08-08.恋バナ・続
「改めまして。リーゼシアと申しますわ。魔王様」
「バレンシア」
「フェリシアと申します」
あのさぁ……。
「パティ。説明しろ」
「ディアナに許可貰ったわよ?」
「……」
「安心して♪ 今日のところはそういうんじゃないから♪ 単なる恋愛相談だから♪ 百戦錬磨の魔王様に助言を貰いに来ただけだから♪」
「……今は敵国だろうが」
「もう♪ そう硬いこと言わないで♪」
まったく。昨日の今日で。
「ささ♪ 姉様たち♪ どうぞこちらへ♪」
しれっと十六の頃の姿に戻ってるな。
「ほら♪ エリクもよ♪ いつまでもそんなとこ座ってないで♪ 一緒にお茶会しましょ♪」
そんなとことはなんだ。これは玉座だ。そしてここは謁見の間だ。魔王が玉座に座って何が悪い。
渋々茶会の席に移動した。
「それでそれで♪ 姉様♪ 騎士団長とはどこまで♪」
本気で恋愛相談に乗るつもりか。引き抜きじゃなくて。
「え~……ふふ」
あ~。ダメそう。
「大丈夫よ♪ 安心して♪ 私たちが力になるわ♪」
そんな約束して大丈夫? いや。必ずくっつけるとは言ってないのか。どんな風に力になるのかは明言しない気か?
「バシィ姉様とリシア姉様はどう? 行き先は決まった?」
「ここ」
「やった♪ バシィ姉様は決まりね♪」
おいこら。
「本気なの? パティ?」
「ええ♪ リシア姉様も遠慮しないで♪」
「待てパティ」
「なによ!」
「リーゼ殿とベルトランの件でお呼びしたのだろう。先に本題を済ませよ」
「まあ♪ エリクも気になっていたのね♪」
はぁ……。
「……魔王様。一つお聞かせ願えますかしら?」
「どうぞ」
「……彼は……いえ。魔王様は諦めさせるために?」
なんでそうなる。
「我は黒幕でもなんでもないぞ。パティが勝手に動いたまでのこと」
「……そう……ですか」
そんな顔をするでない。
しかたない。この状況で放り出すわけにもいかぬしな。
「リーゼ殿。先ずは貴殿の想いを聞かせて頂けるかな」
「私は……」
「我とてあの男の頑固さはよくよく理解しておる。生半可な覚悟では頷かせられん。それは貴殿もわかっているのではないかね?」
「……はい。とても」
「うむ。ならば何よりまず貴殿が譲れぬ想いを持つことだ。あの男の強き意思を打ち砕く程の堅き想いだ。どうかね? その覚悟はあるのかね?」
「……私は」
ダメだな。これ。
そこで即答出来ない程度じゃ話にならん。この姫様は優しいというより優柔不断ではないのか?
せめて先程のバレンシア殿のようでなければな。パティ程食い気味なら、そもそも相談なんて口車に乗ってこんなとこまで来なかっただろうけど。
しかし昨日は堂々としていたではないか。まさか私に怯えているのか? 噂のハーレム王に取り込まれると? 先程の質問はそういう意味か。言葉を選びすぎて伝わらんぞ。
「いや。話を急ぎすぎたか。先ずは経緯をお聞きするべきだったのだろうな」
取り敢えず助け舟を出してやろう。
「お話しますわ」
リーゼシア姫はホッとしたような態度を見せた。
実は言う程惚れているわけでもないのか?
単に王女として前王の意思に従っていただけなのか?
「此度の件は陛下の差配なのです」
「陛下? ニコライが?」
「はい。現王が前王を通して手配したものなのですわ」
なるほどな。あの男にもその手の手回しが出来たのだな。
ふむふむ。立派に王を務めているようで何よりだ。
「私は……元々陛下の側にてお力になれればと」
「「「え? そっち?」」」
……え?
「もちろん妹としてでございます」
……ほんとにぃ?
いや、たしかにニコライも筋骨隆々の大男だし、なんだったらベルトランより大柄なくらいだ。筋肉フェチって話だから、ニコライが好みのタイプだと言われてもおかしな話ではないのやもしれん。しかしなぁ……。
「ですから陛下のお考えにも賛同致しましたわ」
けど本位ではないと。あくまでニコライの側で手伝うつもりだったのに、そのニコライからベルトランを充てがわれてしまったと。それもニコライのためと思えば受け入れられたと。……そういうことですかね?
「酷いわ! 二兄様ったら!!」
「「そうよそうよ!」」
えぇ~……。




