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勇者のハーレム要員みたいですけど拒否していいですか?  作者: 蓬(よもぎ):


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帰還の旅と恋模様?

二話目です。

結局、カミルさんが馬車を手配してくれて、さらにそのまま御者として同行してくれることになりました。ありがたいことです。

「薬師のお仕事は良いのでしょうか?」

「道々、薬草を採取しながら行けますし、最終的に王都で馬車を売却して叔父のところに帰るという算段ですから構いません」にこにこと御者台でカミルさんは答えてくれました。

「もともと薬草の運搬で街道を回ることもあるので、馬車の扱いには慣れています。それに、討伐後ですから危険が少ないとはいえ、男手はあったほうが良いかと」

 それはその通りです。

 

 野営の時、勇者アラミスは、狩と解体はしてくれますけれど、何かと細かい作業までは気が回りません。水を汲んだ桶を運ぶとか、大鍋を移動するなどは、意外と力仕事なのです。

 でもルシエル様やセレーネさんには頼めません。あの方々は、一見手が空いているように見える時でも、それぞれすることがあります。ルシエル様は常に祈りを捧げ、細かい瘴気を払ってくださってます。

 セレーネさんは、時間があれば体内の魔力コントロールをしていたり、詠唱をおさらいして、言葉を間違えないように何度も魔術書を読み込んだり、野営で火をつけてくださったり、結界術を敷いてくださったりです。

 

 勇者も鍛錬したりしているのですけれど、結局一番食べる量が多いんです。その分、必要な水の量は増えるし鍋が重くなりますよね。もちろん、言えばやってくれます。言えば。

 こう、普通、何回も重なったら、言わなくても気がつこうよ、っていう気持ちになるんです。そうでしょう?

 でもやっぱり毎回言わないとやらない。気がつかない。

 悪気がないのは分かってます。だから無闇に怒れません。でも、微妙に、胸の内に溜まるものがあるんです。

 

 その点、カミルさんは言わずとも動いてくださって、もう本当に助かるんです。

 今日も宿に着いたらさっと馬車から馬を外して厩へ誘導し、馬たちの手入れを始めてくれてます。あの作業も地味に体力使うんです。カミルさんに感謝の言葉をかけながら、わたしは宿での手続きと、部屋割り、夕食の時間や献立の確認をします。

「聖女ルシエル様は二階の一番右のお部屋です。セレーネさんはその左隣、その隣がわたしで、二階の左端がアラミスね」

「ありがとうエリシア。このまま移動すれば良いのね?」

 ルシエル様とセレーネさんは、ご自分の手荷物を持ってお部屋に向かわれました。アラミスはいつも通り、何も持たずに自分の部屋へ行こうとします。武器や防具は普段から身につけていますので、本人はそれで良いのかもしれませんが、馬車から着替えを持っていくのはいつもわたしです。

 今まではそれを何も思っていませんでしたが、カミルさんの気遣いを知ってしまうと、なんだか、そうか……って思ってしまうんですよね。何がどうって言葉にできないんですけれど。


「今日の夕食はアラミスの好きなシチューだって。お肉たっぷり入れてもらうようちゃんと言っといたよ」

「おう」

 部屋に入ったアラミスに、持ってきた着替えを渡しながら伝えると、少し機嫌が良くなったようでした。

 あら、そう言えば最後の街を出てから、なんとなく機嫌が悪かったような。

 ……どうでもいいですね。

 わたしは、自分の部屋を整える前に、厩に行ってカミルさんの手伝いをしないといけませんし。


 厩に行くと、もう馬に水と飼葉が与えてあって、カミルさんが藁束で馬の体を拭いている最中でした。

「蹄のお手入れを」とわたしが近づくと、カミルさんが「それはもう済ませましたから」と言ってくれたので、ほっとしました。

「カミルさんのお部屋は二階の左から二番目です」

「ありがとうございます。荷物は自分で持っていきますので、エリシアさんはこのままお部屋で少しゆっくりされてください」

 

 なんて紳士的なんでしょうか!

 びっくりです。

 感謝しながら、わたしは心おきなく部屋へ移動しました。

 その日、宿の美味しいシチューをわたしも堪能して、久しぶりにゆっくりと眠れました。



 ⭐︎⭐︎⭐︎



 翌日は朝早くから移動です。

 来る時より帰りはずっと気が楽ですね。馬車移動ですし。

 順調に移動できたら夕方には次の街に着きますから、今夜もゆっくりと休めそうです。


 

 午前中に、ある街へ差し掛かりました。ここはとても華やかな場所で、以前通った時も少し気になっていましたが、魔物や魔王軍の被害が無かった場所なので通り過ぎた所です。

 

「俺、ここに寄りたい」

 急にアラミスが言い出しました。

 

「でもここに寄ってたら次の街には夕方までには着かないよ?」

「わたくしも不要と思います。ここには神殿はございませんし」聖女ルシエル様もそう言いました。

「この街は確か遊興街が主だから魔導具屋もないし、わたしも用はないかな」セレーネさんもそう言います。そうよね、遊興施設に用はないし…遊興?

