながら。
セレナが言う。
「うさぎ」
アディが立ち上がる。
「採用!!」
早い。
圧倒的に早い。
「異議あり」
ウェルト。
「異議あり」
ゾイ。
即却下だった。
セレナは少しだけ残念そうに。
うさぎを抱きしめる。
その姿を見ていたウェルト。
ふと考える。
銀色の髪。
うさぎ。
そして。
セレナが仲間になってから続く幸運。
クイーン討伐。
中級昇格。
ありえない成果。
まるで。
幸運のお守り。
ウェルトが呟く。
「シルバーラビットフット」
全員が見る。
「ん?」
ウェルトも少し考える。
「銀のうさぎの足」
「幸運のお守りだ」
「セレナっぽいだろ」
ゾイが目を丸くした。
そして。
笑う。
「いいね」
「かなりいい」
アディも頷く。
「セレナちゃん要素も入ってる」
「賛成」
セレナは抱いているうさぎを見る。
そして。
少しだけ嬉しそうに。
「うさぎ」
そう呟いた。
こうして。
ウェルト達のチーム名は決まった。
シルバーラビットフット
銀色の少女がもたらした幸運の名前。
これから先。
ギルドでその名が知られていくことになる。




