08-16.勝っても負けても
「いや~。まさかタマラが負けるとはなぁ~」
「本当に驚きましたね~。まさかあのタマラちゃんが~」
ベルトランもいつの間にやら強くなっていた。
よほど私に圧倒されたのが悔しかったのだろう。随分と鍛え直してきたようだ。正直見違えた。ここ暫くは新王の片腕としても酷く忙しかっただろうに。
「それでもタマラちゃんが本気を出していたなら負けはありませんでした」
「本気? タマラは本気だったろう」
「いえ。エリクちゃんの魔力を使っていませんでしたから」
「ああ。それは仕方があるまい」
正直気持ちはわかるぞ。タマラがそんな選択をする筈はないのだ。
我が眷属であるタマラには、常に私のエリクサーの魔力が流れている。やろうと思えば斬られた側から傷を癒してしまうことも出来ただろう。
しかしタマラはその力に頼るのを良しとはしなかった。タマラは己が身一つで神器を持つベルトランに立ち向かった。
正直ベルトランの持つ剣の神器も大概無茶苦茶な代物なので、別に私の魔力を使っても問題ないような気がしなくもないけれど、タマラ的にはそれはそれだろうというのも理解できるものだった。
「エリク!!」
パティが物申しに来た。
「リーゼ姉様取られちゃったじゃない!!」
「お前も同意しただろうが」
「それは! アカネが! カナレス商会がって!」
「奴らを納得させるためにはこれしか方法が無かったのだ」
「結局負けちゃったじゃない!」
「収まるべきところに収まったのだ。あれだけの試合を観せてくれたベルトランにならリーゼシア殿も納得するだろう」
「バカね! 逆よ逆! リーゼ姉様は別に強い人が好きなわけじゃ!」
「パティ」
「リーゼ姉様!? どうしてこっちに!? もしかして!」
「勘違いしないで。決まったことに物申すつもりはないわ。私は魔王陛下とは違うもの」
はいはい。すみませんね。私とは違うよね。
「けどね。お兄様は……」
あら?
「陛下は……私では相応しくないって。魔王の伴侶に敗れ、魔王と馴れ合った私では、魔王を討ち倒すべき勇者の祖にはなれないって」
なん……だと……。
「私捨てられちゃった。だから……。今度こそ責任をとってくださいますわね? 魔王陛下?」
「なによそれ!! そんなの言い出したら騎士団長も! どころか二兄様自身だってそうじゃない!!」
……流石にそれはニコライもわかっているだろうさ。
つまりはそういうことか。ニコライの奴め。或いはこれも元第一王子の策だろうか。
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「おい」
「アムネシアと申します。以後お見知りおきを」
「パティ」
「ついでよついで」
奴らは扱いあぐねた姫たちを押し付けてきたのか? 我が魔王城をなんだと思っているのだ?
「わ♪ 私場違いですね♪ 姫様方に混じって顔合わせなんて♪」
司会者を務めてくれた女性、ブレアも家族……というか従業員に加えることにした。
「歓迎するわ♪ リーゼシア姉様、バレンシア姉様、フェリシア姉様、アムネシア姉様、ブレア♪」
おっかしぃなぁ……。なんで五人も増えた?
なんでこう、尽く無視されるの? なんの為の茶番だったの?
『むしろ必要なことでは? これでカルモナド側の面目も保たれましたし。王家公認ならカナレス商会が追求されることもないでしょうし』
う~ん……。
「ささ♪ 眷属にしちゃって♪ エリク♪」
「せんぞ」
「ダメよ! 連絡取るにも必要でしょ! 皆にはしっかり働いてもらわなきゃいけないんだから♪」
何か計画があるらしい。それはそれで割り切るのだな。或いは気を遣っているのだろうか。リーゼシア殿の境遇を考えれば、眷属化は確かに悪いこととも言い切れまい。
それはわかるけどなぁ~……。
「しかしなぁ……」
「ならいいわ♪ ユウコに頼むから♪」
おいこら。
「まったく」
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「エリクって甘いわよね」
「今更何を言う」
わかっていたことだろうに。
「開き直らないでよ」
「何故リタは不機嫌なのだ?」
「別にそんなんじゃないわ」
「ルシアと何かあったのか?」
「なんでルシアなのよ」
「エフィをデートに誘ったのだろう? ならばルシアが口を挟むだろ」
「……よくわかったわね」
正解か。やっぱり。
「後で私も付き合ってやろう。四人でダブルデートだ」
「いいの? そんな約束して。ユーシャたちだって放ってるんでしょ?」
「あ……」
やっべ……忘れてた……。
「ま、まあ。祭りはまだまだ続くさ。明日は付き合おう」
「約束よ♪ ありがとう♪ 愛してるわ♪ エリク♪」
リタは私の頬にキスをしてから去って行った。
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「「「おっそーい!!!」」」
すんません。




