08-15.矛盾
「最強対最強!! 誰がこの展開を予想したでしょう!!」
即興で造られたとは到底思えない、立派なコロシアムには、王都中から観客たちが集まってきた。
誰も彼も期待に染まった目をしている。こんな意味不明な事態に怯える様子もない。
妖精王やらドラゴンやらの騒ぎで慣れていたのかもしれない。
流石カルモナド王国。国民の一人ひとりに至るまで、ノリの良い人たちだ。
「カルモナド最強対! 冒険者最強!! 誰もが気になっていたこの一戦!! まさか実現することになろうとは!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
司会の女性は、ミスコンからの継続だ。よく付き合ってくれたものだ。色々立場も危ういだろうに。
「それもこれも!! そう! かの有名な魔王陛下!! その人の計らいなのです!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
何故魔王が讃えられているのかしら……。まさかアカネが何か仕込みを?
「この特設リングも魔王様のお力によるものだとか!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
違うよ? 私じゃないよ?
「かのお方は!! この国の祭りを全力で盛り上げてくださっております!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
大丈夫? 流石に口が過ぎない? 国家反逆罪で打ち首になっちゃうよ? これ以上魔王を讃えるのは不味いでしょ?
「その慈悲深さが私個人に向けられることも期待しております!! 助けて魔王様ぁ!!」
自棄になってるだけだった。そりゃそうだよね。姫の誘拐事件に加担しちゃった後だし。しゃあない。後で拾っておこう。私がなにかするまでもなく、アカネが手配してそうだし。
「魔王様と言えば! そう!! 皆様お聞き及びのことと思います! 王国一の美姫リーゼシア王女殿下をその圧倒的な美しさでくだしてみせた妖精女王とは! 魔王陛下! つまりは妖精王陛下の伴侶でいらっしゃるそうで!!」
その情報いるか?
「この試合の勝者にはリーゼシア王女殿下が贈られるとのことです!! いみわかんね~~~~!!!」
だいぶ司会が錯乱してる。大丈夫? このまま続けるの? 他に務まる人もいないか。
「さて! そろそろ場も温まったことでしょう! では始めて参りましょう!! 選手入場のお時間です!」
強引だなぁ~。普通なら冷えっ冷えになるとこだったろうに。
「先ずは我らが誇る王国最強!! その手に握るは伝説の聖剣!! 王家の守護者! 近衛騎士団長!! ベルトラン・アルバラードぉ~~~!!!」
「「「「「「「「きゃぁぁぁああああ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「きゃぁぁぁああああ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「きゃぁぁぁああああ!!」」」」」」」」
女性人気が凄いな。ベルトランってモテるんだな。
「対するは至上最強の冒険者!! その拳は竜すら貫く最強の槍!! Sランク冒険者! クラン【マギア・グラティア】所属!! タマラ・ベルティ~~~!!!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
「「「「「「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」」」」」」
こっちは男性人気が凄いな。流石美人お姉さん。
二人が会場の中心で向かい合った。二人とも本気だ。本気で勝つつもりだ。その気迫は観覧席にいても伝わってくる。
会場が沈黙に包まれた。誰もが息を呑んで見守っている。極わずかであっても見逃すまいと目を凝らしている。
「それでは尋常に!!! 試合!! 開始ぃぃぃい!!!!」
「「はぁあああ!!」」
二人が同時に踏み込んだ。
なんでも斬り裂くベルトランの剣と、なんでも砕くタマラの拳がぶつかりあった。




