08-07.恋バナ
「へぇ~騎士団長がね~」
話すよね。そりゃあね。恋バナはね。
すまんな。ベルトラン。ふふ♪
「お相手は?」
「エリーゼと名乗られた。本名かはわからんが」
「……そう。リーゼお姉様と……リーゼお姉様とぉ!?」
パティの顔見知りらしい。
「ダメよそんなの! 私だって狙ってたんだから!!」
「おい」
何を言っとるんだ。こやつは。
「リーゼシアお姉様はこの国の至宝よ! なんとしても奪い取りなさい! でないと魔王の名が落ちるわよ!!」
マジで何を言っとるんだ。こいつは。
「なんでよりによって騎士団長なのよ! こうしちゃいられないわ! すぐに工作をしかけるわよ! レティも協力して頂戴!」
「え~。リーゼちゃんもですかぁ~」
「落ち着いてよ、パティ。リーゼ姉様は無理だって。あの人筋肉質な男性に目がない人だから」
なるほど。ベルトランはお誂え向きだな。むしろ自分で仕組んだのではなかろうか。わざわざ前王をけしかけて。
「エリクならどうとでもなるわ!」
「やらんぞ。折角ベルトランにも春が訪れたのだ。邪魔をしてどうする」
「大丈夫よ! 騎士団長にその気はないわ!」
「何故そう言い切れる?」
確かに本人は乗り気じゃなさそうだったけれども。パティはその現場を目撃しておらんだろうに。
「だって当然じゃない! あの人年上好きだもの!」
それは……そうかもだけど……。
私に惚れたのだって例外だって自分で言ってたし。そもそも私はずっと年上だし。実はあの男の目は間違いでもなかったりするのだけど。
「まさかそんな理由だけではあるまい?」
「ええ。他にもあるわよ。あの人は近衛の長でありながら、前王に刃を向けたの。それが国の為だとしても、あの人の高潔さが許しはしないわ」
……そうだな。それは確かにあるだろう。前王の娘と結ばれることだけは決してあり得ないと言えるだろう。あの男の信念の強さを思えば間違いないとさえ言い切れる。
「だからダメなのよ。この恋は悲恋にしかなりえないの」
「だからって横から手を出して無理矢理諦めさせるのか? リーゼシア姫だってこの国の姫だ。自力で振り向かせてみせるかもしれんではないか」
パティたち、カルモナドの王族は、決してそんな理由で諦めたりなんぞしないものだ。そういう強さを持っている。あの女性とて例外ではあるまい。
「だからこそじゃない! 力ってのはより強い力に阻まれてしまうものなのよ!」
「どちらが強いかなど言い切れんではないか」
「私にはわかるわ! これはリーゼ姉様のためなのよ!」
結局感情論ではないか。単に自分が欲しいだけだろ。
「まあ~リーゼちゃんですからね~」
「言われてみるとその通りかもしれないね」
あらま。他の姫君二人まで。
「リーゼ姉様は優しすぎるの。きっと最後には身を引いてしまうわ」
「今回は前王もバックに付いているようだし、なんとでもなるのではないか?」
「エリク」
「ダメだ。そんな目で見られても。今回ばかりは」
「お願い。エリク」
「くどい。私は手を貸せんと言っているだろう」
「見逃してくれるだけでいいから」
「……何故そこまでする」
「私の姉様だから。リーゼ姉様にもいっぱい優しくしてもらったの」
「全員を娶ることなんて出来はせんのだぞ」
「もちろんわかっているわ! これで本当に最後よ!」
「どうだか」
「バレンシア姉様はいいの?」
「フェリシアお姉ちゃんはいいのですか?」
「うぐっ」
「おいこら」
まったく。毎度毎度その場しのぎなんぞしおって。
「今まで我慢できていたではないか」
前王が隠居して、多くの王子王女が城を離れた。しかしパティは何も言わなかった。誰それを勧誘しようとか、一切口にはしなかった。
てっきり弁えているものかと思っていたのだが。
「ちなみにまだ三人とも城に残っています。今なら間に合いますね」
「レティまで何を言い出す」
「男の子はダメなんだっけ? 末っ子のホープ君も結構立場が危ういみたいなんだけど」
「ルシア。流石にそれは無理だ。諦めろ」
精々現王であるニコライに口添えするくらいだ。我々に出来ることは。それも手段を選ばなければの離しだが。今となっては。
「エリクぅ……。私が面倒見るからぁ……」
「何をバカな事を言っているんだ。ペットでもあるまいし」
「リーゼ姉様とバシィ姉様とリシア姉様だけだからぁ~」
「増えてるだろうが! 認めんと言ってるだろうが!」
もういい! さっさとこんな場所は退散だ! 折角シュテルたちと仲直り出来たのだ! アニタにももっと感謝を伝えたいのだ! こんな浮気者には付き合っておれんわ!
「待って! 待ってよ! エリク!」
「後はディアナに相談しろ!」
流石に今回ばかりは断ってくれるだろう。しっかりお説教もしておいてもらわねば。頼むぞディアナ。




