08-13.要らぬ騒ぎ
祭りが始まった。
我々魔王国一同もお忍びでの参加だ。
ベルトラン。マジごめん。出て行くって約束したのに。
これ終わったら今度こそ出ていくからさ。どうか見かけてもスルーしておくれよ。そっちも要らぬ騒ぎは起こしたくないだろうしさ。どうか許してちょ。マジめんご。かしこ。
的なメッセージを念の為送りつけておいた。今頃頭を抱えていることだろう。そのまま耳も塞いでおいてくれると有り難い。まあ、とっくに全部知ってる可能性もあるけれど。
「動きづらい」
「おねーちゃ♪ きれー♪」
「ふふ♪ ありがと♪ シュテルもよく似合ってるよ♪ もちろんキャロもね♪」
「「えへへ~♪」」
よかったよかった。ユーシャたちも仲直り出来たようだ。
「悪いが私は少し外させてもらおう」
「「「え~~~!!!」」」
すまんな。折角お揃いの浴衣まで用意したのに。
「後でまた顔を出すとも。三人は祭りを楽しんでおくれ」
「本気で行くつもり?」
「でないと困るだろう。祭りが中止になってからでは遅いのだ」
「……わかった。二人は任せて」
「うむ♪ ありがとう♪ ユーシャ♪」
ふふふ♪ ふふふふふ♪
ああ♪ 最高だ♪ ユーシャが♪ あのユーシャが♪
なんて聞き分けがいいんだ♪ これもクルスのお陰か♪
『えへん』
よくやったクルス♪ ありがとうクルス♪
『けど』
『ユーシャ』
『もどった』
『だけ』
そうだな。箱庭での生活を始める前のユーシャはしっかりしておったものな。あの十年で私がおかしくしてしまったのだよな。
『いいこ』
『ほんとうは』
うむ! そうなのだ! ありがとう! クルス! ユーシャを理解してくれて! 本当に嬉しいぞ♪
『ふひ♪』
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「そろそろだな」
「あらエリク。あなたも参加するの?」
「そんなわけないだろう。様子を見に来たのだ」
「ばっちりよ♪ 優勝は頂きよ♪」
「八百長はダメだぞ」
「そんなことするわけないじゃない♪」
信じてるけどさ。今のパティなら優勝間違いなしだし。
今日この日のために急遽誂えた美しい衣装が、パティの魅力を存分に引き出している。これもアカネの見立てなのだろう。流石はアカネだ。この調子で最後まで頑張っておくれ。
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「おっとぉ!? 飛び入り参加されたこのお方!! その正体はまさかの!? 王女様ぁ!? しかもしかもぉ!? 本当にこのまま進めていいんですかぁ!?」
司会者は事前に聞かされていなかったようだ。素で驚いているっぽい。あれで演技だったら驚きだ。
「ではこれで締め切らせて頂き」
「お待ち下さい」
……おい。
何故シルクが壇上に現れた……。
シルクは自らが開いた転移門の前で跪いた。
転移門から姿を現したのは幻想的な美女だ。
この国の誰もが見たことの無いような、不思議な装いだ。
会場が沈黙に包まれた。
誰もが謎の美女に見入っている。
パティやリーゼシア殿が現れた瞬間ともまるで異なる反応だ。あまりの美しさに、会場の誰もが息を呑んでいる。
この時誰もが悟った筈だ。既に勝敗は決したのだと。
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あれから小一時間後。
「なによあれぇ!?」
アニタに優勝を掻っ攫われたパティが憤慨した。
「ちょっとエリク! どういうこと!? 説明なさい!!」
いや知らんし……。
「私も聞かされとらんぞ」
アニタは何故か捕まらんし。完全に逃げ切るつもりだ。
「完敗ですわ。潔く約束は果たしますわ」
リーゼシア殿はリーゼシア殿で、何故だかスッキリした表情だ。意味がわからん。
というかまだここに居ていいんか? ベルトラン待たせとるだろ? 一旦帰らんか? 仕切り直しってことで。
「リーゼシア殿。何か誤解されているようだ。あくまでその賭けはパティが勝利した場合の話。二人ではなく妖精女王が優勝した以上、賭けも不成立だ。どうぞお帰りを」
「どの道同じ話ですわ。私は唯一無二の価値を失いました。責任をお取りになってくださいまし」
なんでやねん。
「そうよエリク! 約束は約束よ!」
そんな約束しとらんだろうが。何をしれっとそっち側についておるのだ。パティは。
「魔王陛下!」
「エリク!」
なんで私が詰め寄られてるの……。
「自分の言葉には責任を持ちなさい!」
私は鏡じゃないぞ!?
「さあ早く! 騎士団長が来てしまいますわ!」
やっぱ逃げたかっただけなんじゃん!
まさか再起を図るつもりか!? 一旦私の配下に加わって改めてニコライを取りに行くつもりなのか!?
「旦那はん! とにかく逃げてぇーなぁ! もう抑えられんよぉ!?」
いいよ! お通ししちゃいなよ! ベルトランに引き渡せばいいじゃんかぁ!