 

 

思 い 出 し ま し た。


 ここ、確かミニゲームの街!

 ギャンブル性の高いカードゲームと、女の人のたくさんいる酒場、娼館、そんな街。そんなところで主人公がハマっちゃったら、延々と帰れなくなっちゃう!

 そりゃあ確かにカードゲーム面白かったけれど。ダメ、絶対!


「道草食っているほど余裕はないと思うよ。なるべく早く王様に報告しないと、きっと後で困ると思う」

 しかつめらしくそう言うと、アラミスは渋々引き下がってくれました。よかったぁ。

 ちょっと気が緩みすぎじゃない?魔王討伐して浮かれるのもわかるけど、気が緩んだらすぐ遊ぼうなんて、それはダメだと思うよ。

 そう続けて言いたくなったけど、ぐっと堪えます。

 だって絶対機嫌悪くなるもの。まだしばらくは一緒に旅しないといけないから、ここは我慢だわたし。

「今夜の宿のある街は、串焼きや果物が豊富だったと思います。楽しみですよね」

 御者台から明るい声でカミルさんが声をかけてくれたおかげで、馬車の中の雰囲気がほどけました。本当に助かる。


 


 帰還の旅はそこそこ順調に進んでいます。

 

 今夜は野営です。街と街の間に山がひとつあるために距離が離れているから仕方がありません。

 とはいえ、行きの旅とは違い、魔物の数は激減していますし、瘴気も減ったせいか食べられる野草も増えています。さりげなく手伝ってくれるカミルさんと一緒に鍋の準備をして、携帯食料袋から乾燥したキノコや、さっき採取した野草や干し肉を入れて食事の準備です。

 アラミスも鹿を狩ってきてくれましたし、塩を振って焼きましょう。

 

 神に感謝の祈りをして食事を摂り、お茶を飲んでいたら、ふっと思いついたようにセレーネさんが

「この旅が終わって、王都に帰還した後、みんなはどうするの?」と言い出しました。

 

「わたくしは神殿に入って、祈りの日々となりますわね」

 ごく当たり前のようなお顔で聖女ルシエル様が答えました。

「聖女様って結婚とか、できないんですか?」ちょっと驚いて聞いてしまいます。だってこんなにお綺麗なのに。

「婚姻が出来ないわけではないわ。聖騎士と婚姻する乙女が多いわね」

 なるほど。それならアリか。神殿近くにそのまま住んで、祈りを捧げて暮らせるって事ね。

 納得してうんうんと頷いていたら、なんだかアラミスが挙動不審です。


「わたしは、帰ったら魔導研究所に入るかな」と、セレーネさん。「待っててくれている同僚もいる事だし」

 あら、それって、そういうこと?

 大きな緑色の目がキラキラしてます。そういうことなんですね。うふふ。

 いいなぁ。

 

「エリシアは?」

 アラミスが身を乗り出して聞いてきました。

「うん?わたしは村に帰るよ。両親に会いたいし、畑も心配だしね」当然です。


 なんだかアラミスが、がっくりしているみたいですが、知ったことじゃありません。

「普通、勇者とかが魔王討伐したら、まわりに女の子がたくさん寄ってきて、ステキー!とかチヤホヤされるんじゃないのか?」ブツブツ言っているようですけれど。


 ……あら?

 あららら?

 もしかしてあれですか?

 俺強え、からのハーレム?

 幼馴染と聖女と魔法使い。これってちょっとした物語の強制力的な?

 引っかかってたのってこれですか。

 なるほど?

 

 ふ ざ け る な。


 


 確かに村のおばあちゃんが読んでくれた物語にも、それに近いものはありました。でも正直言って、幼馴染なんて一番恋愛から遠くなりがち。

 だって一緒に育ったのよ?叱られて泣きべそかいていたことも、いくつまでオネショしてたかも、知ってるんですよ?無理無理。なに夢見てるんだか。

 いずれにしてもそんな展開にはならないでしょうし、万が一、あったとしても、お断りですね。ふん。


 情けない勇者はほっといてわたしは寝支度をします。

 火を消して、魔物避けを撒いて、テントに入りました。

 おやすみなさい。

 

 

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