報告の少女 前篇
今日も澄み切った空。
朝。
セレナはテレビを見ながらソファに座っていた。
ウェルトも反対側のソファに座りながらコーヒーを飲む。
ゾイは部屋でアーディファクトの調整を行っていた。
今日は平和な一日になりそうだった。
玄関が勢いよく開けられるその瞬間までは。
「セレナちゃーーん!」
最近よく聞く女性の声。
「うるさいのが来たな」
ため息を付くウェルト。
直ぐ様リビングにやってくる。
一直線。
セレナに抱きつき。
幸せそうな顔。
「おはようセレナちゃん!」
「おはようアディ」
遅れてドルスとコールが入ってくる。
「おはようございます」
「はよっす」
三人の来客に部屋から出てくるゾイ。
「前は鍵開けてたけど」
「今回は鍵閉めてたよね」
アディはセレナに抱きついたまま答える。
「ゴルドーさんが合鍵くれたわ」
「あのジジィ、普通に管理人として駄目だろ」
頭を抱えるウェルト。
「すみません」
なぜか謝るドルス。
「これでいつでもセレナちゃんに会いに来れる」
「最近毎日のように会ってないか?」
「昨日の夜はセレナちゃん成分が足りなくて大変だったのよ!」
「そ、そうか」
たじろぐウェルト。
「エーテルを回復するのに必要成分として学会に発表するレベルね」
そう語る彼女の目は本気の目だった。
「それ姉御だけじゃないっすか」
さすがのコールも苦笑。
「昨日は帰って何してたの?」
無視してセレナに話すアディ。
「ゾイと二人で料理してた」
アディの動きが止まる。
「……は?」
「料理?」
「うん」
「セレナちゃんが?」
「うん」
「エプロン着て?」
「うん」
セレナから手を離すアディ。
ゆっくりとゾイの方へ歩いていく。
胸ぐらを掴む。
「おい、何で呼ばなかった」
本気の目でゾイを睨む。
「つ、疲れてるだろうって思って」
「あの状態じゃ、歩くのも大変だしね」
嘘である。
アディのことなど頭にもなかった。
「地面這ってでも行ったわよ!!」
「私の愛を舐めてるの!?」
アディからまるで炎が見える。
(知らないよ)
「存じております。アディ様」
「次のときは是非呼ばせていただきます」
なんとか落ち着かせようとするゾイ。
そんな時。
「アディも今度一緒に作ろう?」
その言葉に動きが止まるアディ。
彼女から溢れ出る炎が消える。
「つくりゅぅぅぅぅぅ」
セレナに再び抱きつくアディ。
(助かったぁ)
ゾイはほっと胸をなでおろす。
この瞬間だけはセレナから天使の羽が見えた。
「何やってんだか」
ウェルトも呆れている。
「アディ、落ち着いてください」
「今回我々が着たのは昨日の件です」
ドルスは話を切り出した。
「わかってるわよ」
そう言いながらも離れないアディ。
「ギルドから報告があるそうなので一緒に向かいましょう」
その言葉にウェルトは立ち上がる。
「報酬も貰わないとだしな」
アパートを出る一行。
「お、もう帰るのかい?」
ゴルドーが庭を掃除する手を止めて寄ってくる。
「えぇ、鍵ありがとうございました」
アディは両手でしっかり手を握り感謝を伝える。
「良いってことよ、若い子のお願いは聞かんとな」
顔をデレデレにさせるゴルドー。
「エロジジィ」
その様子を冷たい目で見るウェルト
「家賃上げるぞ」
その言葉に反応する。
「すみませんでした」
即座の謝罪。
――
アパートの駐車場へ。
車に乗り込む。
「セレナちゃんは私の膝の上ね?」
にっこりと笑うアディ。
「なんだったら自分が姉御の膝にすわるっ―ッオゴ」
手を上げたコールに見事なボディブローが入る。
「セレナちゃんどうぞ」
何事もなかったよう先に座る。
手で招くアディ。
何も言わずアディの膝へ座るセレナ。
「おい、お前のところリーダーどうにかしろよ」
「出来たら苦労はしないんですよ」
ウェルトとドルスが小声で喋る。
二人はため息を付きながらも車に乗り込む。
それぞれの車で出発。
今回は荷台に伸びたコールを乗せて。
――
駐車場に着き車から降りる。
ギルド支部の扉を開ける。
その瞬間。
周りからの視線に気付くウェルト。
「あれが……」
「クイーン討伐の……」
「六人だけで?」
すでに彼らの偉業は広まっていたようだ。
ウェルトは少し誇らしげに歩いた。
「鼻の下伸びてるわよ」
すかさず突っ込むアディ。
「う、うるせぇ!」
バレたことに顔を赤くするウェルト。
職員が彼らに気付く。
「アディ様、お待ちしておりました」
「個室を用意してますのでご案内します」
部屋に案内される一行。
ドアを開ける。
すでにメガネを掛けたあの青年が待っていた。
「どうぞお掛けください」
そう言うと手を席の方へ向ける青年。
全員が座ると話を始めた。
「さて、今回はいくつかご報告があります」
「まずは前回の探索チームの事です」




